更新日: 2023.07.05 その他暮らし

2024年秋に「健康保険証が廃止されマイナンバーカードと一体化する」は本当?

執筆者 : 辻章嗣

2024年秋に「健康保険証が廃止されマイナンバーカードと一体化する」は本当?
政府は、2024年秋にも紙の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化することを公表しています(※1)。
 
今回は、マイナンバーカードを健康保険証として利用(以下「マイナ保険証」といいます)する制度改革の、進捗状況について解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

マイナ保険証の導入スケジュール

マイナンバー制度は、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現するための社会基盤として導入されました(※2)。2015年10月からマイナンバーの通知が、2016年1月からはマイナンバーカードの交付が開始されました(※2)。
 
マイナ保険証は2021年10月から利用が開始され、2023年4月からは全医療機関などで利用が義務化されました。2024年秋からは紙の健康保険証が廃止され、マイナ保険証に切り替わる予定です。

2015年 10月 マイナンバーの通知開始
2016年 1月 マイナンバーカードの交付開始
2021年 10月 マイナ保険証利用開始
2023年 4月 医療機関などマイナ保険証義務化
2024年 秋 紙の健康保険証廃止、マイナ保険証に切り替え

 

マイナ保険証のメリット

マイナ保険証を利用することで、過去に処方された薬や健康診断の情報などを医療機関などが確認できるようになるとともに、オンライン窓口「マイナポータル」で、確定申告などの行政手続きを簡素化することができます(※3)。

1.マイナ保険証を利用したときのメリット

(1)顔認証付きカードリーダーを利用することで、医療機関における受付が自動化されます。
(2)過去に処方された薬や特定健診などの情報を、医師や薬剤師に、正確に伝えることができます。
(3)高額療養費制度における限度額適用認定証がなくても、限度額を超える支払いが免除されます。
(4)定期的な被保険者証の更新が不要となり、健康保険証としてずっと使えます。

2.保険証との一体化に伴い、マイナポータルでできるようになること

(1)過去に処方された薬や特定健診の情報を、一覧で閲覧できるようになります。
(2)医療費通知情報の管理が可能になり、e-Taxに情報連携することができるようになります。そのため、確定申告の手続きが簡素化されます。

 

マイナンバーカードの申請状況

政府は全国民がマイナンバーカードを保有することを目指して、マイナポイントの付与など普及活動を進めてきましたが、2023年6月18日現在の申請状況は人口の約77.2%に留まっており、普及は進んでいません(※2)。
 

医療機関などにおけるマイナ保険証の準備状況

健康保険の対象となる病院や薬局などの医療機関では、2023年4月から、マイナ保険証のカードリーダーの導入とシステムの運用が義務付けられていますが、2023年4月9日の時点でカードリーダーを申し込んでいる機関は全体で91.6%、システムの運用を開始している機関は76.3%に留まっています(※4、5)。
 
【図表1】

機関区分 カードリーダー申込機関の割合 システム運用開始機関の割合
病院 98.5% 87.4%
医科診療所 91.0% 71.1%
歯科診療所 88.4% 68.8%
薬局 95.3% 90.8%
全施設 91.6% 76.3%

(厚生労働省「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について(2023年6月11日時点)」を基に筆者作成)
 
なお、マイナ保険証が利用できる医療機関は、厚生労働省のホームページ「マイナンバーカードの健康保険証利用対応の医療機関・薬局についてのお知らせ」(※6)から確認することができます。
 

まとめ

マイナ保険証は、医療機関における受付が自動化されるなど利点が多々ありますが、マイナンバーカードの普及と医療機関のマイナ保険証対応が遅れており、2024年秋の全面移行は難しいように思われます。
 

出典

(※1)デジタル庁 河野大臣記者会見(令和4年10月13日)
(※2)総務省 マイナンバー制度
(※3)厚生労働省 マイナンバーカードの健康保険証利用について
(※4)厚生労働省 オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)
(※5)厚生労働省 オンライン資格確認の都道府県別導入状況について(2023年6月11日時点)
(※6)厚生労働省 マイナンバーカードの健康保険証利用対応の医療機関・薬局についてのお知らせ
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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