【社会保障の主な制度変更】 第5回「母子父子寡婦福祉資金貸付金」、「児童扶養手当」の変更点を解説
配信日: 2023.06.09
最終回は、「母子父子寡婦福祉資金貸付金の額の改定」と、「児童扶養手当の手当額引上げ」について取り上げます。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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母子父子寡婦福祉資金貸付金の額の改定
20歳未満の子どもを養育している、ひとり親家庭の自立支援を目的とする自治体の貸付金に母子父子寡婦福祉資金貸付金があります。
就学支度資金、修学資金、技能習得資金、転宅資金など12種類の貸付金があります。貸付金の種類により無利子または低利子に利用できます。
令和5年4月より、以下のとおり貸付限度額の改定が行われました。
・事業開始資金
貸付限度額:326万円(令和4年度314万円)
※母子・父子福祉団体は489万円(令和4年度471万円)
・事業継続資金
貸付限度額:163万円(令和4年度157万円)
・修学資金(専修学校一般課程(月額))
貸付限度額:5万2500円(令和4年度5万1000円)
・就職支度資金
貸付限度額:10万5000円(令和4年度10万円)
・生活資金(一般(月額))
貸付限度額:10万8000円(令和4年度10万5000円)
・結婚資金
貸付限度額:31万円(令和4年度30万円)
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等によるひとり親家庭の家計への影響等を踏まえ、家計が急変し、児童扶養手当受給相当まで収入が減少した者に対し、上記貸付金のうち生活資金が拡充されました。ただし、児童扶養手当を受給している場合は対象外です。
貸付限度額は、児童扶養手当に準拠した額です。貸付期間は原則3月以内(最長1年まで延長可)、償還期限は10年以内です。利率は、保証人がある場合は無利子、保証人がいない場合は年1.0%です。
児童扶養手当の手当額引上げ
児童扶養手当は、ひとり親家庭や両親がいない家庭、親に障害がある家庭などへの子育て支援です。
対象となる子は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)です。本体額をベースに、子の加算がつきます。世帯の所得によって給付される金額が変わり、一定額を超える世帯には支給されません。
満額もらえることを全部支給、満額もらえないことを一部支給といいます。収入額の目安は、2人世帯なら年収約160万円まで全部支給、年収約160万円~365万円までは一部支給です。
7~12月に申請した方は、前年の所得で支給額が判断され、1~6月に申請した方は、前々年の所得で支給額が判断されますので留意してください。
物価スライド制のため、支給月額(手当額)は消費者物価指数の変動により変わることがあります。令和4年の物価変動率(2.5%)に基づき、2.5%の引き上げとなりました。
・本体額
全部支給:4万4140円(令和4年度4万3070円)
一部支給:4万4130円~1万410円(令和4年度4万3070円)
・加算額(児童2人目):
全部支給:1万420円(令和4年度1万170円)
一部支給:1万410円~5210円(令和4年度1万160円~5090円円)
・加算額(児童3人目以降):
全部支給:6250円(令和4年度6100円)
一部支給:6240円~3130円(令和4年度6090円~3050円)
社会保障のうち国民生活に影響がある制度とその変更点について、全5回で解説しました。ご自身に該当する制度があれば、しっかり確認しぜひ活用しましょう。
出典
厚生労働省 厚生労働省関係の主な制度変更(令和5年4月)について
厚生労働省 母子及び父子並びに寡婦福祉法施行令の一部を改正する政令の施行について(施行通知)
厚生労働省 令和5年度 厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課母子家庭等自立支援室予算案の概要
厚生労働省 令和5年度の年金額改定についてお知らせします
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。