更新日: 2023.06.16 その他暮らし

モラハラ夫と離婚を決意した主婦ですが、「俺の家だから出ていけ!」と言われています。財産分与に家は含まれるのでしょうか?

執筆者 : 柘植輝

モラハラ夫と離婚を決意した主婦ですが、「俺の家だから出ていけ!」と言われています。財産分与に家は含まれるのでしょうか?
離婚をする際に、多くの夫婦の間で問題となるのが、財産分与です。特に、住居や車など、名義が一方の名前になっている物については、財産分与でどう分け合うか争われることが珍しくありません。
 
そこで、「俺の家だから出ていけ!」と夫から言われた妻の例を参考に、財産分与の性質について考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

財産分与の法的性質

財産分与の法的性質は、主に夫婦が共同生活中に形成した財産を公平に分配するためのものであると考えられています。それに付随し、離婚後の生活保障や離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質も併せ持っていると考えられています。
 
財産分与の方法や額については、上記の性質を基に当事者の協議によって決めることができます。しかし、協議がうまくいかない場合は、家庭裁判所へ調停ないし審判を求め、司法の力を借りて進めていくこともできるようになっています。
 
なお、家庭裁判所の力を借りる場合、夫婦で財産を2分の1ずつで財産分与することになることが多いといいます。共働きである場合も、一方が専業で家事をしているような場合も同様です。これについては、「財産分与の趣旨である共同生活中に形成した財産の公平の分配」という性質に重きが置かれるためと思われます。
 

夫名義の家は財産分与の対象にならないの?

財産分与においては原則夫婦の婚姻生活中で築かれた財産全てが対象となります。仮に夫が働いたお金で、夫名義で購入したとしてもそれは主婦である妻が家事分担をしていたことによって得られたと判断されれば、財産分与の対象になります。
 
つまり、基本的には独身時代から有していたものや親から相続したものなど、明確に配偶者の影響なく自分の力のみで得た財産以外は、財産分与の対象になると考えられます。
 
では、家の財産分与はどのように行われるのでしょうか。この点、家のように容易に分割ができないものの、財産分与は基本的にどちらか一方が所有権を有し、もう一方は対価としてお金を受け取るといった分け方が基本になります。話し合いがまとまらない場合や、どちらもお金が必要で所有権はいらないなどという場合は、売却してお金に換価して財産分与することもあります。
 
いずれにせよ、夫の一方的な「俺の家だから出ていけ!」という旨の主張は認められない可能性が高いでしょう。
 

財産分与は離婚前にするべき?

財産分与は離婚前であっても離婚と同時でも、離婚後でも構いません。どんなタイミングでも、夫婦の一方から他方に対して請求することができます。
 
しかし、夫が「家は自分の所有だから出ていけ」と一方的に主張している状況では、穏便に財産分与が終わるとは考えにくく、当事者間の話し合いで解決することは困難でしょう。
 
そうなってくると、財産分与によって公平に財産を分けてもらうには、家庭裁判所に申し立てをすることになります。
 
この場合、財産分与について早めに家庭裁判所に申し立てを行うべきです。なぜなら、家庭裁判所に財産分与の申し立てができるのは、離婚から2年以内とされているからです。家庭裁判所への申し立ては、相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所にて当事者の一方から行えます。
 
なお、夫婦間の話し合いで済むうちは、特に財産分与に対して期限2年という制限はありませんが、家庭裁判所に申し立てする可能性を考慮すると、離婚後早めに請求しておくのが望ましいです。ただし、離婚前には家庭裁判所への申し立てができないためご注意ください。
 

基本的に夫名義の家も財産分与に含まれる

財産分与は名義に関係なく、婚姻生活中に築いた財産であれば基本的にすべてが財産分与の対象になります。
 
夫の名義の家も財産分与の対象となり、「俺の家だから出ていけ!」という主張は認められず、財産分与の対象になる可能性が高いでしょう。
 
財産分与は、当事者同士ではまとまらないこともあります。そのうえ、家庭裁判所への申し立ては2年という時間的制限が存在しています。財産分与がまとまらない、あるいはその可能性がありそうなときは、離婚後早めに家庭裁判所へ申し立てることをおすすめします。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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