更新日: 2023.08.01 その他暮らし

マンション購入の際の選択ポイント「長期優良住宅認定制度」そのメリットは?

マンション購入の際の選択ポイント「長期優良住宅認定制度」そのメリットは?
住宅の物件探しをしていると「長期優良住宅」という言葉を目にすることがあります。昨今の大規模災害へのリスクに対する意識の高まりから、長期間、安心して快適に住める住宅に、関心が寄せられています。ここでは、国が定める「長期優良住宅認定制度」について、その概要やメリットを確認したいと思います。
高橋庸夫

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

長期優良住宅の概要と認定実績

長期優良住宅とは、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、長期にわたり、良好な状態で住み続けるための措置が講じられた、性能の高い住宅として、一定の基準によって国が認定したものを指します。
 
該当のマンションが、この「長期優良住宅認定制度」の認定を受けているかを調べる場合は、まず、不動産情報サイトなど、物件情報に「長期優良住宅」や「長期優良住宅認定通知書」の記載があるか、チェックしてみることをお勧めします。また認定の申請先には、建物所在地ごとに所管行政庁を定めているため、所管行政庁ごとに認定物件の一覧を公表している場合もあります。
 
「長期優良住宅」の認定実績は、国土交通省の公表によると図表1のとおりです。新設住宅の着工戸数に対する割合では、令和3年の一戸建ての住宅で27.7%、共同住宅等(マンション)では、わずか0.7%と、まだ少数であるといえます。特に新築の分譲マンションは人気が高く、購入できるかは、狭き門となる場合もあるようです。
 
【図表1】

令和元年度 令和2年度 令和3年度 累計※
認定実績
(新設住宅着工戸数に対する割合)
一戸建ての住宅 107389戸
(24.9%)
100503戸
(25.5%)
118289戸
(27.7%)
1330333戸
共同住宅等 1047戸
(0.2%)
889戸
(0.2%)
3213戸
(0.7%)
25986戸
総戸数 108436戸
(12.3%)
101392戸
(12.5%)
121502戸
(14.0%)
1356319戸

国土交通省 長期優良住宅の認定状況について(令和4年3月末時点)
※平成21年6月~令和4年3月の累計
 

長期優良住宅に認定基準(分譲マンションの新築基準)

認定基準は、一戸建ての新築、既存、分譲マンションなど、それぞれに基準が定められており、さらに、「所管行政庁」の基準がある場合もあります。ここでは、分譲マンションの新築基準における「10項目の概略」を確認したいと思います。詳細な基準については別途、確認が必要です。
 
(1)劣化対策
建物が長持ちするよう、材料の劣化を軽減する対策がとられている。
 
(2)耐震性
大地震でも一定の補修をすることで使い続けられるよう、建物の損傷・変形を抑制する対策がとられている。
 
(3)省エネルギー性
 「ZEH水準」の高い断熱性や、エネルギー消費量を低減する対策がとられている。
 
(4)可変性
 間取りの変更がしやすいよう、躯体天井高2650ミリメートル以上を確保している。
 
(5)維持管理・更新の容易性
 日常の点検・清掃・補修などの維持管理を容易にする対策がとられている。
 
(6)バリアフリー性
 高齢者等が居住する場合に備え、共用部分などがバリアフリー化されている。
 
(7)住戸面積
 長期にわたって良好な居住水準であるよう、床面積が40平方メートル以上となっている。
 
(8)維持保全計画
 計画的な点検、必要に応じた補修がなされるよう、必要な維持保全計画が定められている。
 
(9)居住環境
 景観など、地域の「まちづくり」のルールに沿っている。
 
(10)災害配慮
 災害リスクの高い地域でないこと、被害を軽減する対策がとられていること。
 

長期優良住宅の主なメリット

こうした認定を受けた住宅は、さまざまなメリットがあります。詳しい情報については、所管行政庁ごとの情報を確認してください。その主なものは以下のとおりです。
 

(1)住宅ローンの金利引き下げメニュー(2024年3月31日までの申込み受付け分に適用)

【フラット35】S(ZEH)の借入金利が、当初5年間は年0.5%引き下げ、6年目から10年目は年0.25%引き下げ
【フラット35】S(金利Aプラン)が当初10年間は年0.25%引き下げ
【フラット35】S(金利Bプラン)が当初5年間は年0.25%引き下げ
 

(2)税の特例措置

2023年12月31日までに入居した場合、住宅ローン控除の対象限度額が5000万円となる。
2024年3月31日までに新築された住宅を対象として、登録免許税、不動産取得税、固定資産税の特例措置がある。
 

(3)認定住宅等新築等特別税額控除

一定の要件で、認定長期優良住宅等の認定基準に適合するために必要となる、標準的な費用の10パーセントに相当する金額を税額控除できる。
 

(4)地震保険料の割引

「耐震等級2」の場合は30%、「耐震等級3」の場合は50%、免震建築物の場合は50%の割引
 

(5)容積率の緩和

敷地面積が一定規模以上の場合、特定行政庁の許可により容積率制限が緩和される。
 

まとめ

所得税の住宅ローン控除は、新築住宅への入居が2023年までであれば、一般住宅も対象となります。ただし、2024年以降は、長期優良住宅や、一定の省エネ性能を有する認定住宅等のみが対象となる予定です。
 
また近い将来、高い確率で発生する大規模な地震などの災害リスクを考えると、長期にわたり、安心して住み続けることができる住宅に注目が集まるのも当然のことです。そのひとつの指標として「長期優良住宅認定制度」があることを覚えておきましょう。
 

出典

国土交通省 長期優良住宅のページ
国土交通省 長期優良住宅の認定状況について(令和4年3月末時点)
国税庁 認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)
 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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