更新日: 2023.08.31 子育て
「大学無償化制度が利用できるなら自分の力で大学に行って」と親に言われましたが、親の年収が1000万円あったら無償化の対象外ですよね?
大学無償化制度による支援の対象となるためには、家庭の年収に関する基準などを満たす必要もあります。そこで、大学無償化制度における世帯収入の要件について確認していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
大学無償化制度の概要
大学無償化制度(正式名称は「高等教育の修学支援新制度」)とは、授業料・入学金の減免と給付型奨学金の支給という2つの支援により、学ぶ意欲がある学生をサポートする制度です。
家庭の所得基準や本人の学力など、一定の要件を満たすことで支援を受けられる金額は、国立・私立といった学校の区分や通学形態によっても異なります。
例えば、住民税非課税世帯で昼間制の国立大学に自宅以外から通う場合、入学金は約28万円、授業料は年間約54万円が支援額の上限となります。さらに給付型奨学金として月額6万6700円が支給されるため、初年度だけで約162万円の支援を受けられます。
支援を受けるためには世帯収入の要件もある
大学無償化制度は所得の基準として住民税非課税世帯および、それに準ずる世帯が対象となっており、支援を受けるためには本人が学力の基準を満たし、学ぶ意欲があるほか、世帯収入の要件に該当していることが必要です。
具体的な年収は家族構成などによって異なりますが、参考までに自宅以外から私立大学に通う本人(18歳)、両親(父親は給与所得者、母親は収入なし)、中学生の子1人という4人家族の例では、住民税非課税世帯の区分として満額の支援を受けられる年収の目安は270万円までとなります。
また、住民税非課税世帯に準ずる世帯として満額の3分の2の支援を受けるには年収300万円まで、3分の1の支援では年収380万円までが目安となっています。
家族構成や子どもの年齢によるところもありますが、基本的に親の年収が1000万円という場合は世帯収入の要件に該当せず、大学無償化制度を利用することはできないでしょう。親からの学費の支援の有無に関係なく、あくまでも世帯収入によって無償化の対象となるかを判断されるからです。
大学無償化制度が利用できない場合は奨学金を検討
世帯収入の要件から大学無償化制度の対象外となる場合は、貸与条件が緩やかである第二種奨学金の利用を検討してみてください。
有利子の第二種奨学金であれば、同じ貸与型でも無利子の第一種奨学金と比べて家計基準の要件が年収約1140万円(私立大学で自宅通学、親が給与所得者、4人世帯での収入限度額の目安)とハードルが低くなっており、家族構成などでも異なりますが、親の年収が1000万円でも最大で月額12万円まで借り受けることができます。
貸与型なので大学卒業後に返済が必要ですが、返済年数は貸与額に応じて最長20年となっており、月々の負担を少なくして返済することが可能です。
また、経済的な事情などにより途中で返済が難しくなった場合でも、月々の返済額を2分の1または3分の1とする「減額返還」や、返済の期限を先送りにする「返還期限猶予」といった制度があり、適用を受けることで無理なく返済が続けられるようになっています。
なお、無利子の第一種奨学金では家計基準の収入限度額について年間約800万円(前述の第二種奨学金と同じ世帯の例)が目安となるため、親が年収1000万円というケースでの利用は現実的ではありません。
親の年収が1000万円の場合は大学無償化の対象外
大学無償化制度は住民税非課税世帯や、それに準ずる世帯が支援の対象となっています。
家族構成や学校の区分、通学形態にもよりますが、満額の3分の1の支援を受ける場合でも世帯収入は年間380万円までが目安となり、年収1000万円の世帯は無償化の対象外となります。
親に1000万円の年収があっても、大学進学に当たって経済的な支援を受けられない場合、現実的には第二種奨学金の利用を検討することになるでしょう。
出典
文部科学省 高等教育の修学支援新制度
独立行政法人 日本学生支援機構 第二種奨学金(有利子で借りる)
執筆者:柘植輝
行政書士