更新日: 2023.09.14 子育て
【日本学生支援機構の奨学金】 第一種奨学金と第二種奨学金ってなにが違うの?
予約採用を例にとって、利子以外に両者はどのように違うのか、メリット・デメリットは何かを解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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第一種奨学金
JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)の第一種奨学金は、無利子です。選考基準は学力・家計の両基準を満たす必要があります。学力基準は「高等学校等における申込時までの全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること」が条件となります。
なお、住民税非課税世帯など経済的に極めて修学が困難な方で、将来社会で自立し、および活躍する目標をもって進学しようとする、大学等における学修意欲がある者として高校等から推薦されれば、学力基準は満たしたものと扱われます。家計基準の上限の目安は、本人、父(会社員)、母(無収入)の3人世帯では716万円となっています。
貸与月額は、進学先の学校の種類や通学方法等により選択できる金額が異なります。例えば、 私立大学(自宅)の場合は、月額(1)5万4000円、(2)4万円、(3)3万円、(4)2万円の4種類の金額から選ぶことになります。
メリットとしては、無利子であることから、大学を卒業した後にスタートする返還中に延滞をしないかぎりは、借入した金額と同じ金額を返還すればよいという点です。また、借りられる金額が高額ではなく無利子なので、返還期間が長期にわたっても大学卒業後の返還が高額にならずに済むといったことも挙げられます。
一方、デメリットとしては、借りられる金額が高額ではないため、第一種奨学金だけでは必要となる金額に足りない可能性があるということです。また、最高月額(上記の例では(1)5万4000円)の利用には、最も厳しい併用貸与の家計基準を満たさなければ利用できない点が挙げられます。
第二種奨学金
第二種奨学金は、有利子です。選考基準は第一種奨学金よりも緩やかになっています。学力の基準は「高等学校等における申込時までの全履修科目の学習成績が平均水準以上である等」が条件です。
家計基準の上限の目安は、3人世帯では、1113万円程度となっています。貸与月額は2万~12万円までの範囲で、1万円単位で選ぶことができます。なお、12万円を選択した場合、私立大学の医・歯学部は4万円増額(16万円)、薬・獣医学部は2万円増額(14万円)を受けることができます。
メリットとしては、必要な金額が高額であったとしても、最高12万円まで(医・歯学部は、上限16万円まで、薬・獣医学部は、上限14万円まで)借りることができるといったことが挙げられます。
文部科学省の「令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」によると、私立大文系の学費について、平均月額は約9万円、理系は約13万円ですので、第二種奨学金を借りれば親の支援を受けずに本人が学費を賄うことができます。
また、他の有利子の借入金のなかでは、最も利率が低い点もメリットです。利率固定方式は0.905%、利率見直し方式は0.300%となっています(令和5年3月貸与終了者)。なお、在学中は無利子です。また、貸与終了時市場金利が高騰しても、利率3%を超えて利子を課されることがない点も安心です。
一方、デメリットとしては、利率が低いとはいえ利子を含めて返還しなければならないため、最終的な返還額が増えてしまう点や、高額を借入したケースにおいては、大学を卒業した後の返還により経済的に厳しくなることが挙げられます。このため、必要最小限の金額を借りることが大切です。
第一種と第二種の併用
第一種の奨学金だけでは必要な金額に足りないという場合には、第二種も併せて借りることもできます(併用貸与)。しかしこの場合、選考基準は最も厳しくなります。
学力基準については第一種奨学金と同様ですが、家計基準の上限の目安は3人世帯では661万円です。第一種奨学金と比べて55万円下がりますので、対象者がより限定されます。併用すれば、最大月額18万4000円借りることができますが、大学卒業後の返還額がいくらになるかを十分理解したうえで、適正額を借りるようにしてください。
また、場合によっては日本学生支援機構以外の奨学金制度を併用しようと思っている人もいらっしゃるでしょう。日本学生支援機構側は、他の奨学金制度との併用は禁止していませんが、他の奨学金が禁止している場合がありますので、よく確認しましょう。
出典
日本学生支援機構 ホームページ
文部科学省 令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について
※2023/9/14 記事を一部修正いたしました。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。