更新日: 2023.05.16 子育て
【ランドセル代がゼロ円に!?】「就学援助制度」を受けられる家庭の「要件」や「世帯年収」について解説
そこで、文部科学省は学校教育法に基づいて、小学生と中学生を対象とした「就学援助制度」を設けています。どのような制度なのか、自身が対象になるのかを確認してみましょう。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
就学援助制度とは
学校教育法第19条には、「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」と定められています。就学援助制度は、この法律に基づいて各市区町村が行っている制度であり、以下の費用が支援されます。
・学用品費(文房具、習字セット、辞書など)
・体育実技用具費(柔道着、スキー板など)
・新入学児童生徒学用品費等(制服など)
・通学用品費(ランドセル、通学用靴など)
・通学費(電車代、バス代など)
・修学旅行費
・校外活動費
・医療費
・学校給食費
・クラブ活動費
・生徒会費
・PTA会費
・卒業アルバム代等
・オンライン学習通信費
就学援助制度の対象者
就学援助制度の対象になる人は、国公立に通う小学生、中学生を育てている保護者のうち、以下のいずれかに該当する人です。
・生活保護を受けている人
・生活保護を受けている人に準ずる程度に困窮している人
「生活保護を受けている人に準ずる程度に困窮している人」についての認定基準は、各市区町村によって異なります。ここでは、東京都北区の要件を例として記載します。
・児童扶養手当を受けている人
・生計を共にする世帯全員の前年分の総所得金額が、基準額未満の人(所得基準額の参考例は図表1の通りです)
・特別の事情により援助を希望する人で、教育委員会が必要と認めた人
図表1
東京都北区 就学援助
生活保護・ひとり親家庭以外も対象になる
就学援助制度の対象者は、生活保護や児童扶養手当を受けている人以外にも、世帯の総所得金額が基準額以下であれば該当する仕組みになっています。
東京都北区では、世帯が父と母、子1人である場合の総所得金額の基準額は約345万円となっていますが、給与年収にすると約486万円です。該当する人は意外といるのではないでしょうか。
なお、世帯所得である点には注意してください。父の年収が480万円であったとしても、母も働いており、年収100万円稼いでいる場合の世帯年収は580万円、世帯の総所得金額は385万円になります。
ちなみに、世帯員は原則として住民票のみで判断されます。例えば、夫の実家で両親と同居はしているが住民票は別という場合には、両親の所得は加味されません。
新1年生には入学準備金も
入学する年はランドセル代や制服代など大きなお金がかかることを考慮し、市区町村によっては入学準備金を援助しています。
例えば、大阪府堺市では、新小学1年生へは5万4060円、新中学1年生へは6万3000円が支給されます。高価なランドセル代にそのまま充当でき、非常に助かりますね。
申請方法
就学援助制度は自分で申請書を提出しなければなりません。
申請方法は各市区町村によって異なりますが、東京都北区では学校を通して申請書が配布され、学校を通じて提出するようになっています。令和4年度就学援助実施状況調査によると、教育委員会に直接提出する形にしている市区町村もあるようです。
図表2
文部科学省 令和4年度就学援助実施状況等調査結果
まとめ
就学援助制度の案内や申請書は学校から配布される市区町村が多いため、制度の存在自体は知っているという人は多いでしょう。しかし、案内をサラッと読んでみると「生活保護」や「児童扶養手当」という文字が目に入り、自身には無関係だと思ってしまいがちです。
しかし、世帯所得によっては該当する場合があることを知っておくと有効です。休職や転職などで年収が減った年であれば該当する可能性が高まるため、特に注意して確認しましょう。
出典
文部科学省 就学援助制度について(就学援助ポータルサイト)
東京都北区 就学援助
国税庁 No.1410 給与所得控除
堺市 就学援助(入学準備金)早期支給
文部科学省 就学援助実施状況等調査結果(令和4年度に実施した調査)
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士