インフレーションとデフレーション その4 デフレの実例 1930年代の世界大恐慌によるデフレ
配信日: 2023.10.19
この大恐慌は、1929年10月の株価暴落から始まり、1933年まで長期にわたりました。大恐慌の影響は全世界に及び、植民地を含めた経済圏を持っている国はブロック経済圏を形成し、世界経済の分裂を促進しました。
その結果、ドイツや日本などの経済ブロック圏を持たない国を困窮させ、第二次世界大戦の遠因になったと言われています。現代にも共通する要素を持った大恐慌ですが、その概要について説明します。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
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早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
世界大恐慌とは?
1929年10月24日、暗黒の木曜日を境にニューヨークの株価が大暴落し、富裕層の資産が失われ、経済への信頼が揺らぎました。この暴落は経済全般に大きな影響を与え、1929年から1932年にかけて工業生産は50%近く下落、実質GNPは35%以上下落し、卸売物価は30%以上の下落となっています。
1929年には3.2%であった失業率は、1933 年には24.9%まで上昇しました。また、アメリカはGNPを1929年のピーク時の水準へと回復させるまでに11年間も要しています。
株価は1929年8月から1932年6月にかけて、なんと86%も下落しました。2008年から2009年のリーマンショックでは史上第2位の株価下落になりましたが、それでも下落率は56%にとどまっているので、大恐慌がいかに深刻なものであったのかがよく分かります。
この大恐慌でアメリカのみならず、ヨーロッパ諸国や日本、さらには中南米諸国も多大な打撃を受けました。
大恐慌の原因とその影響
アメリカでの株式市場の大暴落に端を発して金融危機が世界中に広がり、投資が減少し、企業の倒産や失業が増加しました。その結果、物価が下落し、企業の収益が減少したことで、さらなる雇用の削減や経済の停滞が起こりました。
期間
デフレの主要な期間は1930年から1933年まで続きました。これは大恐慌の影響が最も深刻で、数々の経済指標が悪化した時期といえます。
信用収縮
株価の暴落によって銀行は多額の貸し付けを失い、信用収縮(金融機関での融資の縮小)が発生しました。これにより企業や個人の投資・消費が減少し、景気が冷え込みました。
物価下落率
インフレからデフレへの転換期において、物価は急速に下落しました。アメリカでは1929年から1933年までの間に物価指数は約30%以上の下落となっています。
社会経済的な影響
需要の低下により企業の収益が減少し、倒産や失業が急増しました。人々の所得が減少して消費や投資の抑制も進んだため、経済活動は全体にわたって停滞しました。
物価とデフレの関係
株価の暴落や信用収縮により需要が低下し、企業は価格競争や値下げを行いました。それに伴い物価も下落して、デフレが進行しました。
物価と経済への影響
物価が下落したことで企業の収益が減り、投資と雇用が減少しました。消費者の購買力も低下し、需要の減少により経済は停滞して大量の企業倒産や失業が発生しています。
政治・社会情勢への影響
デフレと大恐慌は、政治的な不安定さや社会的な混乱を引き起こしました。失業率の上昇や経済の停滞は社会不満を高め、労働者の抗議運動や労働組合の台頭を促しています。
また、デフレは政府による対策の必要性を浮き彫りにし、ニューディール政策などの大規模な経済政策が導入されました。
アメリカのデフレの経済的な作用
アメリカのデフレは景気の停滞、企業の倒産、失業の増加など、以下のような経済的な作用をもたらしました。
大量の企業倒産と銀行の破綻
デフレによって企業の収益が減少し、多くの企業が倒産しました。また、銀行も多額の貸し付けを失ったため、破綻するケースが相次ぎました。
失業の急増
企業の倒産や需要の低下により、多くの労働者が失業しました。失業率は急激に上昇し、生活に困窮する人が増えました。
資産価値の低下
株価の暴落や不動産市場の崩壊で資産の価値が大きく減少したことにより、人々の富や資産に対する信頼が揺らぎ、消費意欲が低下しました。
農業への影響
農業もデフレの影響を受けました。農産物の価格が下落して農家の収入は減少し、農村部の経済状況が悪化しました。
社会不安と政治的な変化
失業率の上昇や経済の停滞は社会不安を引き起こし、労働者の抗議運動や労働組合の勢力が拡大しました。
また、デフレは政府による対策の必要性を浮き彫りにし、フランクリン・D・ルーズベルト大統領の指導下でニューディール政策などの大規模な経済政策が導入されました。
アメリカの大恐慌によるデフレは社会経済的な混乱と不安をもたらしました。政府の介入と経済政策の導入で次第に経済は回復していきましたが、デフレの影響は長期間にわたって続きました。
まとめ
デフレは物価の下落から企業業績の低迷、農業の生産低下、失業の増大など、経済全般に深刻な影響をもたらします。
次回「その5」では、2000年代の日本のデフレについて説明したいと思います。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー