更新日: 2019.01.08 その他暮らし
両親が亡くなった後の「空き家」、どう対応すべきか
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。
空き家が「負動産」になる時代
人口減少時代に入った日本では、この「空き家」問題は深刻になりつつあります。高度成長期には、東京などに多くの人々が流入し、住まいを構えるベッドタウンが郊外に続々と誕生しました。しかし、そこで育った子ども世代は、仕事に便利な都心のマンションなどに住むようになり、郊外のベッドタウンは、高齢者の多い街に変貌しています。
そして、高齢世代がさらに歳を重ね、夫婦とも老人ホームへ入居する、あるいはともに亡くなるといったことが常態化し、急速に「空き家」が増えてきました。団地など年数の経過した集合住宅はもとより、ニュータウンにある100坪規模の一戸建てにも及んでいます。空き家が増えると、生活環境や治安が悪化するなどの問題が発生、街の空洞化が進みます。まさに不動産が負動産になりつつあります。
現在では、全国平均の空き家率は約15%、空き家総数は1000万戸近くになるといわれています。地方の空き家問題は、都会よりもさらに深刻です。元々高い価格で取引されていない上に、過疎化が極端に進んでいる地域も多く、いったん空き家になると、それを売却することは至難の技です。更地と比べ建物があったほうが、固定資産税の評価額が低いため、そのまま放置するケースも目立ちます。
空き家を引き継ぐ際の選択肢
親などから空き家を引き継ぐ際、考えられる選択肢としては、①居住する、②賃貸する、③維持する、④物納する、⑤売却する、などの選択があります。空き家の状態によっては、すぐには解決策が見つからないことも多いようです。以下、項目別に考えたいと思います。
① 本人が居住する
地方にある空き家は、生活圏が異なるために、子ども世代が住むのは非常に困難です。首都圏の住宅地などでは、通勤可能な範囲にある、多少の手直しで十分に住める、現状より広い居住空間が得られる、などの条件があれば、居住する余地はあるかもしれません。ただ親との同居ではなかったため、「小規模宅地の減税特例」という相続時の優遇措置は利用できません。
② 第三者に賃貸にする
借り手を探すことが第一ですが、簡単に見つからない場合もあります。自宅以外にも周辺に空き家が多い、駅までの距離が遠い、急な坂道があるなどの悪条件があると、借り手がいても賃貸料は安くなります。もし家自体が老朽化していると、修繕費用などの維持経費もバカになりません。
③ 維持管理を当面続ける
更地よりも固定資産税が安いため、当面は空き家として残すという選択です。放置は避け、NPO法人や管理会社などに委託し維持管理を続けます。それは家屋や敷地の手入れが不十分だと、周囲の環境が悪化する、野良犬や野良猫の住処となる、不審者による放火される、などの危険も考えられるため、行政の規制が厳しくなっているためです。
2015年に施行された「空き家対策特別措置法」で、倒壊の危険があるとして、行政サイドから「特定空き家」に指定されると、固定資産税が6倍に増額されるなど、負担が大幅に増える法律です。長期的な放置は、罰金や強制代執行など処分の対象にもなります。維持費用もかかるため、出来ることなら機会を見ての売却が望ましいと思われます。
④ 税金分として物納する
物納が可能かどうかはケースにより異なります。物納とは、相続税を現金等で支払わずに、相続した不動産で支払う納税方法です。相続税が発生しない評価額の低い空き家は、物納自体ができません。大都市圏でかなりの土地があれば、物納は十分可能になります。土地の一部を物納し、残りの土地を有効利用することも出来るかもしれません。
⑤ 買い手を探し売却する
これは賃貸と同様、買い手を見つけられるか、なおかつ条件はどうかにかかってきます。足許を見られ買い叩かれる可能性がないとはいえません。ただし、最近では、こうした相続不動産の売買にあたり、「譲渡所得の特別控除」「取得加算の特例」など、「空き家」に対する税制上の優遇措置があります。これらは売却を後押しする施策といえますので、十分検討しましょう。
人口減少社会が現実となり、今後20年も経たないうちに、日本の空き家率や30%を超えてしまう深刻な事態も予想されます。新築の建物が増える半面、一方で空き家率はしだいに高まるため、不動産価格にも影響する可能性があります。さらに、行政による住宅地の集約化など、総合的な政策が求められる時代に近づきつつあります。