更新日: 2023.10.16 その他暮らし

日本の物価高は止まる? 賃金は上がる? 「年次経済財政報告」を解説!

執筆者 : 下中英恵

日本の物価高は止まる? 賃金は上がる? 「年次経済財政報告」を解説!
2023年8月に、内閣府から年次経済財政報告の説明資料が公表されました。この資料には、現在の日本の経済や、物価の上昇、さらに所得向上への動きなどについて記載されています。
 
今回は、最新の資料から、特に私たちの生活に関わる部分を抜粋し、現在の日本経済はどのような状況にあるのか、一緒に確認していきましょう。
下中英恵

執筆者:下中英恵(したなかはなえ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者

“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。

富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”

日本経済は回復傾向

まずは、日本経済の現状についてチェックしていきます。
 
新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年頃から経済活動が一時滞りましたが、現在は正常化が進んでおり、消費が回復しています。対面型サービスの労働時間も回復し、コロナ以前の経済へ戻ってきていることが分かりました。そして、景気の状況を知る上で参考となる経済指標「実質GDP」と「名目GDP」は、過去最高水準を達成しています。
 
また、新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワークが定着し働き方が変わったり、平日の外食消費が減ったりと、一部のサービス消費に構造的な変化が出てきました。
 
例えば、東京都内におけるテレワーク実施企業の割合は、2020年3月以前のいわゆるコロナ以前は都内企業全体の24%でした。感染拡大直後から2022年初頭は、60%近くを推移していますが、新型コロナウイルス感染症の流行が収まってきた最近では、またテレワークの実施企業の減少傾向が見られます。それでも2023年6月には実施率44%となり、コロナ以前の倍近くに増加しました。
 
また、平日の外食消費の割合は、2019年に比べ、-5~-4%減少しています。このような変化にもかかわらず、現在の日本経済自体は、順調に回復・向上しているようです。なお、コロナウィルスの流行が収まってきた最近では、またテレワークの実施企業の減少傾向が見られます。
 

物価の上昇は?

次に、日本の物価について確認していきます。消費者の皆さんも日々実感していると思いますが、2022年から、さまざまな商品やサービスの物価が上昇傾向にあります。特に、毎日の買い物に影響がある、食料品を中心とした商品の価格が3%を超えて上昇しています。
 
物価の上昇は、私たち消費者の生活にとって、大きな打撃があります。お金のやりくりで苦労している方や、経済的に苦しいと感じている方もいるかもしれません。しかし政府は、この物価上昇は、デフレマインドを払拭し、デフレ脱却につなげていくチャンスであると考えているようです。
 
「デフレ」とは、デフレーションともいい、経済用語で、物価が持続的に下落していく状況を指します。対義語はインフレーションです。デフレーションが続くと、企業の生産水準の低下や失業の増加が起こり、景気後退や不況に結びついてゆくといわれています。
 
確かに、最近の物価上昇は私たちの生活に大きな影響を与えていますが、日本全体の経済を考えると、長らく続いたデフレを脱却できるよいチャンスと考えることもできるでしょう。
 

所得の変化と今後の動向

物価の上昇と同時に、私たちの所得も上がっていってくれれば、生活が経済的に苦しくなることはありません。むしろ、日本経済が大きく発展することにつながります。現在のところ、日本の名目賃金は上昇傾向が見られます。物価の上昇率に対して、名目賃金の上昇率はまだ追い付いていませんが、今後ゆっくりと賃金も上昇していくと考えられます。
 
また、転職をする人の割合も増加中で、2023年の正規間転職(正社員から正社員への転職者)の割合は2.5%となっています。転職によって、年収が押し上げられている人も多いようです。そして今後は、さらに女性や高齢者も活躍できる環境整備が実現すれば、家計の所得アップにつながっていくでしょう。
 

まとめ

今回は、政府の年次経済財政報告の説明資料から、特に私たちに関係する部分を抜粋して、日本経済や物価、所得の状況について解説しました。日本経済が回復し、今後も伸びていく可能性があるという情報は、仕事をする上でも大きなモチベーションアップにつながります。今回紹介した内容を参考にしながら、今後もマクロ的な視点で日本経済を観察した上で、日々の仕事や家計のやりくりなどに励んでいきましょう。
 

出典

内閣府 令和5年度 年次経済財政報告(経済財政政策担当大臣報告)―動き始めた物価と賃金―
 
執筆者:下中英恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者 

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