更新日: 2019.01.11 その他暮らし

大師前駅、北綾瀬駅…「盲腸線」の駅はひょっとして家賃がリーズナブルなのか?

大師前駅、北綾瀬駅…「盲腸線」の駅はひょっとして家賃がリーズナブルなのか?
「盲腸線」とは「終端駅や途中の駅で他の鉄道路線と接続していない路線のこと」(『詳解鉄道用語辞典/高橋政士 編/山海堂』より)とされています。正確な定義には議論があるようですが、“鉄道路線の本線から短い支線として伸び、他路線と接続しないまま終点が行き止まりになる路線”とここでは定義します。盲腸線は全国にたくさんあるのですが、網の目のように鉄道網がつながりあっている東京においても残っています。正直、ちょっと不便さを感じてしまいます。

すると、直感的に「ひょっとして本線の駅より盲腸線にある駅は家賃が安いのでは?」と思ってしまいませんか? 代表的な駅として、東武鉄道大師線の「大師前駅」と東京メトロ「北綾瀬駅」を考察してみます。
藤木俊明

Text:藤木俊明(ふじき としあき)

副業評論家

明治大学リバティアカデミー講師
ビジネスコンテンツ制作の有限会社ガーデンシティ・プランニングを28年間経営。その実績から明治大学リバティアカデミーでライティングの講師をつとめています。7年前から「ローリスク独立」の執筆活動をはじめ、副業・起業関連の記事を夕刊フジ、東洋経済などに寄稿しています。副業解禁時代を迎え、「収入の多角化」こそほんとうの働き方改革だと考えています。

盲腸線駅の「大師前駅」と「北綾瀬駅」は本線駅より家賃相場は安いの?

東武鉄道大師線はまさに盲腸線といっていいでしょう。急行停車駅の東武伊勢崎線(本線・東武スカイツリーライン)「西新井駅」からたった一駅だけの路線で、終点が「大師前駅」です。大師前駅では切符も発売しておらず、すべて西新井駅で処理します。
 
同じように、東京メトロ「北綾瀬駅」は、本線の綾瀬駅で乗り換え、こちらが終点の一駅だけの路線です。ここも盲腸線の駅といっていいでしょう。
 
この西新井駅(本線駅)と大師前駅(盲腸線駅)、そして綾瀬駅(本線駅)と北綾瀬駅(盲腸線駅)の家賃相場を、ある大手賃貸住宅サイトで調べてみました。(こちらのサイトでは「ワンルーム/1K/1DK」の分類になります)
 

・西新井駅(本線駅)

ワンルーム/1K/1DK(マンション)7.21万円
2LDK/3K/3DK(マンション)11.97万円
 

・大師前駅(盲腸線駅)

ワンルーム/1K/1DK(同)6.23万円(西新井駅より約1万円安い)
2LDK/3K/3DK(同)8.76万円(西新井駅より約3万2000円安い)
 
・綾瀬駅(本線駅)
ワンルーム/1K/1DK(同)6.95万円
2LDK/3K/3DK(同)11.41万円
 

・北綾瀬駅(盲腸線駅)

ワンルーム/1K/1DK(同)6.36万円(綾瀬駅より約6000円安い)
2LDK/3K/3DK(同)10.96万円(綾瀬駅より約5000円安い)
 
ある程度予測はしていましたが、盲腸線の終点「大師駅」「北綾瀬駅」とも、本線駅よりそれぞれ家賃が安いようです。
 
念のため、別の大手賃貸住宅サイトで調べてみると、こちらではあまり大きな差は出ませんでした。(こちらのサイトでは「ワンルーム」のみの分類になります)
 

・西新井駅(本線駅)

ワンルーム(マンション)5.2万円
2LDK/3K/3DK(マンション)9.8万円
 

・大師前駅(盲腸線駅)

ワンルーム(同)5.2万円(西新井駅とほぼ同じ)
2LDK/3K/3DK(同)9.7万円(西新井駅より1000円安い)
 

・綾瀬駅(本線駅)

ワンルーム(同)5.6万円
2LDK/3K/3DK(同)9.8万円
 

・北綾瀬駅(盲腸線駅)

ワンルーム(同)5.4万円(綾瀬駅より2000円安い)
2LDK/3K/3DK(同)9.8万円(綾瀬駅とほぼ同じ)
 
当方の調べでは、盲腸線駅と本線駅の家賃の差は検索サイトにより変わります(そもそも検索条件の前提も少し違います)。盲腸線駅の方が若干安かったり、あまり差が無かったりですので、“よく探せば盲腸線駅にリーズナブルな物件があるかもしれない”、といった程度にとどめおきたいと思います。
 
加えて、一駅分の運賃(定期代)もかかります。運賃や乗り換えの手間を考えると、盲腸線の駅だからといって目に見えるほどのお得感は無いように感じます。
 
せっかくですから、それぞれの駅についてもう少し付け加えておきます。ひょっとして盲腸線駅でなくなるかも?
 

そもそも板橋とつながる予定だった東武大師線

大師駅ができたのは、かつて西新井と東武東上線上板橋駅を結ぶ「西板線」という計画があったことによります。まさに東武伊勢崎線と東武東上線がつながる大計画。
 
しかし計画開始後、関東大震災によって見直しせざるを得ず、主に西新井大師の参詣客のため、1931年に西新井~大師前が開業したのですが、その後その計画はおじゃんとなり、大師前駅一駅の路線が残され盲腸線となったわけです。
 
しかし、(実現の見通しはまだ不明ですが)、東京都の環状7号線地域を結ぶ鉄道「メトロセブン」の建設構想があります(※)。
 
これは、葛西臨海公園駅と赤羽駅を環状7号線沿いに結ぶ路線の構想で、実現すれば大師前駅は脚光を浴びるかもしれません。
 

2019年千代田線直通がスタートする北綾瀬駅

東京メトロが北綾瀬地区に車両基地を置くため、土地買収を試みたのですが、地元からは反対の声が多かったとのことです。
 
基地建設のため地元から出された条件の中に「人口が増えたら新駅を作ること」(※※)という項目が盛り込まれたことを受け、1979年に開業したのが北綾瀬駅です。
 
現在、北綾瀬駅から都心や常磐線方面に出るには綾瀬駅での乗り換えが必要ですが、2019年には北綾瀬発の直通電車の運行が予定されています。駅はただいま絶賛改築中です。そうすると、都心との行き来が便利になりますね。
 
また、先ほどのメトロセブン計画でも、環状7号線に面した北綾瀬駅は路線計画に含まれています。もしも実現したら、北綾瀬駅も盲腸線の駅ではなくなり脚光を浴びるかもしれません。
 
出典
※メトロセブン協議会資料より
※※「東京地下鉄道千代田線建設史」(帝都高速交通営団)P473より

Text:藤木 俊明(ふじき としあき)
明治大学リバティアカデミー講師・副業評論家

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