更新日: 2023.04.11 その他暮らし

ひとり暮らしの家賃はどれくらいが適正? 初めてのひとり暮らしを考える

執筆者 : 當舎緑

ひとり暮らしの家賃はどれくらいが適正? 初めてのひとり暮らしを考える
本記事では、新入生や新入社員など、初めてのひとり暮らしを始めるために必要な家賃と生活費を考えてみましょう。
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

家賃における適正比率はいくら?

まず、総務省が定期的に公開している「家計調査(※1)」を見てみましょう。これによると、勤労者世帯34歳以下の単身者が定期的に勤務先から受け取っている収入は27万9593円です。そのうち、家賃など住居費が3万6253円ですから、これだけ見れば意外に低いなと感じるかもしれません。
 
ただ、この調査では家賃などを負担している割合は83.2%ということで、実際には借り上げ社宅であったり、家賃補助が出ていたりする会社に勤務しているのであれば、家賃すべてを自分で負担していないかもしれませんから、あくまでも目安と考えましょう。
 
一方筆者は、ファイナンシャルプランナーとして家計相談を受けている実感から、収入の「4分の1〜3分の1」が無理をしない家賃だと思っています。ひとり暮らしをするための参考として、総務省の勤労者単身世帯の家計支出(※1)についてデータを抜粋した、図表1を挙げます。
 
【図表1】
<単身 34歳以下勤労者世帯>

用途分類 支出額
食料 3万5014円
家賃地代 3万6253円
光熱・水道 9158円
家具・家事用品 3664円
被服及び履物 7977円
保健医療 5531円
交通・通信 2万756円
教養娯楽 2万2488円
その他の消費支出 1万9951円
使途不明金 28円
非消費支出 5万7491円

出所:総務省「家計調査 家計収支編 単身世帯 第2表(※1)を参考に作成
 

住居に何を求めるのか

ひとり暮らしをすると、家賃以外にも、「水道ガス光熱費」「通信費」「食費」「交通費」など、家族と一緒に住んでいたときには安く済んでいた、もしくは支払っていなかった費用を支払うということです。
 
また、新しくきれいな設備がある賃貸物件に住むと、それだけ家賃が高くなってしまうかもしれません。いきなりすべての条件をクリアできる物件に住むのではなく、適正範囲に収めるための妥協点も必要になってくるかもしれません。
 
希望をもってひとり暮らしを始める方に、いきなり「妥協も大切」というのは申し訳ないですが、何であれば妥協できるのかを考えてみるのもよいでしょう。
 
例えば、家賃が高くなる要素として、「部屋が広い」「駅から近い」「部屋にお風呂がある」「給湯器がある」などの条件が考えられます。そこで、例えば風呂があるため部屋も広く費用が高くなるのなら、節約するために、(少々極端ではありますが)風呂なし物件で妥協するという選択肢もあります。風呂がないと、当然水道代やガス代なども安くなるでしょう。
 
その他、勤務先がテレワークOKということなら、シェアハウスでテレワーク施設が共有できるところなどにすれば、広い部屋でなければならないという理由もなくなるかもしれません。
 

新生活。賃貸にかかる注意点を知っておこう

初めてのひとり暮らし。不動産会社を回りつつ、家賃相場を考えながら、いざ物件が決まった後にも注意点があります。
 
賃貸契約を申し込むと、必ず「賃貸契約書」を交わす必要があります。賃貸契約書は、不動産屋で重要事項説明書を聞き、「確かに説明を受けました」と署名押印をし、初めて契約を正式に交わす書類です。
 
ここで賃貸契約書を読む際、心していただきたいのは、この賃貸契約書に書いてあることが、借主貸主との間のルールです。解約して出ていくときに、「そんなことには聞いていない」と争わずに済むように、しっかりと読むことをお勧めします。
 
よくトラブルになっているのは、「解約時の原状回復義務(※2)」です。退去するときに、借主には現状を回復する義務があります。
 
国交省のサイトで確認できるガイドラインから引用すると、原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(きそん)を復旧すること」と定義しています。少し難しいですが、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるということです。
 
つまり、原状回復とは、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化されています。ただ、これで安心はできません。最初から、賃貸契約書に、「クリーニング代は借主負担」などという条件が賃貸契約書に書かれているのであれば、そちらがルールとみなされます。
 
最初に入居するときに、賃貸契約書をしっかりと読み込むこと、そして、経年劣化なのか借主の瑕疵(かし)で汚れたのか、判断しやすいように、入居する前の写真をあらかじめ撮っておくなど、賃貸に入居するときには「退去する」ことも想定して備えることが大切です。
 

出典

(※1)総務省 家計調査(2022年)家計収支編 単身世帯 第2表
(※2)国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のダウンロード
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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