更新日: 2019.08.07 その他暮らし

<身近な電気の話> 電力自由化、どうやって会社を選んだらよいでしょう?

<身近な電気の話> 電力自由化、どうやって会社を選んだらよいでしょう?
家庭用電力が自由化になりましたが、まだどうしようか迷っている方も多いと思います。まず、新規参入者にはどのような会社があるか調べてみましょう。経済産業省のホームページに一覧表が掲載されています。その中から、これはと思う会社やサービスをピックアップして検討してみてはいかがでしょうか。「料金比較サイト」などを通じて調べてみるのも一つの方法かもしれません。でもそれだけでは前に進めません。気になることがたくさんあります。ここで分かりやすく解説します。
藤森禮一郎

執筆者:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

手続きは簡単です

スイッチングの手続きは難しくありません。電話一本。とても簡単です。ただ、手元に現在契約している会社の電気料金の領収書(お客様番号が書かれています。これは共通番号です)を用意しておいてください。契約したい会社を選んで決めたら、その会社に直接電話で申し込み、サービス内容を選んでうえで契約します。契約が成立すれば、スイッチングに必要な手続きは新しく契約した会社が進めてくれます。どの会社を選んでよいのか、自分ではよくわからない場合は、専門家や「電気料金比較サイト」に相談するのも一つの方法です。

甘い言葉より信頼優先

どの会社を電話しても対応は親切なはずです。でも、数多い事業者の中には、怪しい事業者もいます。甘い言葉に注意です。「信頼できそうな会社」を探しましょう。
契約相談中には契約上必要だと個人情報の提供を求められる場合があります電力使用情報には大事な個人情報がいっぱい含まれています。
料金水準や付帯するサービスの内容は不変ではありません。慌てずに生活パターンに合う電力会社とサービスを選んでください。一度選んでしまうと契約変更しにくい会社もあるようです。

電気の質は変わりません

発電所からの電気は、一般送配電会社(10電力会社が地域ごとに所有している)の送配電線を通って家庭まで届けられますから、契約する会社やサービスの内容によって料金は異なりますが、「電気の質」には変わりはありません。火力発電所の電気も、水力発電所の電気も、原子力発電所の電気も、太陽光や風力発電の電気も、全部ミックスされ調整されて送られてきますから契約会社による質の違いはありません。安定供給サービスは送配電会社の責任です。

昼間は家族が不在だが・・

契約の切り替え時、契約者が不在でも大丈夫です。通常の切り替えは電気工事を伴いませんから、立ち合いは不要です。電力会社同士の手続きだけで、およそ2週間で契約変更手続きは完了します。
ただ、在来型のメーターを使っている場合はスマートメーターへの切り替えが必要で立ち合いを求められる場合もあります。メーター取替の費用は発生しません。その際、金銭を要求するケースもあるようですから気を付けましょう。

メニューが多いのはいいけど多すぎて・・・

初めての経験です。どの会社のどのサービスを選択しようか悩むでしょう。準備作業が一番大変ですね。選択できる事業者数が数十社もありますから、あれもこれもと目移りします。自分のニーズをはっきりさせ、相手(会社とサービス内容)をよく調べておけばお気に入りのメニューに巡り合えます。
市場には魅力的なメニューがいっぱいです。うちの電気は何%も安いですよ、電気もガソリン代も安くなりますよ、スマホ代が安くなるしポイントも加算されますよ、など様々なサービスプランがそろっています。だから小売会社の得意分野を知っておくと選択に役立ちます。

自分の生活パターンを知ろう

最初の準備は、「自分の生活を知る」ことです。家族全員の行動パターン、これから生活設計を確認し想定される電気の使い方を基準に新しいサービスを選択するのが良いと思います。その例を以下にあげてみます。

① 現在および将来の家族構成をまず考えます。子供成長に従い家族構成も変わります。
② 家族の状態、小さな子供や受験生、介護が必要な高齢者が同居しているか。
 それによって電気の使い方は大きく変わります。 
③ 共働き家族などか自営業なのか。昼間はほとんど外出していればエアコンや洗濯機、
 炊事などは夜に集中するので電気の消費も夜型になりますね。
④ 家族全員が1台ずつスマホを利用していてスマホ利用料がかさんで困っている。
⑤ 家族がマイカー通勤していて週末や休暇はドライブ旅行するのでガソリン代がかさんでしまう。
⑥ 夫の転勤や子供の進学で二重生活となり帰宅交通費や光熱費がかさんでしまう。

など、いろいろとリストアップしてみましょう。電気料金が安くなれば嬉しいですが、
付帯するサービスもいろいろあります。上手に使って一番得するサービスメニューを選択したいですね。
以下、家族構成の変化に応じて「契約電力(アンペア契約)」の見直しなども有効です。④~⑥などは通信会社の「スマホ割り」、石油元売り会社の「ガソリンセット割り」、「航空券割り」など各種セット割引サービスがあります。便利なサービスを選択できれば、電気のある生活が快適になります。
今契約している電力会社も自由化にあわせて新しいサービスを相次いで打ち出しています。スイッチしなくても「契約の見直し」という方法もあります。

そして会社の特徴を知ろう

割引率を基準に選ぶ場合は注意が必要です。ホームページ上に提示している料金表は「標準モデル家庭」を基準にしていますから、「〇〇%割引」がそのまま適用になるとは限りません。過去の使用実績を元に試算してみてください。
割引率の大きいメニュー、毎月の使用量が400kWh以上の家庭向けサービスです。たくさん使うほど割高な料金設定になっていているので割高部分の多い家庭は、その分割引しやすいのですね。ぜひ毎月の領収書の使用実績をチェックしてみてください。
旧一般電気事業者、PPS、ガス事業者、石油元売り事業者など、自社電源を持って市場参入している電力会社は、多消費世帯から単身世帯向けまできめ細かなサービスメニューをそろえていますね。
昨年までは都市ガス会社の「ガスとデンキのセット割引」に注目が集まっていましたが、この4月からはガス小売りも自由化されましたから、電力会社の「電気とガスのセット割引」も登場してきました。大都市ではガス会社と電力会社が真向勝負です。関西電力と大阪ガス、関西地区で戦いが熱いようです。

料金割引より付帯サービスで

通信会社、旅行会社、CAテレビなど自社電源を持っていない会社は、電力を市場で調達して供給するか、または大きな電力会社の販売代理店として市場に参入するケースが多いようです。ですから「料金での差別化が難しい」ので付帯サービスに重点を置いています。「顧客囲い込み」が主眼ですから料金競争よりスマホを使ったエネルギー管理サービス、広範なポインサービスの提供などで魅力を出そうとしています。女性や若者に人気があるようです。会社の特徴を知って快適生活のエネルギーパートナーを選択する時代になりました。

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