更新日: 2023.08.31 その他暮らし

大家さんから家賃5000円の「値上げ通知」が来ました。拒否することはできる?

執筆者 : 柘植輝

大家さんから家賃5000円の「値上げ通知」が来ました。拒否することはできる?
マンションやアパートを借りていると、更新時などのタイミングで家賃値上げの通知がされることがあります。物やサービスの価格が上がり、家計が苦しい昨今、家賃という固定費の支出増加は大きな痛手となります。家賃の値上げは、請求をされてしまったら受け入れるほかないのでしょうか。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

基本的に値上げは一方的にはできない


家賃の値上げ通知がされたとしても、基本的にその額はまだ決定されたものではありません。家賃は賃貸借契約の中の条件のひとつです。契約条件は貸主と借り主双方の合意の下で定められるものです。
 
それゆえ、貸主側である大家さんからの一方的な通知だけでは、値上げとはならないのが原則です。「来月から家賃が5000円値上がりします」と一方的な通知だけで値上げが決まるわけではないのです。
 
値上げ額が納得できないものであれば、明確に拒否の意思を示すことが大切です。「値上げの拒否や協議・交渉したことを理由に、追い出されることはないのか」と心配になるかもしれませんが、それは基本的にできないことになっているので、安心してください。追い出されるには正当な事由が必要となりますが、家賃の値上げ交渉に応じないことはこの「正当な事由」にはならないからです。
 
ただし、新賃料に納得いかないからと家賃を一切支払わないと、家賃の不払いを理由に追い出されてしまう可能性があるため、家賃の支払いは値上げ前の額で継続してください。
 

契約更新時には家賃の額に合意がなくとも契約は続く

家賃の値上げ通知は契約更新の段階でされることもあります。契約更新時に「家賃の値上げを条件に更新する」と言われた場合も、拒否することは可能です。居住用の建物の賃貸借契約において、貸主が更新を拒否するには正当な理由が必要であり、家賃の値上げに応じないことを理由に拒否することはできないのです。
 
家賃の値上げについて合意がないまま期間が満了すると、家賃の額には変更はなく、その他も同じ条件で契約が更新された、とみなされます。例えば、2年更新の物件の場合、また次の2年間も今までと同じ条件で、契約が更新される、という具合です。
 
もし、契約更新で月の家賃が5000円値上がりしたとすると、2年間でなんと12万円も家賃の支出が増えることになります。4年住むとしたら24万円です。家賃の値上げを受け入れるか否かで、家計の負担も大きく変わります。
 
家賃の値上げを理由に引っ越す方もいますが、引越しには10万円以上のお金がかかることも珍しくありません。納得できない家賃の値上げを理由に引っ越しをするくらいなら、一度「家賃の値上げを受け入れられない」と伝え、従前の家賃で住みつづけるべきです。
 
ただし、ごくまれにあることですが、契約形態が「定期借家契約」である場合は注意が必要です。定期借家契約は契約で定めた期間の満了により終了するもので、これまで述べた普通の賃貸借契約とは異なり、契約更新が原則でない契約形態だからです。
 
合意がなければ自動で更新したものとみなされる一般的な賃貸借契約とは、異なる点があることに注意してください。定期借家契約であるか否かについては、契約書を読むことで確認することができます。
 

値上げの拒否は文書で行うとよい

家賃の値上げを拒否したことは極力、メールなど履歴が残るもので行うことが大切です。そうでないとやり取りの履歴が残らず、いざというとき、こちらの意思を明確にすることができないからです。
 
その際の文面もかしこまったものとする必要はなく、そのまま「値上げには合意できないので従前と同じ条件で契約更新したい」という簡単な記載で問題ありません。
 

家賃の値上げは納得できなければ拒否できる!

居住用の建物の賃貸借契約は借り主に有利になっており、一方的な家賃の値上げはたとえ5000円だろうとできないことになっています。値上げを拒否しても基本的には契約に影響はないため、そのまま住みつづけ、契約も従前の家賃のままで更新することができます。
 
もし、家賃の値上げに納得できないのであれば、それには合意せず、強い意志で大家さんに「納得できないので拒否する」という意思を示してください。
 

出典

国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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