「敷金」をぼったくられてない? 賃貸退去時に本当は「支払わなくてよいお金」とは?
配信日: 2023.07.20
相手の言い値をそのまま支払ってしまっては、損をしているかもしれません。本記事では、本当は支払わなくてよいかもしれない賃貸物件の退去費用について解説します。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
賃貸物件の退去費用には何がある?
賃貸物件を退去する際にかかる費用は大きく分けて、「ハウスクリーニング費用」と「原状回復費用」の2つがあります。
ハウスクリーニング費用とは、文字通り部屋の大掃除をするためにかかるお金のことで、クリーニングは次の入居者の募集を始める前に部屋の汚れをリセットするために行われます。当たり前に借主が負担すべき費用だと思われがちですが、実は原則は貸主(大家)負担です。
ただし、入居時に交わした契約において、「退去時に借主負担でクリーニングを行う旨」を約束している場合には借主負担となります。賃貸借契約書を確認しておきましょう。
原状回復費用とは、借主の過失や故意による部屋の損傷を直すためにかかるお金のことです。
国土交通省は原状回復の定義を「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」において、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」としており、復旧するための費用は借主が負担しなければならないことが明記されています。
ここでポイントになるのが、「原状回復は借主が借りた状態に戻すことではない」ということです。本記事のテーマである「本当は支払わなくてよい退去費用」とは、原状回復以外の退去費用を請求された場合が該当します。
支払わなくてよい退去費用の例
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には、借主が支払わなくてよい退去費用の例が記載されています。抜粋して紹介します。
・日照や建物の欠陥による雨漏りなどで発生した畳やフローリングの色落ち
・家具の設置による床のへこみ、設置跡
・フローリングのワックスがけ
・テレビや冷蔵庫などの後部壁面の電気ヤケ
・壁に貼ったポスターなどの押しピン跡
・日照などの自然現象によるクロスの変色
・網戸の張り替え
・自然災害で破損したガラス
・エアコンの内部洗浄
・鍵の取り替え(破損・紛失のない場合)
・寿命による設備の故障
これらのような、借主のせいで発生したわけではない劣化に対する復旧費用が退去費用として請求された場合には、不動産業者へ異議を申し立ててみましょう。
支払わなければならない退去費用の例
反対に原状回復費用に該当するため、支払う義務がある退去費用の例についても紹介します。
・飲み物をこぼして拭かなかったことによるシミ、カビ
・引っ越し作業でのひっかき傷
・落書き
・結露を放置したことによって拡大したシミ、カビ
・タバコのヤニ、臭い
・下地ボードの張り替えが必要なほどにあけられた釘穴、ネジ穴
・ペットによる傷、臭い
・落書き
・手入れを怠ったことによる水場の水垢、カビ
・不適切な使用による設備の毀損
・鍵の紛失や破損による取り替え
ただ、借主の責任だと言われても納得いかない場合には、不動産業者に説明を求めましょう。場合によっては、原状回復外としてもらえる可能性はあります。
まとめ
賃貸物件の退去費用の負担は借主の義務ですが、原状回復費用以外のものまで負担する必要はありません。
敷金を支払って入居している場合の退去費用は敷金から差し引かれるため、退去時に費用請求がないこともありますが、だからといって「ま、いっか」で済ませると損をするかもしれません。
クレーマー化しないように気を付けつつ、おかしいなと思った項目については遠慮なく質問しましょう。
出典
国土交通省住宅局 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士