更新日: 2023.02.28 その他暮らし

【引越しトラブル】退去時に「敷金が返ってこない」&「追加請求」!? 理由は「敷金の特約」? 契約時の注意点を解説

執筆者 : 山根厚介

【引越しトラブル】退去時に「敷金が返ってこない」&「追加請求」!? 理由は「敷金の特約」? 契約時の注意点を解説
賃貸物件を退去する際に「敷金がほとんど返ってこなかった」「敷金だけではなく追加の料金を請求された」という人もいるのではないでしょうか。賃貸借契約に敷金の特約がある場合には、このような事態になる可能性があります。
 
この記事では、敷金の特約の概要やトラブルを未然に防ぐ方法などについて解説します。
山根厚介

執筆者:山根厚介(やまね こうすけ)

2級ファイナンシャルプランニング技能士

敷金の特約とは?

まず、敷金や敷金の特約とは一体どのようなものなのかを説明します。
 

敷金とは?

賃貸物件を契約する際は、敷金を預ける例も少なくありませんが、そもそも敷金とはどのようなものなのでしょうか。
 
敷金は、賃貸物件の契約で家賃の滞納や原状回復費用の担保として借り主から預かっておくものとされています。担保として預かるため、退去時に家賃の滞納などがない場合は、全額が返金されます。
 

原状回復はどこまでが借り主の義務?

しかし、退去時に敷金が全額返還されることは少ないのではないでしょうか。これは原状回復費用として使われることが多いためです。
 
原状回復は借り主の負担になる部分と、貸主の負担になる部分があります。その基準として、国土交通省住宅局は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を作成し、「原状回復」や「通常の使用」などの考え方を明確に示し、解説しています。
 
同ガイドラインによると、借り主の負担になるのは借り主が「わざと」または「うっかり」傷を付けたり壊したりしたものです。借り主負担の例としては以下のものが挙げられます。
 

●落書き
●タバコのヤニや臭い
●通常の手入れや清掃を怠ったことによる汚損
●くぎ穴・ネジ穴
●ペットによる傷や臭い

 
それ以外の経年劣化など通常の使用による損耗は貸し主負担です。貸し主負担の例としては、以下が挙げられます。
 

●畳の表替え
●家具などの設置による床のへこみ
●冷蔵庫の設置などによる壁の黒ずみ
●軽微な画びょう・ピンなどによる穴
●クロスの変色
●ハウスクリーニング

 

敷金の特約

ハウスクリーニングは基本的に貸主の負担であるにもかかわらず、賃貸物件からの退去時にハウスクリーニングの費用を支払ったことがある方は多いのではないでしょうか。これには理由があります。
 
賃貸物件の契約で敷金に関する「特約」があれば、先ほど紹介したような借り主が本来支払う義務がないものでも、借り主負担にできるからです。ただし、これは借り主に不利な条件のため、無条件で借り主負担にできるわけではありません。先ほど登場したガイドラインでは、以下の条件が求められています。
 

●特約の必要性があり、暴利的でないなど客観的・合理的な理由があること
●借り主が特約による義務を認識して、負担の意思表示をしていること

 

敷金トラブルを防ぐためには

敷金の特約により、一定条件下では本来借り主に義務はない原状回復を負うことになります。そのため、退去時に自分では思いもよらなかった費用を請求されることがあり、敷金が返ってこないだけでなく、追加料金を請求されることも。
 
敷金に関するトラブルは多く発生しており、国土交通省のガイドラインも、急増するトラブルを解決するための指針として作成されました。実際に、筆者も築40年の賃貸物件を退去する際に20万円以上の原状回復費用を請求されてトラブルになったことがあります。
 
トラブルを防ぐためにはどのようにすればよいのでしょうか。
 

契約書をよく確認する

敷金の特約は、契約書に必ず記載されています。また、契約時には不動産会社から説明があるはずです。賃貸物件を借りる際は、退去のことまで考えていないことが多いかもしれません。しかし、「特約」が記載された契約書にサインをしてしまった場合は、借り主側に不利な状況となります。
 
内容をよく確認するとともに、疑問に感じたことは細かい部分であっても、契約前に確認しておくことをおすすめします。
 

入退去時に部屋をよく確認する

入居時と退去時には部屋の中をよく確認しましょう。可能であれば、貸主と共に確認することをおすすめします。確認の際には、部屋の写真を撮影しておけば安心です。
 
例えば、床の傷が自分の入居中に生じたものか、入居前からあったものなのかといったことなど、写真があれば明らかになります。
 

それでもトラブルが発生した場合には

もしも、敷金に関するトラブルが発生した場合には、費用の明細を確認するなど貸主とよく話し合いましょう。また、全国に設置されている消費生活センターへの相談も方法の一つです。できるだけトラブルが発生しないように、あらかじめ契約書をよく確認しておくことが大切です。
 

出典

国土交通省住宅局 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)

 
執筆者:山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士

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