更新日: 2023.08.31 子育て

育休中だけど生活費が足りません。働くことはできますか?

育休中だけど生活費が足りません。働くことはできますか?
Aさんは現在育休中です。育休前は夫婦の収入でなんとか家計をまわしていましたが、育休手当では生活費が毎月マイナスです。在宅ワークをして少しでも稼ぎたいとのことですが、育休手当が打ち切られてしまわないか不安だとのこと。そもそも育休手当とはどのように計算されるのか、また育休中の就労について、FPが解説します。
伊藤秀雄

執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)

FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。

育休手当の支給額

正式には「育児休業給付金」と呼ばれ、育児休業期間中に雇用保険から支給される給付金です。産前産後休業中に支給される「出産手当金」は、健康保険からの給付です。
 

【1ヶ月ごとの支給額】

休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業開始から181日目以降は50%)

 
休業開始時賃金日額とは、育児休業開始前の直近6ヶ月間に支払われた賃金の総額を180で除して得た額です。ただし、臨時の賃金や3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は除きます。支給日数は原則30日間です。なお、休業開始時賃金日額には上限と下限が設けられています(※1)。
 

働きたいのか、働かせたいのか

育休中の就労は、一定条件の範囲で認められます。その際、大前提となるのは、事業の必要性から事業主が社員に依頼し、その社員が合意する形で臨時的に育休中の就労が行われるということです。社員からの申し出で働くことは想定されていません(※2)。
 
具体的には、次のように示されています。
 
表1:育児休業中の就労について
 
表1
 
事例として、次のようなケースが挙げられています。
 

(1) 機密性の高いトラブルが発生し、詳細を知る育休中の社員に臨時の対応を依頼した
(2) 感染症拡大で欠員が発生し、習熟する育休中の社員にテレワークでの一時的就労を打診した

 
反対に、認められないケースとして、1日4時間で月20日間勤務といったように、あらかじめ就労条件を決める場合や、毎週特定の曜日または時間に勤務する場合などを挙げています。
 
育休中の収入増を理由に社員が希望して働くことや、職場の要請であっても安定的な収入が期待できる働き方はできないことがわかります。
 

就労した際の給付金額

もし就労の機会があった場合、一定範囲の収入であれば育休手当も併給されます(※3)。賃金額による給付金受給の可否や金額水準について、給付率が67%の期間は次のとおりです。
 
表2
 
表2
 
給付金の支給範囲の賃金額であっても、恒常的・定期的に就労する場合は育児休業をしていることにならず、育児休業給付金は受給できません。また、育児休業でなくなると社会保険料免除も受けられなくなります。
 
なお、昨年10月に施行された産後パパ育休は出生時育児休業給付金の対象です。労使協定を締結した場合は社員の申し出により、会社と合意した一定の就業日数以内で、定期的な就労も可能です。
 

副業の場合

それでは、勤務先以外での就労や個人事業主として働くことはどうなのでしょうか。最近は、副業解禁の動きが急速に広がっています。
 
自社以外(雇用保険の被保険者になっていない事業所)から支払われた賃金や報酬は、育児休業期間を対象として支払われた賃金の算定(賃金月額の80%以上かどうかなど)に含まれません。そのため、副業先や個人事業による収入があっても、育児休業給付金の支給額の減額は発生せず、本来の給付金全額が支給されます。
 
ただし、就業日数(時間)の算定には、副業先等での就業日数(時間)も含まれるので、副業先等での就労が月10日(10日を超える場合は80時間)を超えた場合は、育児休業給付金は支給されません(※3)。
 
たとえ副業等でも、一定以上の時間を就労に充てることは認められないということです。恒常的・定期的に就労することも、自社での就労制限と同様の趣旨で想定されていません。
 
仮に、副業先等での就業時間が社会保険加入の基準を超えれば、健康保険や厚生年金の加入対象となり、育児休業制度の対象外となる可能性があります。
 
育児休業中の就労は、本来の「子の養育を行うための労務提供義務の免除」の趣旨から、制約が設けられているといえます。
 
育児短時間勤務で復職できるほど仕事に時間を割けないけれど、月に何万円でも収入を増やしたい・・・そのような希望に沿うとすれば、不定期のアルバイトなどでしょうか。在宅ワークであれば個人で請け負ウェブデザインなどの仕事があるかもしれません。
 
いずれにしろ、自社以外での就労を希望する場合は、就業規則および人事部門で副業規定や社外勤務時間の報告などの手続きや実施可否を確認し、職場の理解も得て進めていくことが求められるでしょう。
 

出典

(※1)厚生労働省 育児休業給付について
(※2)厚生労働省 育児休業中の就労について
(※3)厚生労働省 育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について
 
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

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