更新日: 2023.02.03 子育て

【家計相談】わが家は、私立高校無償化制度を利用できますか?

執筆者 : 林智慮

【家計相談】わが家は、私立高校無償化制度を利用できますか?
Aさん夫婦(東京都在住)は共働きです。夫は年収400万円ほど、Aさんは年収300万円ほどです。子どもを私立高校に通わせたいと思っているのですが、もし無償化の対象となるならぜひ利用したいとのご相談です。
 
Aさんの場合は無償化の対象となるのでしょうか。
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

私立高校の「実質」無償化

なぜ、無償化ではなく、「実質」無償化なのでしょうか。
 
授業料を支援する制度に、国による授業料を支援する『高等学校就学支援金』と、そこに支援金を上乗せする都道府県の制度があります。これにより、授業料全額の支援を受けられる場合は授業料の負担がゼロになるので、「実質無償化」といわれるのです。ただし、支援金には上限があり、それを上回る授業料の場合に保護者の負担が必要です。
 
ここで、制度について確認しましょう。国の制度『高等学校就学支援金』の対象となるのは、日本国内に住所がある方です。支援金額は、課税標準額を以下の算定式(市区町村民税の所得割額の計算式)により判定します。

【算定式】

市町村民税の課税標準額×6% - 市町村民税の調整控除の額(政令指定都市の場合×3/4)

上記による算定額が、

・算定額<15万4500円・・・年額最大39万6000円の支給(私立高校全日制の場合)
ただし、年間授業料が39万6000円未満の場合は、年間授業料分が最大となります。
 
・15万4500円≦算定額<30万4200円・・・年額11万8800円の支給

(引用:文部科学省 就学支援金)
 
国公立高校の授業料は一律年額11万8800円により、支援対象であれば無償化になりますが、私立高校の授業料は各学校により異なるため、支援対象でも負担が生じる場合があります。
 
例えば、東京都の私立高校授業料の平均金額は、46万6545円(令和3年度分)です(出典:文部科学省 私立高等学校(全日制)の初年度授業料について(平成29年度~令和3年度))。よって、39万6000円では平均でも約7万円不足します。また、算定額が15万4500円になったとたん、年額39万6000円の支援金から11万8800円の支援金となり、27万円も少なくなってしまいます。
 

国の制度に上乗せ支援、都道府県の制度

そこを補塡(ほてん)するような制度が、各都道府にあります。
 
各都道府県で支援の内容が異なりますが、都道府県の制度を合算することで、国の制度だけでは不足する分を補うものです。対象となるのは、生徒および保護者が居住する都道府県内の高校に進学する場合です。そのため、住居と異なる都道府県の私立高校に通う場合、受けられるのは国の支援のみです。
 
それでは、国の制度と県の制度との合算で、どのくらいの支援を受けられるのでしょうか(国と同様、市町村民税所得割額により支援額が決められます)。
 
東京都の場合、授業料軽減助成金制度により、算定額が30万4200円未満は、国の支援と都の助成金の合計で46万9000円までの支援を受けられます。また、算定額が30万4200円を超えた場合でも、子どもの人数により支援が受けられる場合があります。
 

Aさんは、支援の対象?

それでは、Aさん夫婦の年収の場合、支援の対象となるのでしょうか。
 
課税標準額は、所得の合計額から所得控除(扶養控除や雑損控除・地震保険・生命保険料の加入状況、小規模企業共済等掛金控除など)を差し引いた金額です。そのため、所得控除額は家庭により異なるため、年収だけでは支援の対象になるかどうかは判断できません。
 
そこで、社会保険料と人的控除のみで考えてみましょう。
 
給与所得控除後の金額は、所得税法別表第5より、夫276万円、Aさん202万円。社会保険控除は、実際に支払った金額を差し引きますが、仮に、夫63万円、Aさん48万円とします。基礎控除43万円を差し引くと、課税標準額は、夫170万円、A子さん111万円、合計すると281万円、調整額は2人分で3000円(入学時は年少扶養親族のため控除なし)。
 
これにより、算定式の算出額が16万5600円で、15万4500円を超えるため国の支援は年額11万8800円ですが、30万4200円未満のため東京都の支援が上乗せされ、合計で年額46万9000円の支援を受けられます。
 
授業料は高校により異なります。無償化の対象となっても、両方の支援金を超える場合は差額を負担する必要があります。また、施設維持費や設備費等、授業料以外のお金も必要になります。お子さまの進学先の校納金について、必ず調べておきましょう。また、年末調整や確定申告の際、所得控除できるものは少額でも忘れずに申告しましょう。
 

出典

文部科学省 就学支援金
文部科学省 私立高等学校(全日制)の初年度授業料について(平成29年度〜令和3年度)
国税庁No.1410 給与所得控除
e-GOV法令検索 所得税法
渋谷区 令和4年度 特別区民税・都民税(住民税)の算出方法
公益財団法人 東京都私学財団 私立高校には学費負担を軽減する制度があります 令和4年度版
全国健康保険協会 令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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