【大学無償化】「恩恵を受けられる」のは一部のみ? 年収を理由に補助を受けられない場合はどうすればいい?

配信日: 2023.01.29 更新日: 2023.01.30

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【大学無償化】「恩恵を受けられる」のは一部のみ? 年収を理由に補助を受けられない場合はどうすればいい?
ノルウェー、スウェーデン、アイルランドなど、すでに公立私立を問わず、全ての国民が大学で学ぶための費用を国が全額負担する「大学無償化」を達成している国は複数存在します。一方、日本で大学の費用が無償化されるのは、世帯年収が低い一部の家庭のみです。
 
では、大学無償化の恩恵を受けられる世帯年収の水準はどれほどなのでしょう。また、大学無償化の恩恵を受けられない場合は、どのような方法で学費を捻出すべきでしょうか。
FINANCIAL FIELD編集部

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そもそも、大学に子ども1人通わせるために必要な費用とは?

まず、国立大学の学費は全ての学部において共通で、入学金は28万2000円、年間授業料は53万5800円と、文部科学省令で定められています。4年間通学したとき、総額は242万5200円です。医学部・歯学部・薬学部の学生は卒業までに最低6年間かかりますので、総額は349万6800円となります。
 
実際にはテキストの購入費や通学のための交通費、部活動やサークル活動の諸経費、子どもを1人暮らしさせる場合は家賃などの生活費を仕送りする分などが上乗せされると考えられます。
 
私立大学の場合、入学金・授業料・施設設備費も含めて、文系学部(法・経済・文など)は4年間で407万9015円、理系学部(理・工・農など)は4年間で551万1961円、医歯薬学部は6年間で2396万1844円にものぼります。理系や医歯薬系の学部では教授らの人件費に加えて、実験設備などの導入維持費用が高額なので、そうした経費をまかなうために授業料などが比較的高額に設定されているのです。
 
とはいえ、世帯収入が平均に満たない家庭では、国立大学に子ども1人を通わせることさえ難しい場合があります。成績優秀者であれば奨学金を受けることもできますが、日本の奨学金はほとんどが「貸与制」ですので、卒業後に分割で返還しなければなりません。そのせいで若くして多額の負債を抱え、本人のみならず連帯保証人が自己破産に追い込まれるリスクもあります。
 
奨学金が借金に限りなく近い性質となっているせいで、完済するまでは結婚も難しいと考える若者が少なくなく、日本の少子化の遠因になっているとも考えられます。また、特に国立大学における学費の高騰傾向は、国民の学問の自由を国が間接的に脅かしているとも評価でき、憲法に抵触するおそれもあります。
 
そこで、日本でも大学無償化の必要性が高まっているのです。
 

日本で大学無償化の恩恵を受けられる家庭の世帯年収は?

現在、大学・短大・専門学校の学費が無償化されるのは、住民税の非課税世帯に限られています。年収270万円に満たない世帯は、おおむね住民税の非課税世帯とされ、年間の学費が70万円免除されます。
 
さらに生活費として日本学生支援機構(JASSO)から返還不要の給付型奨学金が年間91万円支給されるので、事実上の大学無償化といえるでしょう。年収270万円~380万円の世帯にも学費の免除や奨学金の支給などはありますが、年収270万円未満の場合よりもそれぞれ減額されるため、最終的には学費の一部を自己負担しなければなりません。
 
したがって、家計を救うための政策としては不十分で、依然として資金繰りに苦しむ家庭も少なくないと考えられます。
 

国の補助が受けられない場合の学費の捻出方法

日本学生支援機構では、貸与制の奨学金制度も設けています。給付制奨学金が認められる場合より、世帯年収に余裕があっても認められますが、無利子(第一種奨学金)の場合は、学生の成績もある程度優秀であることが条件です。
 
有利子(第二種奨学金)であれば、世帯年収と学力ともに、さらに審査基準が緩みますが、大学卒業後の返還額が重くなり、将来の生活費の捻出が苦しくなりうる点には注意しなければなりません。
 
奨学金の申し込みは、大学進学前に高校で手続きする「予約採用」と、進学後の大学で手続きを行う「在学採用」があります。生徒・学生が満18歳以上になっていれば、単独で申し込めますが、世帯年収についてより詳しく把握している両親(保護者)が申し込むのが無難でしょう。
 

日本における大学の学費が無償化されるのは、ごく一部の世帯のみ

日本で大学無償化の恩恵を受けられるのは、住民税が課税されない低所得の世帯に限られており、それ以外の世帯では一部または全部の学費を自己負担しなければなりません。もし、奨学金を活用できれば家計の余裕が乏しくても当面の学費の心配はなくなります。
 
ただし、貸与制の奨学金であれば、経済負担を将来へ先送りしているにすぎません。卒業後は安定した職に就き、生活費を切り詰めて毎月の返還額を工面しなければならない義務を学生自身が負っている点を忘れないようにしましょう。
 

出典

国立国会図書館 調査と情報「諸外国の大学授業料と奨学金(第2版)」
文部科学省 私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
日本政策金融公庫 教育費負担の実態調査結果(2021年12月20日発表)
日本学生支援機構 令和2年度・学生生活調査結果
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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