更新日: 2023.06.17 子育て
月1万円の「児童手当拡充」でも増えるのは月に「4083円」!? 年収600万円の夫、専業主婦の妻と子ども1人のケースで検証
本記事では、児童手当と扶養控除について、年収600万円の場合、児童手当の拡充と扶養控除廃止でどの程度影響が出るのかを解説します。
執筆者:齋藤彩(さいとう あや)
CFP
児童手当の拡充
児童手当は、中学校を卒業するまでの子どもを養育している場合に支給されています。
支給金額は図表1の通りです。
【図表1】
内閣府 児童手当制度のご案内より筆者作成
※所得制限限度額以上、所得上限限度額未満の場合は、特定給付として一律5000円を支給
この現行の児童手当を図表2のように拡充することが検討されています。
・所得制限を撤廃し、支給期間を高校卒業まで延長する。
・第3子以降の支給金額は3万円とする。
【図表2】
内閣官房 「こども未来戦略方針」案~次元の異なる少子化対策の実現のための「こども未来戦略」の策定に向けて~より筆者作成
また、高校生などを扶養する親などの所得税を軽減する扶養控除について、扶養控除の対象外である中学生までの取り扱いとのバランスを踏まえ、どのように考えるかを整理するとしています。
扶養控除が廃止になる!?
前述のように、児童手当の拡充だけでなく、扶養控除の見直しも一緒に検討される可能性があります。
所得税や住民税は、給与収入から控除分を差し引いた「課税所得」の金額によって決まります。扶養控除は、16歳~18歳までの子どもを扶養している場合、子ども1人当たり38万円(住民税では33万円)を課税所得から控除できます。課税所得を少なくすることで、所得税・住民税の金額を軽減できます。
そのため、扶養控除が廃止されると課税所得の増加に伴い所得税・住民税も増えることになるのです。
支給される児童手当が増えても、扶養控除の廃止によって所得税・住民税が増えると、トータルで考えると増税になる世帯が出る可能性があります。
扶養控除廃止による家計への影響は?
高校生の子どもに対して年12万円の児童手当が支給される一方で、扶養控除が廃止になると、家計にどの程度影響があるのかを、年収600万円の夫と高校生の子どもが1人の場合で見てみましょう。
※控除は給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除、配偶者控除のみ考慮
※住民税は一律「課税所得×10%」とする
例えば、所得税率が10%(課税所得が195万円~329万9000円)の場合、扶養控除がなくなり課税所得が38万円増えると、所得税が3万8000円(38万円×10%)、住民税が3万3000円(33万円×10%)、合計7万1000円増えることになります。
つまり、児童手当で年間12万円支給されたとしても、所得税・住民税の負担が増すため実質4万9000円の収入増となります。
年収600万円だと所得税率が10%である人が多いため、夫の年収が600万円(妻は専業主婦あるいは収入600万円未満)で、高校生の子どもが1人いる場合だと年間で4万9000円、1ヶ月あたり4083円の収入増ということになります。
※小数点以下を切り捨てて計算
※その他の控除の有無によって異なる可能性あり
所得税率が20%(課税所得が330万~694万9000円)の場合、扶養控除がなくなると所得税・住民税の合計が10万9000円となります。児童手当が拡充されても、年間で実質1万1000円の増加にすぎません。
所得税率が23%(課税所得が695万円~899万9000円)の場合、年間で400円のマイナスになり、それ以上の収入だとマイナスの方が大きくなってしまいます。
まとめ
児童手当の拡充は子育て世帯にとってはうれしいことですが、扶養控除廃止により所得税・住民税が増えるのであれば大きな支援とはいえません。
年収600万円の場合、1ヶ月あたり4083円の収入増にはなりますが、果たしてそれで子どもを産みたいと思える人はどのくらいいるのでしょうか。収入によってはマイナスになる世帯も出てきます。日本で子どもを産んで育てたいと思えるような支援を祈るばかりです。
出典
内閣府 児童手当制度のご案内
内閣官房 「こども未来戦略方針」案~次元の異なる少子化対策の実現のための「こども未来戦略」の策定に向けて~
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1410 給与所得控除
執筆者:齋藤彩
AFP