大阪市で受けられる「こどもの医療費助成」とは? 助成の内容や所得制限について解説
配信日: 2023.07.28
今回は、大阪市が実施している「こどもの医療費助成」について解説し、同様の施策を推進している地方自治体の状況を紹介します。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
大阪市の「こどもの医療費助成」とは
大阪市が実施している「こどもの医療費助成」とは、大阪市に居住する子どもが病院や診療所などで診療を受けた場合、保険診療が適用された医療費および訪問看護利用料の自己負担の一部を助成する制度です。
助成を受けることのできる人
この助成を受けられるのは、国民健康保険や被用者保険に加入している大阪市内に居住する0歳から18歳(18歳に達した日以後における最初の3月31日)までの子どもです。
なお、0歳から12歳(小学校修了)までの子どもには所得制限はありませんが、12歳(中学校就学)から18歳(18歳に達した日以後における最初の3月31日)までの子どもの父または母など(どちらか所得の高い方)の所得に図表1の所得制限があり、保護者の所得がこの制限以上になる場合は助成を受けられません。
図表1
所得制限額 | 扶養人数 | 所得制限額 | 収入額(目安額) |
---|---|---|
0人 | 622万円未満 | 833万3000円 |
1人 | 660万円未満 | 875万6000円 |
2人 | 698万円未満 | 917万8000円 |
3人 | 736万円未満 | 960万円 |
4人以上の場合 | 扶養人数3人の場合の所得制限額に、1人につき38万円ずつ加算した額 |
大阪市 こどもの医療費を助成します基に筆者作成
※この表では、社会保険料および生命保険料控除相当額として、所得から一律に控除される8万円を加算していません。
※同一生計配偶者(70歳以上の者に限る)または老人扶養親族が扶養人数に含まれる場合は、1人につき6万円を所得制限額に加算してください。
なお、2024年4月からは、所得制限が撤廃される予定です。
ただし、以下の人はこの助成を受けられません。
(1)生活保護を受けている人
(2)児童福祉施設等に措置入所されている人
(3)その他国等の公費負担によって、医療費の全額支給を受けることができる人
(4)重度障害者医療費助成制度により医療証の交付を受けている方で医療費の助成を受けることができる人
(5)ひとり親家庭医療費助成制度により医療証の交付を受けている方で医療費の助成を受けることができる人
助成の内容
(1)保護者が負担する一部自己負担額
保護者は、1医療機関ごとに1日あたり最大500円の一部自己負担額を支払うことにより、それ以上の医療費や訪問看護利用料が大阪市から助成されます。
なお、複数の医療機関に掛かる場合は医療機関ごとに、また、同一医療機関であっても「入院」と「通院」、「歯科」と「歯科以外」では、それぞれ1日最大500円(1日の負担が500円未満の場合はその額)の一部自己負担額を支払うことになります。
ただし、一部自己負担額は、同一の医療機関では同一の月の3回目以降は免除され月額最大1000円、複数の医療機関などを利用した場合でも月額最大2500円が上限となります。
なお、院外処方箋で薬局を利用した場合の薬代は全額助成(保険の対象とならない費用を除く)されますが、入院時の差額ベッド代など保険給付以外の費用や入院時の食事療養にかかる自己負担は助成の対象とはなりません。
(2)医療費の払い戻し
以下の場合は、「大阪市医療助成費等償還事務センター」に必要書類を送付すると、支払った医療費の自己負担額相当から一部自己負担額を控除した額の払い戻しを受けられます。
・大阪府外の医療機関などを受診したとき
・「こども医療証」の申請中で、「こども医療証」が使えなかったとき
・急病や旅行先などで、やむを得ず「こども医療証」を使わずに受診したとき
・医師の同意を得て、はり・きゅう師、マッサージ師、柔道整復師の施術を受けて、費用の全部または一部を支払ったとき
・治療上必要と認められた補装具、小児弱視の治療用眼鏡などの費用を支払ったとき
・同一診療月に支払った一部自己負担額の合計が、2500円の限度額を超えたとき
なお、払い戻しの申請は、医療機関で支払った翌日から5年以内に行う必要があります。
申請方法
「こども医療証」の申請は、居住地域の保健福祉センター医療助成業務担当窓口に健康保険証(対象となる子どもの名前が入ったもの。マイナンバーカード不可)と申請者の本人確認書類を持参して行います。
なお、郵送による申請も受け付けており、出生時はオンラインで申請することもできます。
同様の子ども医療費助成のある市町村
厚生労働省の調査によると、2021年4月1日現在で、下表のとおり、全国1741の市区町村が子どもに対する医療費の助成を行っています。
図表2
市区町村における助成の実施状況 | ||
---|---|---|
対象年齢 | 通院 | 入院 |
就学前 | 40 | 3 |
9歳年度末 | 11 | 0 |
12歳年度末 | 36 | 28 |
15歳年度末 | 832 | 810 |
18歳年度末 | 817 | 892 |
20歳年度末 | 3 | 3 |
22歳年度末 | 2 | 2 |
24歳年度末 | 0 | 3 |
実施市区町村数の合計数 | 1741 | 1741 |
厚生労働省 乳幼児等医療費に対する援助の実施状況(令和3年4月1日現在)を基に筆者作成
居住地の市区町村の実施状況は、市区町村役場に問い合わせるか「市区町村における乳幼児等医療費援助の実施状況」で確認できます。
まとめ
大阪市は、18歳(18歳に達した日以後における最初の3月31日)までの子どもの医療費を助成しており、1回あたり最大500円の一部自己負担額を支払うことにより診療を受けられます。同様の子どもに対する医療費の助成制度は、全国の市区町村で採用されているので、住居地の助成金制度をこの機会に確認してみましょう。
出典
首相官邸 こども・子育て政策の目指す社会像と基本理念とは ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~
大阪市 こどもの医療費を助成します
大阪市 こども医療費助成制度の所得制限撤廃(令和6年4月から)に向けて準備中です
厚生労働省 令和2年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について
厚生労働省 乳幼児等医療費に対する援助の実施状況(令和3年4月1日現在)
厚生労働省 市区町村における乳幼児等医療費援助の実施状況
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士