更新日: 2023.10.17 その他暮らし

お金の悩みは、背景に人々の価値観の変化や社会変動がある!? ~生活課題を知るということ~

執筆者 : 重定賢治

お金の悩みは、背景に人々の価値観の変化や社会変動がある!? ~生活課題を知るということ~
いつ何時、どのようなことが起こるのか分からないのが人生です。ああしておけばよかった、こうしておけばよかったと、後から振り返って思うことは誰しもあることでしょう。人生の分岐点において、今起こっている出来事が将来、どのような影響を及ぼすのかは未知のことです。
 
リスクマネジメントの観点でいうと、あることが起こる前の予防と、起こった後の対応とに分けて考えるといいのですが、それ以前に、どのような生活課題が私たちの人生に可能性として内在しているかを認識しておくことはとても重要です。
 
そして、さまざまな生活課題を認識することは、人生設計を組み立てるうえで重要な示唆を与えてくれると気づきます。
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

現代社会における生活課題

現代社会において特徴的な生活課題としては、80代の親が50代で未就労の子の生活を支える「8050問題」があります。
 
また、子どもの貧困などにみられる「生活困窮」、本来は大人が担う家事や家族の世話を日常的に行っている「ヤングケアラー」、介護と育児を同時に行う「ダブルケア」、そして児童や高齢者、障害者に対するほか、夫婦間などで発生する「虐待」や「DV」なども生活課題として取り上げられています。
 
これらは社会的な問題として扱われるようになっていますが、以前は今ほど意識されていなかった潜在的な問題だったといえます。
 
例えば、大手芸能事務所の性加害問題が報道で大きく取り上げられていますが、長い間、うわさレベルであったものが今になってメディアで取り扱われていることが批判の的にもなっています。メディアで取り上げられなければ一般社会で認知されにくいというのは、問題が潜在化してしまう悪い事例といえるでしょう。
 
今回の性加害問題は、小学生という児童も対象に行われていた点で考えると、児童虐待と認識してしかるべきかもしれません。
 
こども家庭庁によると、児童虐待の定義は、殴る、蹴る、叩くなどの「身体的虐待」、子どもへの性的行為、性的行為を見せるなどの「性的虐待」、家に閉じ込める、食事を与えないなどの「ネグレクト」、言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるうなどの「心理的虐待」の4種類に分類されています。
 
一般的には、児童虐待とは無縁の生活を送っている人が多いように思われているかもしれません。しかしながら、私たちが暮らす社会には現実問題として、このような生活課題に直面している人たちがいる可能性を認識しておく必要がある時代になっていると考えたほうがいいでしょう。
 

生活課題を知るのは人生設計では有意義なこと

私たちは自分が知らないことに対して無防備、不作為に振る舞う傾向があります。知らないのだから仕方のないことですが、ひとたび顕在化すると、その問題について考えなければならなくなります。
 
前回の記事「お金の悩みはマネーリテラシーよりも、まずは自分の価値観を内観! 頭の中の整理方法は?」でも使用した図表1で説明すると、私たちは人それぞれ、感情や考え方などに基づいた価値観を持ち合わせており、その価値観は同時に道徳や倫理、社会規範といった人としてのルール、社会的なルールによって影響を受けています。
 
図表1
 
図表1
 
筆者作成
 
前述の大手芸能事務所を巡る児童虐待の問題は、人々の心の中に強烈な負のイメージという価値観を想起させます。
 
このような価値観は、人道的には「人権」や「人間の尊厳」の問題として良くない、企業倫理や社会規範的には「コンプライアンス(法令遵守)」や「ガバナンス(企業統治)」の観点で良くないとの認識のうえで整理され、これらが人々の価値観として一定の共通項を見出させることとなり、さらなる負のイメージを想起させることにつながっていきます。
 
しかし、児童虐待の専門家ではない私たちは、一般的に医学、心理学、社会学、社会福祉、法律など、児童虐待に関する専門的知識を有していないため、この問題にどう向き合えばよいか分からないというのが実情でもあります。
 
そこで重要なのが、「知ろうとすること」です。分からないことは自ら調べたり、有識者の意見に耳を傾けながら学んだりすることで、自分の中に今までなかった気づきが生まれるようになります。その積み重ねが複雑化する社会情勢を理解し、また生活課題を整理して自分がどう生きるかを考えるうえでの判断材料にもなり得ます。
 

まとめ

児童虐待は、ライフステージにおいては子育て期に関する生活課題といえます。大手芸能事務所の児童虐待問題は、子を持つ保護者にとっては深く考えさせられる事案かもしれません。
 
社会は、時代とともに変化します。そして「環境の中」にいる私たちは、社会変動という環境の変化によって、道徳、倫理、社会規範といった価値判断が変わり、結果として自分自身の価値観も変化することを知っています。
 
ファイナンシャル・プランナーへの相談では、お金に関することが多くなりますが、お金の悩みや家計の心配事、将来に対する不安などは、その背景に人々の価値観の変化や社会変動があるものと筆者は考えています。
 
「お金のことを分かりやすく簡単に説明する」ということには一定のニーズがあるかと思いますが、それは単に知識(情報)や技術(方法)を頭の中に埋め込んでいるだけです。むしろ重要なのは人生の捉え方で、お金以外の事柄に関心を抱くことが大事なときもあるでしょう。
 

出典

こども家庭庁 児童虐待防止対策

 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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