更新日: 2023.06.12 その他暮らし

マンション管理組合と預金保険について見てみよう!

執筆者 : 大泉稔

マンション管理組合と預金保険について見てみよう!
2023年3月10日にアメリカでシリコンバレー銀行が経営破綻しました。預金保険制度を思い出された方もいらっしゃると思います。また、マンションを購入した人のなかには、マンションの修繕費用に不安を感じた方もいるかもしれません。
 
マンションを購入するとマンション管理組合に加入することになります。マンション管理組合は、マンションを適切な状態で管理・維持することを目的としており、マンション購入者は「区分所有者」として、なんらかのかたちでマンションの管理・維持や修繕などに関わります。
 
そこで、本稿では、マンション管理組合の修繕積立金の安全性について考えてみます。
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

マンション管理組合と預金保険

預金保険では預金者1人に付き、決済用預金は全額、普通預金や定期預金は元本1000万円とその利息まで補償の対象になっています。もし、マンション管理組合の名義などで預金等があれば、マンション管理組合も預金者の1人になります。
 
では、マンション管理組合の場合、何をもって「預金者」なのでしょうか?
 

法人登記のあるマンション管理組合

国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、マンション管理組合のうち13.2%が法人として登記がなされています。
 
もし、マンション管理組合が法人登記されている場合、預金保険ではマンション管理組合法人が「1人の預金者」という扱いになります。マンション管理組合法人は「会社名義の預金を持つ」のと同じイメージですね。
 
法人としての登記がないマンション管理組合のほうが多いですが、登記のないマンション管理組合の場合はどうなるのでしょう。マンション管理組合名義の預金等を有していたとしても、「権利能力なき社団」として扱われる場合と、「任意団体」として扱われる場合とが考えられます。
 

「権利能力なき社団」として扱われるマンション管理組合

では、法人登記のないマンション管理組合の場合は、いかがでしょうか?
 
以前、「マンション管理組合名義の預金と、マンション管理組合の理事長の個人名義の預金が名寄せ(1つの名義の預金とみなす)されてしまうのでは?」というお問い合わせをいただいたことがあります。
 
つまり、マンション管理組合名義の預金と、マンション管理組合の理事長の個人名義の預金を合計して「預金保険の対象とする」という考え方ですね。そういう考え方はありません。
 
そもそも「権利能力なき社団」とは、「団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない」(最高裁昭39.10.15判決)とされています(引用:預金保険機構「(1)名寄せに際しての預金者の扱い」)。
 
「多数決の原則」は、マンション管理組合での総会が考えられます。構成員の変更とは区分所有者の売買による変更のことで、「団体としての主要な点が確定」はマンション管理組合の規約が考えられます。
 
マンション管理組合が、もし「権利能力なき社団」として扱われる場合は、「マンション管理組合名義の預金等」で、預金保険では「1人の預金者」としてみなされます。
 

任意団体に該当するマンション管理組合

では、マンション管理組合が「任意団体」として扱われるのはどのようなケースでしょうか?
 
マンション管理組合の規約に、「組合資産について構成員が共有持分権を有する」旨を明記していると「任意団体」に該当すると考えられます。
 
マンション管理組合が任意団体に該当する場合、マンション管理組合名義の預金等は、構成員一人ひとりの預金等として、持ち分に応じて分割し、構成員一人ひとりの他の預金等と合算され、預金保険の補償がなされます。
 

まとめに代えて

まずは、ご自身が区分所有するマンションの管理組合が、「法人」・「権利能力なき社団」・「任意団体」のいずれかに該当するのか確認しておく必要があるでしょう。
 
「任意団体」の場合、マンション管理組合名義の預金等のうち、ご自身の持分がいくらなのか把握しておく必要があります。また、「法人」や「権利能力なき社団」に該当する場合でも、どの銀行にいくらの預金等があるのかを知っておいたほうがよいでしょう。
 
6月は総会が多く開かれます。マンション管理組合の決算資料等で確認する良い機会といえそうです。
 

出典

国土交通省 平成30年度マンション総合調査結果 31ページ
預金保険機構 (1)名寄せに際しての預金者の扱い
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

ライターさん募集