更新日: 2023.05.11 子育て
こども家庭庁では少子化対策について、どのような問題意識の下で基本スタンスと理念を考えているのか?
なぜ、このようなデータを見てきたかというと、子育てに関する施策など、国による今後の少子化対策がどのようになるのか探るためです。
「こども政策の強化に関する関係府省庁会議」での議論などを受けて、2023年3月、こども家庭庁は「こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」を取りまとめました。
今回からは、その内容について確認していきたいと思います。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
国は2030年を少子化対策の分水嶺と考えている
まず前提として、国は2030年を少子化対策の分水嶺と考えています。
図表1は「こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」のの冒頭に出てくる資料ですが、要点として「2030年代に入ると、わが国の若年人口は現在の倍速で急減し、少子化はもはや歯止めの利かない状況に」とあります。
また、「2030年代に入るまでのこれからの6~7年が、少子化傾向を反転できるかのラストチャンス」としています。
図表1
出典:こども家庭庁 「こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~(概要)」
少子化対策についての国の基本スタンスとは?
そして、国は少子化対策の基本スタンスとして図表2のように考えています。
図表2
出典:こども家庭庁 「こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~(概要)」
結婚や出産、子育てに対する「多様な価値観・考え方を尊重」しつつ、「若い世代が希望通り結婚し、希望する誰もがこどもを産み、育てることができる」ようにすることで、「結果として少子化のトレンドを反転させる」としています。
また、少子化や人口減少のトレンドを反転させることの効果に「経済活動の活性化、社会保障機能の安定化、労働供給や地域・社会の担い手の増加」といった社会全体への寄与も挙げており、「未来への投資」として子どもや子育てに関する政策を強化し、社会全体で支えていくという意識づくりが必要と考えているようです。
前段では、価値観などの多様性を重視し、希望に合った結婚や出産・子育てができることを目指して少子化を反転させていく、そして後段では、その結果として社会全体への寄与も生まれるとしています。
こども・子育て政策の3つの柱
最後に政策の基本理念ですが、大きく3つにまとめられています。
(1)若い世代の所得を増やす
(2)社会全体の構造・意識を変える
(3)全ての子育て世帯を切れ目なく支援する
簡単に言い換えると、所得を増やして、これまでの価値観を変え、子育てに関する支援をより広範囲で行うということです。
まとめ
今回は、国の少子化対策の基本スタンス、政策の基本理念までの確認としましたが、「こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」では、どのように政策を実現するかという方法論も示されており、これを「こども・子育て支援加速化プラン」と名付け、今後3年間で具体的な制度設計をしていくようです。
3年後というと2026年ですが、超高齢化社会に本格的に突入していく「2025年問題」を考えると、3年間で高齢者福祉も含めて福祉政策を全般的に見直し、こども・子育て政策との調整を図るという意味なのかもしれません。
そこで、財源をどうするかという問題がおそらく頻繁に出てくるかと思いますが、可能性としてはおおむね、増税を視野に入れながら、社会保険料をどのように増額していくかといった議論になってくるのでしょう。
子育て中の世帯や、これから結婚して子どもを産もうという方々にとっては、今後の政策に期待することはできるかもしれません。しかしながら、子育てが終わった世帯や子どものいない世帯にとっては、増税や社会保険料の引き上げが家計の負担になりやすい時代になると考えることができます。
少子化を食い止め、出生率を引き上げるのは、10年、20年といった短いスパンでの対策で実現できるようなことではないと多くの方が気づいているかと思います。50年、100年といった非常に長いスパンで少子化問題を捉えた場合、この国はどのような変化の過程をたどるのでしょうか。
自身のライフプランと照らし合わせて、「こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」の裏にある意図やテーマなどを想像しながら読んでいくと参考になるかもしれません。
次回からは、「こども・子育て支援加速化プラン」の具体的なポイントについて確認していきたいと思います。
出典
こども家庭庁 こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~(概要)
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)