更新日: 2023.05.11 その他暮らし
延滞しても日本学生支援機構の救済措置「減額返還制度」や「返還期限猶予制度」は利用できる?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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減額返還制度とは
減額返還制度とは、経済的困難、災害、失業、傷病などの理由によって返還が困難になった場合、当初の毎月の返還金額を2分の1、または3分の1に減額して、適用された期間に応じた分の返還期間を延長し返還することを願い出られる制度です。
ただし、第一種奨学金「所得連動返還方式」選択者は、この制度を利用できません。
どちらも返還総額は変わりません。減額返還制度は、180ヶ月(最長15年)利用できます。1年ごとに願い出る必要があります。
経済的困難な場合の収入等の基準は、以下のとおりです。
・給与所得者の方:年間収入金額325万円以下
・給与所得以外の所得がある方:年間所得金額(必要経費等控除後)225万円以下
なお、被扶養者がいる場合、親への援助がある場合などは、一定額を控除して収入基準を満たすか審査されます。
返還期限猶予制度とは
返還期限猶予制度とは、経済困難、災害、傷病、失業などの理由で返還困難になった場合、願い出ることにより、返済期限を先に延ばすことができる制度です。1年ごとに願い出て、最長120ヶ月(10年)延ばせます。病気・生活保護受給中など一部の事由は、その事由が継続している期間となります。
返還期間は猶予期間の分だけ延長されます。ただし、延長しても返還総額は変わりません。
経済的困難な場合の収入等の基準は、以下のとおりです。
・給与所得者の方:年間収入金額300万円以下
・給与所得以外の所得がある方:年間所得金額(必要経費等控除後)200万円以下
なお、被扶養者がいる場合、親への援助がある場合などは、一定額を控除して収入基準を満たすか審査されます。
猶予年限特例
猶予年限特例とは、家計状況の厳しい世帯の学生・生徒が、学ぶ意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由により学業を断念することのないよう、無利子の第一種奨学金の貸与を受けた場合、本人が卒業後に一定の収入を得るまでは、願い出により、返還期限の猶予を受けられる制度です。
通常、経済困難等を理由とする返還期限猶予の承認期間は10年となっていますが、本制度においては、承認期間の制限はありません。
第一種奨学金の申込者で、申込時、収入等が以下の金額となる世帯が対象です。この制度の基準に合致すると、日本学生支援機構から制度適用の通知がなされます。
・給与所得者の世帯:年間収入金額300万円以下
・給与所得以外の所得がある世帯:年間所得金額200万円以下
延滞した場合、利用できる救済措置
減額返還制度は、延滞後には利用できません。返還期限猶予制度は、延滞しても利用できます。延滞が始まった年月から1年ごとに、「奨学金返還期限猶予願」と「所得証明書」など事由に合った証明書を添付して願い出ることにより、審査されます。
1.猶予の事由に合った証明書を、延滞が始まった年月からすべての期間にわたり提出できる場合
この場合、延滞開始年月からの「一般猶予」申請が可能です。
2.猶予の事由に合った証明書を、延滞が始まった年月からは提出することはできないが、途中から現在までは提出できる場合
延滞が始まった年月からの猶予の事由がない場合、もしくは猶予の事由に合った証明書が提出できない場合は、「当該期間の返還分を入金後」に、一般猶予の申請が可能です。
3.上記1・2のどちらにも該当しないが、現在は真に返還困難な場合
延滞が始まった年月からの猶予の事由、もしくは証明書がない方のなかで、申請した月において返還が困難な方を対象として、「延滞期間を据え置き」、返還期限猶予が適用されます。
詳細は日本学生支援機構のホームページでご確認ください。
まとめ
減額返還制度は延滞後、利用できません。返還期限猶予制度は延滞しても、前述のとおり一定の条件を満たせば利用できます。
返還が困難な場合は、「返還期限猶予制度」や「減額返還制度」の利用も含め、延滞する前に余裕をもって日本学生支援機構に相談しましょう。
出典
日本学生支援機構
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー