更新日: 2023.08.27 その他暮らし
【標準報酬月額】4~6月の給与だけで決定? 7月以降に給与が下がったらどうなるの?
これを聞いて、「7月以降に給与が下がったらどうなるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃることでしょう。本記事では、標準報酬月額をテーマに、7月以降に給与が下がった場合、どうなるのかについて解説をします。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
標準報酬月額の決定の前提は報酬に大幅な変更がないこと
会社員の場合、毎月の給与から、社会保険料が差し引かれていることはご存じの方が多いでしょう。これは給与明細で確認することができますが、一般に、社会保険料として、「健康保険料」、「厚生年金保険料」、「介護保険料(40歳以上の方)」、「雇用保険料」が差し引かれます
これらの保険料(雇用保険料を除く)は、「標準報酬月額」に保険料率を乗じることによって算出されます。標準報酬月額は、いわば「平均月収」です。事業主は毎年7月上旬に、被保険者の3ヶ月間(4月、5月、6月)の報酬月額を記載した「算定基礎届」を、日本年金機構の事務センターなどに提出します。日本年金機構は、これを基に1年間(9月から翌年8月まで)の標準報酬月額を決定します。
この手続きを「定時決定」といいます。この定時決定が前提としているのは、報酬に大幅な変更がないということです。この前提があるので、1年間の標準報酬月額を、3ヶ月間の報酬月額により決定しているのです。
報酬に大幅な変更があったときには随時改定を行う
原則として、標準報酬月額の決定は、年1回だけです。しかし、被保険者の報酬が大幅に変わったときは、標準報酬月額を改定する必要があります。この手続きを「随時改定」といいます。
以下の条件を満たした場合、随時改定を行わなければなりません。
●昇給または降給などにより固定的賃金に変動があった
●変動月からの3ヶ月間に支給された報酬の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
●3ヶ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である
簡単にいえば、標準報酬月額が決定した後、報酬に大幅な変更があり、その標準報酬月額によって健康保険料や厚生年金保険料を算出することが不当になったときは、改めて標準報酬月額を決定する必要があるということです。
「大幅な変更」の具体的な基準として、「2等級以上の差」とされています。ここでいう「等級」とは標準報酬月額における区分のことであり、およそ2万円から4万円を超える報酬の変動があった場合は、「2等級以上の差」が生じる可能性があります。反対に、報酬に変動があったとしても、その差が1等級以内であれば、随時改定の対象とはなりません。
したがって、今回の設例である「7月以降に給与が下がった」場合、以下のようになります。
●標準報酬月額に2等級以上の差が生じれば、随時改定を行うことで標準報酬月額を改定する(社会保険料が変わる)
●標準報酬月額に2等級以上の差が生じなければ、特に変更はない(社会保険料は変わらない)
まとめ
標準報酬月額は、年に1回、7月に「算定基礎届」を提出することによって決定します。算定基礎届に記載するのは、4月、5月、6月の報酬月額であり、基本的にはこの3ヶ月間の報酬月額により、1年間の標準報酬月額が決定します。これを「定時決定」といいます。
しかし、報酬に大幅な変更が生じ、標準報酬月額と実際の報酬額が大きく乖離(かいり)することがあります。その場合は、随時改定を行い、標準報酬月額と実際の報酬額の乖離(かいり)を解消します。これに伴い、納付する社会保険料も変更します。
随時改定を行うには、一定の条件を満たす必要があります。ポイントとなるのは、標準報酬月額に「2等級以上の差が生じる」ということです。「等級」とは、標準報酬月額の区分のことを表します。この区分で2等級以上の差が生じていれば、随時改定を行います。しかし、2等級以上の差が生じていなければ、随時改定を行いません。
7月以降、報酬が下がったとしても、標準報酬月額に2等級以上の差が生じない場合は、標準報酬月額は変更されず、社会保険料も変更しません。これらの知識をもとに、自身の給与明細を確認してみましょう。
出典
全国健康保険協会 「標準報酬月額・標準賞与額とは?」
日本年金機構 「従業員の報酬月額の届出を行うときの手続き(算定基礎届・月額変更届等)」
日本年金機構 「定時決定(算定基礎届)」
日本年金機構 「随時改定(月額変更届)」
全国健康保険協会 「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー