夫にへそくり「100万円」を使い込まれた! 配偶者なら「処罰できない」って本当? 請求はできないの?
配信日: 2023.08.22
しかし、相手が配偶者であったとしても、自分以外の人の財産を勝手に使う行為は「犯罪」になるのではないでしょうか。法律ではどう扱われるのかについて解説します。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
へそくりを勝手に使う行為は「窃盗罪」に該当
刑法第235条には「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」、刑法第252条には「自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する」と定められています。
夫婦であっても他人ですから、夫が妻のへそくりを勝手に使う行為は窃盗罪や横領罪に該当する可能性が高いといえます。では、妻が告訴すれば夫は罪に問われることになるのでしょうか。
親族については例外規定がある
実は、刑法第235条と252条には「親族間の犯罪に関する特例」として例外規定が設けられています。
刑法第244条「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する」
刑法第257条「配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する」
つまり窃盗罪や横領罪に該当するものの、犯人が夫であるなら刑は免除され、罰せられることはありません。
離婚となる場合は財産分与で上乗せ請求できる
罪に問われないからといって、配偶者のへそくりを勝手に使っても大丈夫なんて論外です。万一、配偶者が自分のへそくりを勝手に使い込んでいたことを知ったとき、あなたならどうしますか? 「家の中に泥棒がいる」、「もう何も信用できない」、「離婚だ」となる場合もあるでしょう。
離婚には財産分与の問題がつきものですが、基本的に結婚後に築いた財産は夫婦の共有財産に該当し、原則2分の1で分けます。どちらかが専業主婦(夫)であったとしても、2分の1という割合は簡単には動きません(夫婦間の合意によって割合を変更することは自由です)。
ただし、夫が妻のへそくりを使い込んでいた場合には、妻は財産分与の2分の1に使い込み分の金額を上乗せして請求することが可能です。例えば、離婚時点での夫婦共有財産が500万円、へそくりの使い込みが100万円あった場合には、妻は500万円×1/2+100万円=350万円を夫に請求できます。
請求はできるが確約ではない
へそくりの使い込み分を財産分与に上乗せして請求することはできますが、支払い命令ではない点に留意しなければなりません。夫が支払わない可能性もあります。話し合いで解決できない場合には、調停、裁判と進むことになります。
まとめ
夫婦であっても、相手のへそくりをこっそり使う行為は犯罪です。しかし、刑は免除されるので処罰されることはありません。
問題はそこではなく、夫婦の信頼関係が一瞬にして根こそぎなくなるところではないでしょうか。離婚に際しては、使い込み分の請求を受ける可能性があることを覚悟しておきましょう。
出典
e-Gov法令検索 刑法
法務省 財産分与
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士