更新日: 2023.08.28 その他暮らし

知っておいてソンはない (1) 【特定商取引法】

執筆者 : 林智慮

知っておいてソンはない (1) 【特定商取引法】
18歳成年、「美」と「お金」に関するトラブルが発生しています。脱毛エステ、送りつけ商法、出会い系サイト、副業の順に相談件数が多くなっています(国民生活センター 令和5年5月31日 報道発表資料 より)。
 
未成年者であれば、保護者の同意を得ずにした契約は「未成年者取消権」で取り消すことができますが、成人してからの契約は、一度締結されると一方的に取り消すことはできません。しかし、不当な勧誘による契約は取り消せる場合があります。
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

特定商取引法

特定商取引法は、消費者トラブルが多発した特定の取引(訪問販売・通信販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務提供誘引販売取引・訪問購入)を対象に、悪質な勧誘を防止し消費者の利益を守るものです。クーリング・オフ等の契約解除や取り消しを認め、事業者の法外な損害賠償請求を制限するなどのルールが定められています。
 
不意打ちを食らった勧誘により正常に考えられず契約してしまう取引は、後になって「しまった!」と思うもの。クーリング・オフとは、そのような取引に、冷静に考える一定期間が定められており、その期間内であれば無条件に解約ができるというものです。
 
契約の申し込みまたは締結後、法律で決められた書面を受け取ってから一定の期間内であれば、無条件で解約できます。訪問販売・電話勧誘販売・特定継続役務提供・訪問購入については、書面を受け取った日を1日目として8日間、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引については20日間の冷却期間があります。
 
ところで、通信販売はクーリング・オフ制度の対象外です。返品規定に注意しましょう。返品規定が優先されますが、返品規定がない場合は、8日間の返品・解除が可能です(返品費用は消費者持ち)。
 
また、特定商取引法には事業者の行政規制を定められており、違反の場合は、業務改善指示や業務停止命令、業務禁止命令の行政処分の他、場合によっては罰則の対象になります。
 

こんな時はクーリング・オフ

国民生活センターの令和3年4月8日報道発表資料「狙われる!?18 歳・19 歳 「金(かね)」と「美(び)」の消費者トラブルに気をつけて!」には、以下のような事例がありました。
 
突然、街角でエステティックサロンの「無料体験」の勧誘を受けた。無料体験の後で高額なコースを勧められたが、断ったのに別室へ連れて行かれ、契約しなければ帰してもらえないので、仕方がなく契約してしまったという女性。
 
エステティックサロンでの契約は特定継続役務提供取引については、8日間はクーリング・オフができます。さらに、その役務を提供する上で必要と言われて購入した商品についても、併せてクーリング・オフが認められています。
 
ところで、クーリング・オフ期間を過ぎてしまったら、泣き寝入りするしかないのでしょうか。
 

クーリング・オフ期間がすぎてしまっても

クーリング・オフの起算日は、特定商取引法第4条・第5条の法律で定められた書面を事業者から受け取った日であるので、法律で決められた契約書面を受け取ってなければ何日たとうとクーリング・オフ期間です。
 
また、クーリング・オフについて知らされていない、クーリング・オフ期間なのに解約しようとしたら「できない」と言われるなど、重要なことを知らせない、うそを言う、脅すなどでクーリング・オフ妨害をした場合、期間を過ぎてもクーリング・オフができます。
 
そもそも、この契約の締結にあたり、業者の思惑により、消費者が「勘違い」や「困惑」して仕方がなく契約してしまった等、契約を取り消せる場合があります。そもそも、契約しないと言っているのに消費者の退去を妨害しての契約は、取り消すことができます(消費者契約法第4条)。
 
「しまった!」と思ったら、まず消費者ホットラインへ相談しましょう。
 

出典

独立行政法人国民生活センター 18歳・19歳の消費者トラブルの状況 -成年年齢引下げから1年-(令和5年5月31日報道発表資料)
独立行政法人国民生活センター 狙われる!?18 歳・19 歳「金」と「美」の消費者トラブルに気をつけて!(令和3年4月8日報道発表資料)
消費者庁 特定商取引法ガイド
e-GOV 平成十二年法律第六十一号 消費者契約法
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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