更新日: 2023.05.23 その他暮らし

住宅地基準地価が31年ぶりの上昇! 人口は減っているのになぜ?

住宅地基準地価が31年ぶりの上昇! 人口は減っているのになぜ?
令和4年(2022年)の都道府県地価調査において、住宅地の基準地価が31年ぶりに上昇に転じました。
 
本記事では、都道府県地価調査の概要について説明するとともに、住宅地の基準地価が上昇に転じた理由を解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

基準地価とは

基準地価とは、国土利用計画法施行令 第9条(※1)の規定に基づき、都道府県知事が毎年7月1日時点(※2)の基準地の1平方メートル当たりの標準価格について、「都道府県地価調査」により公表するものです。
 

令和4年(2022年)地価調査結果の概要

令和4年(2022年)7月1日時点の全国の土地価格を調べた「令和4年都道府県地価調査の概要」(※3)によると、住宅地の全国平均の地価は前年に比べて0.1%上昇し、バブル期の平成3年(1991年)以来、31年ぶりにプラスに転じました。また、商業地の全国平均の地価は前年から0.5%上昇して、3年ぶりのプラスとなりました。
 
住宅地および商業地の全国平均の地価の変動率(前年比の上昇・下落率)は、図表1のとおり推移しています。
 
【図表1】


 

住宅地の地価の動向

1.地域別地価の変動率の動向

過去5年間の住宅地の基準地価について、変動率の動向を全国平均、東京圏、大阪圏、名古屋圏、地方4市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)および、その他の地域別に見ると、図表2のようになっています。
 
【図表2】


 
特筆すべきは、地方4市の地価が全国平均を大きく上回る3.9~6.6%の変動率で推移していることです。
 

2. 変動率上位の住宅地

「令和4年都道府県地価調査の概要」(※3)によると、全国の住宅地における地価の変動率順位では、1~3位までを北海道北広島市の基準地が占めています。
 
これら北広島市の基準地は、JR千歳(ちとせ)線で札幌駅から30分程度の北広島駅の近傍にあります。また、4~10位も北海道で江別市、恵庭市および石狩市の基準地になっており、いずれも鉄道を利用して札幌市にアクセスすることができます。
 

3. 特徴的な地価の動向があった住宅地

「令和4年都道府県地価調査」(※5)において特徴的な地価動向が見られた郊外部の住宅地として、北海道江別市の基準地があります。当該住宅地はJR函館本線で札幌駅から約25分の野幌駅近郊となっており、令和3年(2021年)の前年比15.7%から25.3%の上昇と大きく変化しています。
 
また、東京圏で大きく地価動向が変化したのは、つくばエクスプレス線で秋葉原から約45分のみらい平駅近傍にある茨城県つくばみらい市の基準地で、令和3年(2021年)は前年比の上昇が2.2%であったのに対し、令和4年(2022年)は10.8%の上昇と最も高い変化を示しています。
 

住宅地の地価が上昇に転じた理由として考えられること

 


 
住宅地の基準地価が全国平均で31年ぶりに上昇に転じた理由として、「令和4年都道府県地価調査結果の概要」(※6)では以下のような点が挙げられています。

(1)経済活動の正常化が進むなかで、新型コロナウイルス感染症の影響などで一時的に弱含んできた住宅の需要が回復してきていること
(2)主要な都市部のほか、生活の利便性に優れた地域における住宅需要が堅調であること
(3)低金利や住宅取得支援施策などにより、住宅需要の下支え効果があること
(4)生活スタイルの変化によるニーズの多様化などで、地価の上昇が郊外部にも及んでいること
(5)地方4市の中心部における地価の上昇や住宅の供給不足に伴い、周辺市町の地価が上昇していること

 

まとめ

住宅需要は回復傾向にあり、住宅地の基準地価は31年ぶりに上昇に転じる結果となりました。
 
今後も住宅地の上昇傾向は続くものと思われますが、特に主要都市近郊で交通の便が良い住宅地は地価の上昇が顕著となるのではないでしょうか。
 

出典

(※1)e-Gov法令検索 国土利用計画法施行令
(※2)e-Gov法令検索 国土利用計画法施行規則
(※3)国土交通省 令和4年都道府県地価調査の概要
(※4)国土交通省 都道府県地価調査 変動率及び平均価格の時系列推移表
(※5)国土交通省 令和4年都道府県地価調査
(※6)国土交通省 令和4年都道府県地価調査結果の概要
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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