更新日: 2023.09.15 その他暮らし
新車購入に「残クレ契約」は要注意!? 契約前に確認したい「落とし穴」を解説
本記事では、残価設定ローン、いわゆる「残クレ」契約の落とし穴とお得なローンの組み方を解説します。
執筆者:宇野源一(うの げんいち)
AFP
走行距離制限がある
残価設定ローン、いわゆる「残クレ」契約では、3年~5年後など将来の価値(残価)をあらかじめ設定し、車両本体価格から「残価」を除いた金額を月々支払っていきます。
例えばトヨタのアルファードで、5年後の価値を新車価格の52%と設定し、残りの48%を5年間で支払う、などの仕組みです。残価を除いた金額を支払うので、毎月の支払いが抑えられます。なお、残価の設定金額や契約期間は、車種や販売店によって異なります。
また、残価を担保するためにはいくつか条件があり、その中の1つに走行距離制限が存在します。
例えば、毎月1000km目安、つまり5年で6万km以内の走行距離でないとその条件を満たさないということになると、頻繁に遠くへドライブに行く人や通勤などで毎月の走行距離が長くなりそうな人にはおすすめできないローンとなります。なお、制限される走行距離も各店舗で定めています。
事故による修復があると返却不可
あらかじめ設定された残価で買い取ってもらうための条件として「事故による修復があると返却不可」というものもあります。
ちょっとバンパーを擦ってしまった程度であれば問題ありませんが、車の骨格(フレーム)まで修復する必要のある事故を起こした、またはもらい事故をしてしまった場合はその条件を満たせなくなり、残価分を一括精算したり差額を補填(ほてん)したりする必要が出てきます。残クレには事故によるリスクがあるということも覚えておきましょう。
残クレでローンを組んだ場合のシミュレーション
残クレは実際お得なのでしょうか。アルファード(グレードZ、車両本体価格540万円)を頭金40万円、所要資金500万円で購入すると仮定して、ある販売店の条件を基にした残クレと、通常の銀行ローンとを比べてシミュレーションしてみましょう。
5年間の残クレ(融資利率4.9%)で購入する場合
初回支払額:5万2266円
2回目以降支払額:5万800円(2回目~59回目)
最終支払額(残価):286万2000円(残価率53%)
5年間の総支払額:299万8666円
5年間で支払う利息:96万666円
銀行の5年ローンで購入を検討し、融資利率が2.5%だった場合
毎月の支払額:8万8737円
5年間の総支払額:532万4220円
5年間で支払う利息:32万4220円
確かに月々の支払額は残クレが安くなりますが、5年間の総支払額、5年間で支払う利息は銀行ローンの方が安くなるという結果になりました。
銀行ローンの毎月の支払額が厳しいと思った人も、上記のシミュレーションでは残クレと同じ期間にしているからその金額になっているのであって、ローンの期間を延ばせば支払額は変わってきます。銀行では最長10年間ローンを組むことができますが、ここでは7年間でシミュレーションしてみましょう。
銀行の7年ローンで購入を検討し、融資利率が2.5%だった場合
毎月の支払額:6万4946円
7年間の総支払額:545万5464円
7年間で支払う利息:45万5464円
ちなみに10年間でローンを組んだ場合は以下です。
毎月の支払額:4万7135円
10年間の総支払額:565万6200円
10年間で支払う利息:65万6200円
実は銀行ローンの方がお得
残クレは残価を最終回に据え置くという性質上、その分余計に金利が上乗せされてしまいます。月々の支払い額は低く抑えられるのはメリットですが、シミュレーションからわかるように、5年間という比較的短期間であってもアルファードの場合100万円近い金利負担を強いられるのに、ローン残高が半分以上も残ってしまうという点はデメリットです。
それであれば、長期間であっても銀行でローンを組んだ方が金利負担を含めてもお得であるといえるでしょう。ただし、銀行ローンは変動金利が選択される可能性が大きいため、支払い総額が増えてしまうリスクがあるということは注意が必要です。
銀行ローンのその他のメリットとして、支払い途中であっても車を売却し返済に充てることができる、借り入れる人の属性(年収や勤務先など)によってはさらに融資金利が引き下げられる点などが挙げられます。銀行ローンの仮審査の結果を待って、どのローンを利用すればいいのか検討した方がいいでしょう。
おすすめされるがままではなく、自身でも考えてみよう
憧れの車を買うにあたり、ディーラーが勧めてくるプランの他にも最適なものがないかという視点は持っておいて損はありません。残クレ終了時に「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、しっかりと知識をつけたうえで車を買うようにしましょう。
執筆者:宇野源一
AFP