更新日: 2023.11.06 子育て

児童手当の第3子増額分を受け取れない? 違和感がある児童手当の「きょうだいカウント」とは

執筆者 : 當舎緑

児童手当の第3子増額分を受け取れない? 違和感がある児童手当の「きょうだいカウント」とは
少子高齢化の現状を解消するために、「異次元の少子化対策」が政策とされ、その後は具体的な内容としての「少子化対策推進基本方針」が厚生労働省から公表されています(※1)。
 
その中では児童手当が増額されることが明記されており、その結果、ニュースなどでは第3子以降については児童手当が月3万円に引き上げられるということが大きく取り上げられました。
 
この「第3子」「月額3万円」という数字ばかりが独り歩きしているようですが、注意点はないのでしょうか。詳しく見てみましょう。
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

基本の「き」。児童手当の制度をおさらい

児童手当法では、18歳の誕生日後の最初の3月31日を迎えるまでを「児童」だと定義しています。つまり、児童手当が受け取れる期間は0歳から18歳までの誕生日ではありません。受け取れる期間は、子どもそれぞれの誕生日によって異なるというわけです。
 
このように、子どもが1人であれば、金額も受給期間もシンプルな児童手当の仕組み。今回、ニュースとなり、大きく取り上げられた理由は「第3子からは3万円が支給される」という点です。
 
では、もし子どもが3人きょうだいであれば、一番下の子は0歳から18歳までの19年間に月3万円・合計684万円受け取れるかというと、実はそうではありません。
 
「第3子」というのは、きょうだいがいる場合の3番目という意味ではありません。18歳で成人となり高校を卒業した人は、もう「児童」とみなされません。
 
第1子の高校卒業後は第2子、第3子が繰り上がって、それぞれ第1子、第2子となるという“きょうだいカウント”の方法が理解されていないのです。このカウント方法は、第3子が増額される予定の2024年10月分からも同様の考え方が踏襲される見通しです。
 

第3子、月3万円受け取れる児童手当。得する人はいる?

先に述べたような「児童」の定義を考えると、例えば年齢が1歳ずつ離れた3人きょうだいでは、第3子が月3万円を受け取れるのは高校1年生までです。第1子が高校を卒業すると、月1万円に減るからです。
 
厚生労働省がまとめた「出生に関する統計の概況」(※2)によると、これまでは、ほとんど単産(単胎で生まれる。つまり1回の出産が1人)であることがわかります。もし、きょうだいの年齢差が4~5歳離れていると、第3子としての増額は平均的には中学生で終わることが予想されます。
 
もともとひと月あたりの児童手当は、3歳未満は1万5000円、3歳以上小学校修了前と中学生は1万円と決まっていますから、シンプルに、この総額を考えると約200万円が児童手当として受け取れます。
 
これが、第3子がいると約600万円(注)と3倍になるかというとそうではありません。高校卒業まで倍増となるのは“「三つ子」のケースのみ”となるというのはあまり知られていないでしょう。
 
お子さんたちの年齢差によっては、第3子の増額分を受け取れる期間が限られる、もしくは受け取れないというケースもあります。今回の改正によって得ができるご家庭はとても少ないのです。
 
(注:単純計算 3万円×12ヶ月×18年間=648万円)
 

教育費の準備方法は変わらない

少子化対策としては、これまでも、妊娠中の医療費補助や出産中の社会保険料免除,出産育児一時金の拡充や幼児保育の無償化、高等学校の就学援助や給付型奨学金の拡充など、さまざまな支援が設けられたことで、支援の種類は広がっているといえます。
 
ただ、これまで行われてきた子育て支援の経緯を見ても、途中で所得制限が設けられたり、支援の範囲が限られてしまったり、地域によって支援の内容が異なったりと、財源や政権、自治体の事情によって、途中で制度が変わってしまうこともよくあります。
 
たとえば今回の改正にあたり、いったんは児童手当を受給できる所得制限がなくなりましたが、今後もそのままの所得要件が継続されるとは限りません。一方、子育ては支援がなくなっても継続していくものです。
 
この「第3子」への児童手当をあてにしている方には申し訳ないのですが、今後、教育費の準備方法を変える必要はないでしょう。高校卒業までは家計から月々の教育費を支出していき、同時に大学受験に備えるために児童手当を貯蓄することが、教育費の準備方法の王道です。
 

出典

(※1)厚生労働省 少子化対策推進基本方針について
(※2)厚生労働省 令和3年度 出生に関する統計の概況
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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