更新日: 2023.05.12 その他暮らし

個人事業主や法人が融資を受ける方法って? 返済する際の注意点も解説

個人事業主や法人が融資を受ける方法って?  返済する際の注意点も解説
融資とは、個人事業や法人が事業で活用するお金を調達するために銀行に申込し、お金を借りることをいいます。融資は借入ですので、借り手が一定期間内に借りたお金を返済することが求められます。また借り手が返済能力を有していることが必要であり、返済能力を確認するために事業計画などの書類提出が必要で、審査が行われます。
水谷哲也

執筆者:水谷哲也(みずたに てつや)

中小企業診断士、情報処理技術者(アプリケーション・エンジニア)、ITコーディネータ・インストラクター、販売士1級&登録講師

1.創業融資は日本政策金融公庫へ

1-1.新創業融資制度(日本政策金融公庫)とは

お店を出店する、自宅を改装して整骨院をオープンするなど創業の形態はいろいろありますが資金が必要になります。お店や自宅の改装費など自己資金でまかなえればよいのですが、足りないのが実態です。そこで創業にあたって融資を受けることになりますが、近くの銀行に融資申込をしても対応してもらえません。
 
通常、融資には2期分の確定申告書や財務諸表が必要です。一部、創業支援している民間銀行もありますが、一般的には既に事業を営んでいる事業者が融資対象となります。
 
民間銀行が創業資金を融資しないと創業がすすみませんので政府系金融機関が用意されています。それが日本政策金融公庫です。日本政策金融公庫では国の政策にそったいろいろな融資を行っており、創業を促進するための新創業融資制度もその一つです。無担保・無保証の融資制度で融資対象は新たに事業を始める方または事業開始後、税務申告を2期終えていない方です。
 
税務申告というのは個人事業であれば確定申告、法人なら決算し、財務諸表を揃えて申告することをいいます。税務申告を2期終えていると確定申告書や財務諸表が2期分揃うので通常の融資で対応することになります。
 

1-2.新創業融資を申しこむには

日本政策金融公庫のウェブサイトに「各種書式ダウンロード」があり、必要書類をダウンロードできます。創業計画書の書式がアップされていますので、ダウンロードし記載例を参考にしながら計画を作成します。もちろん実現可能性が高い計画が求められます。
 
創業計画書の作り方ですが、例えば店舗を新たに出す場合は、まず見込みとなる売上が必要です。売上を計算するには来店客数が必要です。開業予定の店頭を通る人をカウントします。男性、女性、およその年齢といった属性もあわせてカウントします。また晴れた日、曇りの日、雨の日のように、天気別、時間帯別にも人数を数えます。
 
店の周りの商圏の特性も調べ、お店のお客になってくれそうな層がどれぐらい店の前を通るかが把握できれば、そのうちの何%を店に呼び込めるかを考えます。店ができただけでは、誰も入店してくれません。
 
縦看板やSNSでの情報発信、チラシを駅前で配布するなど、どう宣伝してお店に呼び込むかを考えます。また顧客ターゲットにあわせた営業時間やメニューを考えます。大体の人数が把握できたら客単価をかけると売上が分かります。
 
売上の次に経費を考えなければなりません。家賃やアルバイトなどの人件費、水道光熱費、食材の仕入れなどを計算していきます。想定される売上から経費を引いてプラスになっているかどうかが重要で、このプラス分から借入金の返済を行い、残りが自分の給与となります。
 
創業計画書にこれらのことを記載していきますが、欄が小さいので別紙に記載すれば大丈夫です。審査では実現可能性が判断されますので、審査する人にとって分かりやすく納得しやすいように記載していきます。
 
融資申込と出店場所の決定は、ほぼ同時の場合が多く、大家さんには日本政策金融公庫に融資申込をしているので結果が出るまで待ってほしいと依頼しておきます。ただし人気物件ですと手付金を要求される場合もあります。創業計画書には店の外観写真やレイアウトなど不動産情報の添付も必要です。
 
融資申込にあたっては、運転資金も考えておかなければなりません。運転資金とは家賃など経費で店をまわしていくのに必要なお金です。開店してすぐ売上を軌道にのせるのは大変で、ふつうは少しずつお客さんを増やしていきます。軌道に乗るまでの3ケ月分ぐらいは運転資金を借りておきましょう。
 
今までの経験も審査では重要です。飲食店経験がないのに、いきなり飲食店開業では審査はなかなか通りません。飲食店のアルバイトなど、創業に関連する業種で、どんな経験をしたか記載します。
 
日本政策金融公庫にいきなり創業計画書を出すと審査になってしまいます。まず相談予約し、創業計画書を見せてアドバイスをもらってください。店の場所を決定する前ぐらいから相談しましょう。どれぐらい融資をうけられそうか感触をつかんだうえで物件をみつける方が無難です。創業計画書を練り上げ、担当者の感触がよければ正式に審査申込をします。おおむね3週間~1ケ月で審査結果が出ます。
 

1-3.自己資金はいくら必要

新創業融資の申込には自己資金が必要で、要件として借りる金額の1/10が必要です。1000万円を借りたいなら自己資金が100万円必要です。ただし実際に借りられるかどうかは別問題で、おおむね自己資金の3~4倍が相場です。1000万円を借りたいのなら自己資金は300万円ほど用意したほうが無難です。
 
自己資金は通帳のコピーで証明しますが、例えばいきなり100万円が振込された明細ではなく、毎月10万円ずつ10ケ月にわたって積み立てし100万円になっている明細の方が、創業に向けてしっかり準備していたことが伝わり、審査ではプラスになります。
 
開業後、すぐに事業が起動にのるわけではないので通常は半年程度の据え置き期間をもうけます。半年間は元金の返済をせず、利子だけ支払うことで資金流出をおさえることができます。
 
開業時は融資を受けず自己資金で行い、事業途中で運転資金が足りなくなって場合にも新創業融資を申込できます。ただ事業が想定通りにはいかなくなって借りることになるので、うまくいかなかった要因分析をし、リカバリー計画を出す必要が出てきます。ですので、開業前に資金が少し足りない恐れがある場合は開業前に借りておく方がおすすめです。開業前なら創業計画書だけですみます。
 

1-4.スマホ延滞は要注意

新創業融資を申しこみ、創業計画書の内容に問題がなくても融資を断られることがあります。ほとんどの原因がスマホ料金などの滞納です。スマホの支払いにクレジットカードを使っている場合、3ケ月以上の滞納があると信用情報に記録されてしまいます。公共料金などの支払いでクレジットカードを使っている場合も同様です。
 
銀行では融資申込があると信用情報機関の信用情報をチェックします。信用情報機関にはクレジットやローンなどの信用取引の契約内容、返済・支払状況、利用残高などが記録されています。融資の審査にあたって、信用情報に傷があると審査が通りません。
 
滞納を解消すれば傷はなくなりますが、すぐ消えるわけではなく、滞納を解消してから約 5年後になります。ですので将来、事業を考えているのならスマホやクレジットカードの滞納がないように常日頃から気をつけておきましょう。
 

2.銀行から通常融資をうける

2-1.銀行の種類

事業が軌道にのり、売上が増えてくると民間の銀行から融資を受けることになります。一口に銀行といってもいろいろと種類があります。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行は全国区の都市銀行になります。
 
この他に都道府県レベルに地方銀行、第二地方銀行があります。第二地方銀行は昔、相互銀行という名前でしたが、相互銀行から普通銀行に転換しました。一般的に地方銀行より少し規模が小さくなります。
 
また地域ごとに信用金庫や信用組合があります。あまり知られていませんが信用金庫や信用組合は利益を追求しない金融機関です。会員の出資による非営利法人で、相互扶助の理念の下、会員向けに金融サービスを提供する形になっています。ただし、信用金庫の行員と話をしていても、地銀や都市銀行と同様にお客さんを獲得し、融資先を増やそうと考えており、ふつうの銀行となんら変わりません。
 

2-2.資金使途と返済計画

融資申込をした時に銀行がまずチェックするのが資金使途。生産性向上や新規事業のために設備投資するための資金なのか、仕入れなどの運転資金なのか確かめます。運転資金の場合は5年程度の返済期間になりますが、設備資金の場合は10年程度の返済期間になります。
 
次にきちっと返せるかどうかのチェックです。事業者にとって身の丈にあった設備投資になっているか、事業者が計画で想定している利益の仮に8割になっても返済できるかどうかです。
 

2-3.財務諸表は経営者の成績表

融資にあたっては2期分の財務諸表で判断します。場合によっては3期分を要求されます。個人事業主であれば2期分の確定申告書、法人なら財務諸表(貸借対照表、損益計算書)になります。財務諸表の損益計算書はいわば社長にとっての成績表になります。
 
1年間の経営の結果、利益が出たのか、それとも赤字だったのか最終利益で分かります。貸借対照表は損益計算書の積み重ねで、過去から今までどんな経営を行ってきたかの累積です。長年の経営で筋肉質の会社もあれば、青色吐息状態の会社もあります。
 
「経営者は数字が読めないとダメ」というのは、社長が、この財務諸表をしっかり見て理解できていることです。ある機械部品会社で後継者がいないため、働いていた職人が先代から経営を引き継いだ社長になっていました。
 
社長になっても考え方が職人のままで、良いものを安く客先に提供するという精神から材料費があがっても客先と値上げ交渉していませんでした。財務諸表をみると損益計算書は赤字になっており、貸借対照表には借入金が積みあがっていました。実質的に赤字受注で、働いている職人の給料などは借入で支払っている状況です。
 
つまり金を受け取ってではなく反対に支払って仕事をしているのと同じです。社長には取引先に値上げ交渉して黒字にするか、まだ傷があさいうちに会社をたたむしかないと話をしました。もちろん、こんな数字が読めない経営をしている会社に銀行は怖くて追加融資できません。
 

2-4.役員報酬ゼロはダメ

節税しようと利益をなるべく圧縮する気持ちはよく分かりますが、融資を受けたいのなら利益を出していないとダメです。融資を受けると元金と利子の返済が必要です。利子は支払利息で仕訳をします。つまり損益計算書にでてくる費用になります。
 
では元金返済の勘定科目とは何でしょうか。元金返済は損益計算書には出てこず、残った最終利益から支払うことで貸借対照表の借入金が減少します。つまり最終利益が残っていないと借入金は返済できません。元金返済額以上の最終利益は最低でも出す必要があります。
 
銀行から融資を受けるために、なるべく業績がよいように見せるために役員報酬をゼロにするケースがあります。会社の他に不動産収入などがあり、生活に困らないなど銀行に説明できるのならかまいませんが、他にめぼしい収入がなければ、銀行は役員報酬分をマイナスして計算し、実質的な赤字企業として融資審査が行われます。
 

2-5.役員借入ってなんで起きるの

貸借対照表をみていると長期借入金と並んで役員借入金という勘定科目があります。役員報酬は一度決めると期の途中で変更できません。厳密にいうと変更は可能ですが変更分には税金がかかることになり、通常は変更しません。
 
役員報酬を決めたら、1年間、会社にお金がなくても出し続けなければなりません。報酬の支払いは銀行振込ですが会社に現金がいので振込できません。つまり振り込みできない分が役員借入金となります。
 
また経費の支払いで現金が足りず、自分のお金で立て替えた場合も役員借入金になります。融資審査では銀行からの借入金に比べて、役員借入金は自己資金にちかいため割り引いて判断されます。
 
貸借対照表で左側の資産に比べ、右側の負債が多い状態を「債務超過」と呼んでいます。債務つまり負債が資産を超過している状況で、こうなると融資審査でよほど特殊な事情でもない限りは融資を断られます。また補助金などの応募でも、事業の継続性にマイナスがついてしまいます。
 

2-6.複数の金融機関と取引をする

創業時、日本政策金融公庫の融資を受ける時、融資を受けたお金を振り込む口座が必要です。また返済のための口座も必要で、通常は地域密着型の地銀や信金につくります。融資を考えた場合、都市銀行では扱う融資額の桁が異なってきますので地銀や信金の口座を作るのが無難です。作った口座で事業の入出金を行うと毎月のお金の動きを銀行が把握でき、これが銀行に対する信用になります。
 
財務諸表を2期分、揃えれば口座がある銀行に融資申込ができます。商売が順調であれば口座の動きで分かるので融資は通りやすくなります。さらに事業が発展しそうな場合は別の地銀や信金ともおつきあいを初めてください。一つの銀行では融資の上限額があり、他の銀行からしか借りられない場合が出てくるからです。
 
別の地銀や信金から売り込みにくる場合もありますので、忙しいと邪険な態度をとるのではなく話を聞いてあげてください。行員も行きやすい所には頻繁に訪れるようになるので、いろいろと情報をとることができます。
 
これから金利上昇が予想されるので、少しでも融資の利率が低い方が得です。商売の鉄則は競争ですので複数銀行と取引をしてください。また実績を作りたいと行員が考える場合は、よい融資条件をだしてくれる場合があります。
 

2-7.Bプランを作る

新規事業などを計画している場合はラフでもよいので事業計画と返済計画があると銀行も審査しやすくなります。行員が銀行内で内部稟議をあげますが、経営者が何も用意していないと経営者からヒアリングした内容で稟議をあげざるをえません。業績がよい会社なら、それでも融資は通りますが、一般的には事業計画が必要です。
 
当然、うまくいく計画で作成しますが、昨今のように経営状況が激変するなかで、事業を軌道に乗せるのは大変です。オススメなのは事業が思っていたほどうまくいかなかった時のBプランを作っておくことです。
 
どうなったら撤退の判断をするのかなど目標値をマイルストーンに落とし込みます。これなら大ヤケドする前に事業立て直しに動く可能性が高くなり、うまくいかない場合も返済への影響を減らせられると判断でき、銀行としても貸しやすくなります。またしっかりした計画をたてる事業者という評価も得られます。
 

2-8.迂回融資はだめ 銀行は貸付金をチェック

銀行がいやがるのが融資目的と違うことにお金を使うことです。設備投資するための資金で貸したはずが運転資金に使われていたなどのケースです。約束をたがえたと判断され、今後の融資にはマイナスになります。
 
まずいのが貸付金という勘定科目。関連会社や子会社などに貸付がある場合です。1000万円融資したら貸付金が500万円増えていると融資したお金の半分を子会社へ迂回融資したのではないかと勘繰られます。子会社が融資申込をしても融資がおりない場合、親会社が助けるケースがあります。
 
親会社の自己資金で行うのならかまいませんが、新規融資が使われていると迂回融資と判断されてしまい。信用にはマイナスとなり、銀行からは早急に貸付金を解消するように迫られます。
 

2-9.信用保証協会って何?

各都道府県に信用保証協会があります。銀行から融資を受ける時、融資額が大きくなると保証をつけて融資を行います。この保証を行うのが信用保証協会で事業者が借入金の返済ができなくなった時、銀行に信用保証協会が立て替えて支払う制度(代位弁済)になっています。
 
タダで保証はできませんので保証料をとります。つまり融資では利率+保証料の支払いが必要となります。100%保証ではなく80%保証です。つまり何かあったら銀行も20%分の損失はかぶりなさいという制度(責任共有制度)です。融資審査は銀行と保証協会の両方で行い、両方ともOKでなければ融資は実行されません。また創業関連保証、セーフティネット保証などは80&ではなく100%保証になっています。
 

2-10.制度融資って何?

制度融資とは、様々な政策に基づいて都道府県・市町村、銀行、信用保証協会が連携して提供している融資制度です。制度融資は自治体が貸付原資の一部を負担することで、長期・低利な融資を実現しています。
 
通常、銀行融資では企業の信用度に応じて金利が決定します。このため、創業間もない中小企業が低金利で借りることは難しいですが、制度融資では低金利を実現しています。ただし信用保証協会の利用を条件としているものが多く、申込から融資実行まで少し時間がかかります。
 
商工会議所、商工会の経営指導を半年以上受けていて、商工会議所等の推薦をうけると申込ができる融資制度にマル経(小規模事業者経営改善資金)があります。
 
利用できるのは小規模事業者(製造業なら従業員20人以下、卸・小売・サービス業は従業員 5人以下)で日本政策金融公庫への融資申込になります。無担保、無保証で借りやすくなっています。マル経を活用するために商工会議所や商工会の会員になっている事業者も多くいます。
 

2-11.ビジネスローンって何

融資の場合、結果がでるまで時間がかかります。資金繰りの関係から早急に現金が必要な場合はビジネスローンを活用することがあります。ビジネスローンには銀行系、信販系、消費者金融系があり、銀行系の新規申込は少し時間がかかりますが、取引がある銀行であれば数日で結果が出ます。プロミスのような消費者金融系なら早ければ即日で結果がでます。
 
ビジネスローンは、事業の業績や将来性、資金使途などに加え、事業主個人の信用情報などによって審査が行われます。スピーディですが、その分、利率も高くなります。緊急時だけ利用するとよいでしょう。
 

2-12.都道府県の設備資金貸与制度

小規模事業者の場合、都道府県にある設備資金貸与制度が活用できます。昔は全都道府県にあった制度ですが低金利の中でやめた都道府県も多くあります。制度を残している都道府県があり、設備資金を貸し付けする制度と、設備を都道府県が委託した団体が買って事業者には割賦、リースで貸しつける制度の2つがあります。
 
審査は1ケ月に1回、その期間に応募があった書類をまとめて審査します。結果が出るまで時間はかかりますが銀行融資と別枠で設備導入できるのが一番のメリットです。
 

3.融資を受けた、その後について

3-1.一括返済は信用をなくす

個人が住宅ローンを借りた場合、がんばって貯金し、資金が溜まったところで住宅ローンの一括返済を行ったりします。融資でも同様に一括返済をした方がよいのでしょうか。結論から言うと一括返済せず、最初の約定(約束のこと)通りに返済する方がおすすめです。
 
一括返済とは決まっていた返済日を前倒して返済することです。融資をした銀行にとっては利息が減る話になり、融資をする時に審査して、これだけの利息が入るはずだと予定していた利益が消えることになります。
 
また事業者は融資申込時にきっちり計画をたてたのかが疑問視されます。次、銀行に融資申込をした時、また一括返済するんじゃないかと身構えられます。できたら最初に決めた条件どおりに返済しましょう。実は銀行との取引が続いていることが信用上、とても重要です。
 
コロナ禍にはゼロ・ゼロ融資(無利子・無担保で融資する仕組み)がありました。最初は日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府系金融機関で行っていましたが、利用者が多く政府系金融機関では対応が間に合わなくなったため、民間金融機関も融資できるようになりました。
 
ゼロ・ゼロ融資は信用保証協会の100%保証で、利子も各都道府県が補給することで3年間無利子になります。最も長い場合、5年間は元金の返済も免除されます。
 
銀行から「既存の借入金だと利子もかかるのでゼロ・ゼロ融資に切り替えれば返済も楽になりますよ」と言われて切り替えた事業者が多くありました。銀行との関係でいえば積み重ねた信用がチャラになったのと同じです。
 
20%の責任がある融資から100%信用保証協会が保証するゼロ・ゼロ融資に切り替えれば、銀行にとってはノーリスクになります。危ない融資先と考えている事業者を積極的に切り替えしたという話も聞いています。次回の追加融資申込をした時に、銀行がどう判断するのか微妙になります。
 

3-2.半分ほど返済したら次の融資の話になら

融資をうけて、しばらくしてから融資申込をしても断られます。最初の融資計画がいいかげんだったことになり反対に信用をなくしてしまいます。では完済しなければ次の融資は受けられないのでしょうか。
 
融資を受けて事業を順調にすすめ、滞りなく返済し、半分ほど返済すると次の融資の話につなげられます。約定通り、半分を返済したことが信用になっています。信用がついたことで新規融資額は以前の額よりも拡げることができます。
 

3-3.毎月、業況報告書を提出

紙1枚でよいので当月の状況、翌月の見通しの業況報告書を作ります。銀行の担当者に試算表や個人事業なら月の売上表と一緒に作成した業況報告書を渡して説明をしておきます。銀行の行員は基本3年程度で支店を異動します。行員の間で引継ぎが行われますが、多数の事業者を引継ぎしますので引継ぎされた側は覚えていません。
 
また引継ぎは口頭で行われます。そこで業況報告書を行員に渡しておくと試算表などをまとめている事業者のフォルダに提出した業況報告書もセットされ、これが新しい行員へ紙として引き継がれます。
 
紙で残して引継ぎすると最初から説明しなくても、読むだけである程度、ビジネスの流れなどが理解してもらえます。またこの時期から新しい事業を考えていると記載しておけば銀行側も新規融資の申込がありそうだと把握しやすくなります。
 
国では経営者保証をはずすために全国銀行協会と日本商工会議所が「経営者保証に関するガイドライン」を策定しています。ガイドラインには3要件がありますが、そのうちの一つが「金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている」があります。きちんと報告すれば、この条件を満たすことができます。毎月が無理なら四半期ごとでもよいので、ぜひ実施してみてください。
 

3-4.返済が遅れるとどうなる

事業者を取り巻く状況は刻々と変わり、事業がうまくいなくなり返済できなくなる局面もでてきます。信用保証協会付融資については3回以上の支払いの延滞、90日以上の支払いの延滞のどちらかがあると事故扱いになり、代位弁済手続きへと移っていきます。
 
代位弁済になると融資について信用保証協会が立て替えてくれますが債務がなくなったわけではありません。事業者は信用保証協会に対して返済を続けなければなりません。
 
返済の見込みが難しい場合は早めに返済のリスケジュール(リスケ)を考えましょう。銀行と話し合って返済期間を伸ばすことで毎月の返済額を減らし、または利払いだけで元金返済を猶予するなど、手法はいろいろあります。一つの銀行から借りている場合は交渉が比較的やりやすいですが、複数の銀行から借りている場合は複数の銀行とのリスケ交渉が必要になります。
 
各都道府県に中小企業活性化協議会という公的機関があるので早めに相談しましょう。リスケ中は当然、新規融資が受けられませんので運転資金をどう確保するか頭を悩ませることになります。
 
また銀行を通じて、もしくは直接、信用保証協会に連絡し、専門家を無料で派遣して事業計画作りを手伝ってくれるサービスもあります。銀行との調整が必要な場合は経営改善計画を作成するサービスもあります。
 
リスケせずにほったらかしにしておくと信用保証協会が銀行へ返済の肩代わりである代位弁済を行い、事業者の交渉相手が信用保証協会に変わります。信用保証協会から一括返済の請求が届きますので、まずは信用保証協会と交渉をしてください。信用保証協会からは現実的で抜本的な経営改善計画を求められます。
 
代位弁済になると信用情報に事故情報が記録されますので債務を完済してから5年間は消えません。ですので早めに銀行や活性化協議会で相談しましょう。
 
執筆者:水谷哲也
中小企業診断士、情報処理技術者(アプリケーション・エンジニア)、ITコーディネータ・インストラクター、販売士1級&登録講師
 

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