会社に行くのがつらい…もしかしてうつ病? そんな場合どんな補償が受けられる?
配信日: 2023.07.27
仕事に支障をきたした場合に、休職や退職を余儀なくされる人もいます。その場合に、医療や生活を維持するための経済的支援には、どんな制度があるのかについて説明します。
うつ病とは
精神を病む精神障害(精神疾患)の主なものには、「統合失調症」・「気分障害」・「てんかん」・「依存症」・「高次脳機能障害」などがあります。
よく聞かれる「うつ病」とは、このうちの気分障害にあたり、主に気分の波が表れる病気です。うつ状態のみを認めるときはうつ病と言い、うつ状態とそう状態を繰り返す場合は双極性障害(躁うつ病)と言います。(※1)
うつ病の患者はどのくらいいるの
うつ病・躁うつ病(気分障害)の患者数は、約128万人(2017年)となっており、増加傾向にあります。年代別に見てみると、40代が約21%・50代が約19%と全体の40%を占め、働き盛りの人に多い傾向があります。(※2)
そして、うつ病の治療の4本柱は「休養」・「環境調整」・「薬物治療」・「精神療法」です。
うつ病で働けなくなった場合の経済的支援は
うつ病で働けなくなった場合、医療費や生活費をどうするかが問題となります。そんなときに、主にどんな経済的支援策があるのか見ていきます。
受けることができる経済的支援には、主に次のようなものがあります。
・傷病手当金
病気やけがで会社を休み、事業主から十分な報酬がもらえない場合に受けられます。なお、給与が一部支給されている場合、その部分の傷病手当金は減額されます。
「全国健康保険協会(協会けんぽの場合)」から支給される手当で、継続した12ヶ月間の各月の平均報酬月額を平均した金額÷30日×2/3の金額が1日の支給額となります。支給される期間は最長1年6ヶ月です(※3)。
組合健保・共済組合も同様の内容です。ただし「以下の4つの条件」、
(1)業務外の事由による病気やケガの療養のための休業
(2)仕事に就くことができないこと
(3)連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
(4)休業した期間の給与の支払いがないこと
を満たす必要があります。
・自立支援医療制度(精神通院医療)
心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担を軽減する公費負担の医療制度のことです(※4)。
対象者は、精神疾患を有する人で、通院による精神医療を継続的に必要とする人です。交付された受給者証の有効期限は1年間です。
「条件」は、精神疾患のため、長期にわたり日常生活や社会生活に制約がある人です。
・労災保険
「労働者災害補償保険制度」と言い、業務上・通勤上の災害により被害にあった労働者や、死亡した場合はその遺族に支払われる給付金です(※5)。
「条件」は、業務中または通勤途中の事故によりケガ・病気・障害または死亡した人であることです。
・障害年金
病気やケガで日常生活や仕事に支障がある場合に支給される年金です(※6)。
ただし「以下の3つの条件」、
(1)20歳から64歳であること
(2)初診日より以前に年金保険料を一定期間納付していること
(3)初診日から1年6ヶ月経過した日、国が定める障害認定基準に該当していること
を満たす必要があります。
その他に、生活保護や雇用保険などの対象になる場合もあります。
また、「精神障害者保健福祉手帳」というものを取得できる場合があります。一定程度の精神障害にある人を1級から3級に認定し、その人の自立と社会参加を促進するために、手帳を持っている人にはさまざまな支援策が講じられます。具体的には公共料金の割引、所得税・住民税の控除や生活福祉資金の貸し付けなどがあります。
「条件」は、何らかの精神障害により、長期にわたり日常生活や社会生活に制約のある人です。
まとめ
うつ病を患ったら、まずは専門医・家族・会社などと相談し、現状を把握、それから、会社の窓口(人事部など)や、公共の市区町村の窓口で経済的支援に必要な手続きをとることになります。
一番大切なことは、周囲の理解です。休養を十分とり、環境を整えることが大切になると思います。
出典
(※1)厚生労働省 精神障害(精神疾患)の特性(代表例)
(※2)厚生労働省 平成30年版 厚生労働白書 図表1-2-9 こころの病気の患者数の状況
(※3)全国健康保険協会 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
(※4)厚生労働省 自立支援医療制度の概要
(※5)厚生労働省 労災補償
(※6)日本年金機構 障害年金
執筆者:小久保輝司
幸プランナー 代表