更新日: 2023.08.02 その他暮らし
「優先エレベーター」なのに必要な人が乗れない!? ベビーカーと待ち続けた20分間と、考えられる「解決策」について
本記事では、筆者の体験と経済的観点から、ベビーカーが優先されるべき理由を解説します。
執筆者:守屋鮎美(もりや あゆみ)
2級ファイナンシャルプランナー
優先エレベーターに対象者が乗れない
最近のデパートやビルには、優先エレベーターが1つは用意されていることが多いです。優先エレベーターにおける優先利用の対象者は、車いすとベビーカー、高齢者、妊婦、障がいのある人、けがをしている人、内部障がいのある人などと、国土交通省のガイドラインに示されています。中でもよく話題にあげられているのが、ベビーカーと車いすです。
なぜ、これらの利用者が優先対象なのでしょうか。答えは、ベビーカーや車いすの利用者がビルやデパートなどにおいて階をまたいだ移動をする際、エレベーターしか移動手段が存在しないからです。商業施設などの高い建物内ではエレベーターと同じくエスカレーターも必ず設置されていますが、エスカレーターが利用できない車いすやベビーカーの利用者はエレベーターに乗れないことが死活問題です。
しかし、最近その優先エレベーターにこれらの利用者が乗れない事象が多発しています。以前もSNSで、優先エレベーターになかなか乗れなかったベビーカーの女性が勇気を出して優先エレベーターに乗っていた人に「譲ってもらえませんか」と声をかけたところ、心ない言葉とともに拒否されたという投稿が話題になっていました。
エレベーターホールで待ち続けた20分間
筆者も3歳と0歳の子どもがいて、ベビーカーで出掛けたときに優先エレベーターに乗れない経験をしたことがあります。渋谷のスクランブルスクエアに、当時0歳の子どもをベビーカーで連れて出掛けたときのことです。
スクランブルスクエアは超高層ビルで、優先ではなくベビーカーと車いす専用のエレベーターも設置してあります。しかし、目的のフロアで買い物をした後、地上に戻ろうと専用エレベーター前で待っていても、どのエレベーターも満員。何度も見送り、なんと20分間もエレベーターホールで待ち続けました。その間に子どもが泣き出しても、ミルクをあげるために別の階にある授乳室へ移動もできません。
もちろん外見だけでは判断できませんが、見送ったエレベーターにはエスカレーターでも移動できそうな人が多く乗っていました。20分たったころ、勇気を出して「このエレベーターは専用エレベーターなので、エスカレーターで移動できそうな方は譲っていただけませんか?」とエレベーターに乗っている人たちに声をかけました。私の場合はそのとき、幸いにもあるご夫婦に譲っていただけました。
優先エレベーターに乗れない問題の解決策は?
専用エレベーターに20分間乗れなかった経験から、「なぜ譲ってもらえないのだろうか?」と考えました。そこで気づいたのが、私が当時乗ったエレベーターの外側には「優先エレベーター」や「専用エレベーター」の表示があるのに、エレベーターの中にはその表示がないということです。
エレベーターに乗る際に優先エレベーターであることに気づけなかったら、エレベーターに乗った後に途中の階で扉が開いて目の前でベビーカーや車いすの人が待っていても、満員だし中に優先表示も見当たらなければ自分が譲るほどではないと考える人もいるのではないでしょうか。
私が当時乗ったエレベーターは「専用」でしたが、外側の表示も少し分かりづらく、気づかずに乗ってしまう人も多かったと思います。優先エレベーターも、もちろん、みなさん事情があるので、優先対象者以外は乗ってはいけないというものではありません。しかし、できるだけ必要な人に譲りやすい仕組み作りが必要だと思いました。
そこでエレベーターから降りた後、インフォメーションセンターに向かい、専用エレベーターに20分間乗れなかったことを伝え、エレベーター内に「これは専用エレベーターです」と張り紙をするのはどうかと提案をしました。
すると、なんと3日後には外側に立て看板が置かれ、内側にも張り紙がされていました。すぐに提案を実施してくださった対応の早さに大変感動しました。
子育て支援と日本経済
エレベーターしか移動手段がないことを優先理由としてあげましたが、それだけでなく、経済的にもベビーカーの優先を勧める理由があります。それは日本の少子化です。少子化が経済にどう影響を与えるのでしょうか。
経済に大きな影響を与えるものとしてあげられるのが人口です。日本での1人あたりの平均生涯賃金は約2.5億円と言われています。人口が増え続ければ、その分需要も供給も増え続け、経済は右肩上がりです。日本経済も世界経済もこれまでは人口が増え続けていたので、経済は発展し続けていました。
しかし、近年の日本はすでに人口減少の局面に入っています。このままでは、年金制度を支える現役労働世代もどんどん少なくなり、いつしか日本経済が破綻してしまう可能性さえあるでしょう。社会福祉制度も、基本的にこれからも日本の人口がそれなりに維持されることを前提に作られています。つまり、日本が国として維持されていくために子どもがいることは大前提なのです。
さらに、少子化が進むことによる経済的ダメージ回避だけでなく、単純に子どもがいる世帯からは継続的に消費が生まれるので、顧客として囲い込むべき側面もあります。子どもの成長にともなって、さまざまな消費活動が付属してくるので、長く消費をしてくれる顧客になります。顧客獲得の面からも、商業施設などでは子育て世帯を優遇するメリットがあるのでしょう。
何より、子育て世帯だけでなく、高齢者、けがや障がいのある人など、多くの人が暮らしやすく、力を発揮しやすい社会を作ることで、消費も生産もしやすくなり、経済はより活発になるでしょう。これからの日本が子育てしやすく、多くの人が暮らしやすい社会となって、日本の経済も明るくなるといいですね。
出典
国土交通省 優先エレベーター
内閣府 選択する未来 Q11 人口急減・超高齢化は経済成長にどのように影響しますか
総務省統計局 人口推計(令和5年(2023年)2月確定値、令和5年(2023年)7月概算値)(2023年7月20日公表)
執筆者:守屋鮎美
2級ファイナンシャルプランナー