更新日: 2023.02.02 その他暮らし
江戸時代の「駕籠(かご)」の料金はどれくらい? 現在のタクシーと比べてみた
本記事では、駕籠の料金を現在の価値にするとどのくらいに相当するのか、タクシーと比べてどのくらい高かったのか、などについて解説します。
執筆者:山根厚介(やまね こうすけ)
2級ファイナンシャルプランニング技能士
駕籠の料金は1里(り)400文(もん)
駕籠の料金については、江戸幕府などから定められた公定料金などはなく、場所によってまちまちだったようです。江戸市中の料金は、1里(約4キロメートル)で400文だったという記述などが見られます。
今回はこの1里400文で計算してみます。
400文は今なら何円?
それでは400文は現在の円に換算するとどのくらいになるのでしょうか。
「文」を「円」に換算するために、そばの価格で考えてみます。落語などで江戸時代のそばが「二八そば」と呼ばれていたのを聞いたことがある人もいるかと思いますが、この「二八」とはうどん粉とそば粉の比率であるほかに、そば1杯の値段である「2×8=16文」の意味でもあったようです。
現在のそばの値段はいくらなのでしょうか。2022年12月の総務省による小売物価統計調査によると、そばの価格は679円です。
16文が679円だとすると1文は「679÷16=42.4375円」で四捨五入すると42円です。そこから計算すると、400文は「42×400=1万6800円」です。ちなみに1両は江戸時代後期には6500文に当たるため「42×6500=27万3000円」ということになります。
現在のタクシーで1里走るといくら?
ところで、現在のタクシーで1里(4キロメートル)走るといくらになるのでしょうか。
一般社団法人東京都個人タクシー協会によると、東京都内の料金は、初乗り料金が500円で、1.096キロメートルまではこの料金です。1.096キロメートルを超えると、255メートルごとに100円が加算されます。この料金体系から4キロメートル走った場合のタクシー料金を計算してみましょう。
4キロメートルから初乗りの区間を引くと「4000-1096=2904(メートル)」です。この区間を255メートルで区切ると「2904÷255=11.3…」回のため、繰り上げで12回加算されます。よって料金は「500+100×12=1700(円)」となります。
タクシー料金は1700円ですが、駕籠の場合は1万6800円でなんと約10倍です。庶民はめったに駕籠には乗れないというのも納得ですね。
駕籠の豆知識
駕籠についての豆知識をいくつか紹介します。
駕籠の種類
一口に駕籠といってもさまざまな種類がありました。主な種類は次のとおりです。
・山駕籠
・四つ手(よつで)駕籠
・法仙寺(宝仙寺)(ほうせんじ)駕籠
・鶤鶏(とうまる)駕籠
山駕籠とは屋根しかない駕籠で側面に覆いがありません。これらの中では最もシンプルです。四つ手駕籠は山駕籠が発展したもので、側面に覆いがあります。町駕籠や辻(つじ)駕籠と呼ばれることもありました。
法仙寺駕籠は木製の駕籠で富裕層が使用していた駕籠です。鶤鶏駕籠は罪人を運ぶ駕籠で、竹で編んだ覆いがしてあります。時代劇などで見たことのある人も多いのではないでしょうか。
ちなみに、大名や公家などが乗る駕籠は、駕籠ではなく「乗物(のりもの)」と呼ばれていました。乗物には基本的に町人は乗れず、医者や僧など一部の例外が認められているだけでした。
駕籠の速さ
駕籠の速さは1里1時間程度の速さだったそうです。歩く速さと変わらないですね。
しかし中には速い駕籠もあり、東京~京都間の早(はや)駕籠の所要時間は4.5日だったそうです。当時江戸から京都までは徒歩で約2週間でしたから、それと比べるとかなりの速さであることが分かります。
江戸時代の駕籠は庶民が気軽に乗れるような価格ではなかった
江戸時代の駕籠は、4キロメートルで1万6800円とタクシーの10倍近い料金がかかります。しかも、ここからさらに酒代(チップ)を要求されることもあったようです。ちょっとそこまで……と気軽に乗れるような交通手段ではありませんね。
出典
国立国会図書館レファレンス協同データベース 江戸時代の駕籠かごの運賃が知りたい。
総務省統計局 小売物価統計調査(動向編)2022年12月
日本銀行金融研究所貨幣博物館 江戸時代の1両は今のいくら? ―昔のお金の現在価値―
国土交通省関東整備局横浜国道事務所 飛脚は東海道を何日くらいかかったの?
執筆者:山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士