更新日: 2020.04.07 その他暮らし
「人づくり革命」3つの教育無償化。幼児教育・私立高校・大学など、それぞれの無償化のポイントを見てみよう!
それぞれの無償化のポイントをお伝えしますので、教育資金計画の参考にしてください。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
「人づくり革命」8つのポイント
人生100年時代に、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会を実現するのに重要な鍵を握るのが「人づくり革命」、人材への投資です。 経済財政運営と改革の基本方針2018では8つのポイントが示されています。抜粋してお伝えします。
1.幼児教育無償化を一気に加速する。
2.最優先の課題である待機児童問題を解消し、女性就業率 80%に対応できる 「子育て安心プラン」を前倒しし、2020年度末までに32万人分の受け皿整備を進めるとともに、保育士の更なる処遇改善に取り組む。
3.真に支援が必要な、所得が低い家庭の子供たちに限って、大学などの高等教育無償化を実現する。
4.介護離職ゼロに向けた介護人材確保のため、介護職員の更なる処遇改善を進める。
5.私立高等学校授業料の実質無償化を実現する。
6.何歳になっても学び直し、職場復帰、転職が可能となるリカレント教育を抜本的に拡充 する。
7.18歳人口が大幅に減っていく中、人材育成を担う大学自体も変わらなければならない。
8.人生100年時代を見据え、意欲ある高齢者に働く場を準備する。
幼児教育の無償化
待機児童の解消のため受け皿の整備を着実に進めるとともに、全ての3~5歳児と住民税非課税世帯の0~2歳児について、幼稚園、認定保育所、認定こども園の費用が無償化されます(子ども・子育て支援新制度の対象とならない幼稚園については同制度における利用者負担額が上限です)。
上記以外(認可外保育施設)についても、保護者の就労などにより保育の必要性があると認定された子供で、認可保育所や認定こども園を利用できない者を対象に無償化されます。
対象となるサービスは、一般的にいう認可外保育所、自治体独自の認証保育所、ベビーホテル、ベビーシッターなどのうち一定の基準を満たすものです。ただし、基準を満たしていなくても、当初5年間は無償化されます。
認可外保育施設の無償化の上限額は、認可保育所における月額保育料の全国平均額3.7万円(0歳~2歳の子供については月額4.2万円)です。
幼稚園の預かり保育は、幼稚園保育料の無償上限額(月額2.57万円)も含めて認可外保育施設と同じ上限までです。例えば、一般的にいう認可外保育施設の利用者負担額は平均で月4万円(3歳の場合)ですので、この平均額の場合は月3千円(4万円-3.7万円)の利用者負担となります。
このほか、就学前の障害児の発達支援(いわゆる「障害児通園施設」)については、 幼児教育の無償化と併せて無償化することが決定されています。幼稚園、保育所及び認定こども園と障害児通園施設の両方を利用する場合は、両方とも無償化の対象となります。
なお、「子ども・子育て支援法」に基づく地域型保育(小規模保育、家庭的保育、居宅訪問型保育及び事業所内保育)は、認可保育所と同様に無償化の対象となります。
幼児教育の無償化は2019年10月からの全面的な実施を目指します。
私立高等学校の授業料の実質無償化
現在、私立高等学校の授業料については、年収910万円未満の世帯を対象に、年収に応じて公立高校の授業料相当額(年11万8,800円)を基準に最大2.5倍(約30万円)まで国が助成する「就学支援金」があります。
さらに、都道府県独自の助成があります。東京都の場合、私立高等学校等授業料軽減助成金として、収入に応じて年額152,000円~330,200円助成されています。この結果、年収目安約760万円までの世帯は、就学支援金と合わせて44万9,000円まで助成を受けることが可能です。
今回の実質無償化は、年収590万円未満の世帯への就学支援金(国)を拡充し、私立高等学校の授業料の全国平均額(約40万円)に達するように2020年度までに引き上げる予定です。
大学など高等教育の無償化
年収270万円未満の住民税非課税世帯は、国立大では授業料に相当する標準額約54万円と入学金約28万円を全額免除されます。公立大は国立大の額を上限とします。2020年4月からの実施を目指します。
私立大の授業料は最大約70万円を減額、入学金も私立大の平均額(約25万円)まで免除されます。短期大学、高等専門学校、専門学校は、大学に準じて措置されます。
住民税非課税世帯の子供たちを対象に、教科書代などの修学費や通学費、下宿生の食費・住居・光熱費などの生活費、授業料以外の学校納付金(私立学校生に限る)などに充当するための給付型奨学金も創設されます。
住民税非課税世帯に準じる世帯の子供たちについても、住民税非課税世帯をベースに、年収300万円未満の世帯には3分の2,380万円未満の世帯には3分の1の額の支援が行われます。
支援対象者は高校在学時の成績だけで判断をせず、「本人の学習意欲を確認」して決まります。
大学等への進学後は、学生の成績状況を毎年確認し、下位4分の1に低迷するなどの場合は警告を行い、連続して警告を受けたり、停学処分等を受けたりした場合は支援が打ち切られます。
支援対象となる大学などにも教員や理事への外部人材活用や、厳格な成績管理、財務情報の開示などに一定の要件が課されます。
(参考)
経済財政運営と改革の基本方針2018(平成30年6月15日)
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。