更新日: 2023.07.25 子育て

扶養控除が廃止になると、高校生等や大学生等への修学支援に大きな影響がでる?

扶養控除が廃止になると、高校生等や大学生等への修学支援に大きな影響がでる?
厚生労働省「こども未来戦略方針」によると、中学生までの児童手当の支給期間を高校生まで拡充することを盛り込みました。一方、財源確保のため16~18歳の子どもがいる親の税負担を軽くする扶養控除の見直しも検討されているようです。
 
仮に、扶養控除が縮小・廃止されれば課税対象額が増え、高校生等や大学生等への修学支援の所得要件に大きな影響を及ぼします。この機会に所得要件について確認し早めに対策を講じましょう。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

修学支援の所得要件

高校生等や大学生等の修学支援の所得要件は、一般に、申し込み前年の収入に基づく住民税情報により算出された「課税標準額」等で判定します。
 
なお、「課税標準額」等は一般の方にはなじみのない用語ですので、文部科学省のパンフレットなどではモデル世帯の年収の目安で示されています。
 
たとえば、高等学校等就学支援金の所得要件は、次のように示されています。
 
「国公私立問わず、高等学校等に通う所得等要件を満たす世帯(※年収約910万円未満の世帯)の生徒に対して、 授業料に充てるため、国において高等学校等就学支援金を支給します。※両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人(16歳以上)、中学生1人の子どもがいる世帯をいいます」などです。
 
では、実際の所得要件の判定基準(計算式)を見てみましょう。高校生等の修学支援には、大きく、(1)高等学校等就学支援金と(2)高校生等奨学給付金があります。
 

(1) 高等学校等就学支援金

授業料に充てるための就学支援金を支給するものです。所得要件は次の計算式(両親の合計額)のとおりです。
 
【国公立・私立】
保護者等の課税標準額(課税所得額)×6%-市町村民税の調整控除額<30万4200円
 
【私立】
保護者等の課税標準額(課税所得額)×6%-市町村民税の調整控除額<15万4500円
 

(2) 高校生等奨学給付金

授業料以外の教育費を支援するものです。授業料以外の教育費とは、教科書費、教材費、学用品費、通学用品費、教科外活動費、生徒会費、PTA会費、入学学用品費、修学旅行費、通信費等になります。
 
所得要件は、生活保護受給世帯であること、または保護者全員の住民税所得割が非課税(0円)世帯であること、となっています。
 
次に、日本学生支援機構の奨学金の家計基準(所得要件)について見てみましょう。
 
日本学生支援機構の奨学金には、要返還の貸与奨学金と返還不要の給付奨学金があります。それぞれの判定基準(計算式)は次のとおりです。
 

・貸与奨学金(予約採用)

貸与額算定基準額 =(課税標準額)×6% -(市町村民税調整控除額) -(多子控除)-(ひとり親控除)-(私立自宅外控除)
 
第一種・第二種併用貸与:生計維持者の貸与額算定基準額が16万4600円以下であること
第一種奨学金:生計維持者の貸与額算定基準額が18万9400円以下であること
第二種奨学金:生計維持者の貸与額算定基準額が38万1500円以下であること

・給付奨学金

支給額算定基準額 = 課税標準額 ×6% -(市町村民税調整控除額+市町村民税調整額)(100円未満切り捨て)
 
第I区分:あなたと生計維持者の支給額算定基準額の合計が100円未満であること
第II区分:あなたと生計維持者の支給額算定基準額の合計が100円以上2万5600円未満であること
第III区分:あなたと生計維持者の支給額算定基準額の合計が2万5600円以上5万1300円未満であること

 

所得要件のメインは「課税標準額×6%」

これらの算式の中核は住民税の「課税標準額×6%」であることがお分かりだと思います。
 
課税標準額は以下のように求めます。
 
収入-必要経費(給与所得控除額など)=所得
 
所得-所得控除=課税標準額(課税所得)
 
つまり、所得控除が多ければ課税標準額が少なくなり、所得控除が少なくなれば課税標準額が多くなるという関係にあります。
 
住民税の所得控除には、基礎控除、扶養控除、配偶者控除、生命保険料控除、小規模企業掛金等控除、社会保険料控除など14種類あります。16歳~19歳未満の住民税の扶養控除は33万円ですので、仮にこの扶養控除が廃止されれば課税対象額が33万円増えることになります。
 

所得控除をしっかり申告することが大切

同じ収入、同じ家族構成でも、所得控除などが異なれば課税標準額が異なることがお分かりだと思います。
 
まずは、節税も兼ねて、しっかり所得控除を申告することが大切です。会社員の方は年末調整で所控除の申告ができますが、医療費控除、雑損控除のように確定申告をしないと控除できないものもあります。
 
仮に16歳~19歳未満の住民税の扶養控除が廃止された場合、修学支援に影響のでる方は、それを補うために、iDeCo(イデコ:掛金が全額所得控除)などを始めるのもひとつの方法です。
 
なお、市区町村役場で取得できる課税証明書(自治体によっては所得証明書)やマイナポータルで、ご自身の所得控除の額や、課税標準額、市町村民税調整控除額などの情報が入手可能です。確認してみましょう。
 

出典

厚生労働省 「こども未来戦略方針」 〜次元の異なる少子化対策の実現のための「こども未来戦略」の策定に向けて〜
文部科学省 高校生等への修学支援/高等学校等就学支援金制度
文部科学省 高校生等への修学支援/高校生等奨学給付金
日本学生支援機構 ホームページ
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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