財布を拾ってくれた人に「お礼に10万円払え」と言われた! 本当に払う必要はある? 元警察官の筆者が解説!
配信日: 2023.11.07
本記事では、前職が警察官だった筆者の経験も交えて落とし物のお礼について解説します。
執筆者:山根厚介(やまね こうすけ)
2級ファイナンシャルプランニング技能士
落とし物を拾った際の権利
落とし物を拾って警察へ届けると、遺失物法などによって拾得者(落とし物を拾った人)はいくつかの権利が得られます。まずはこの得られる権利について解説します。
報労金などを受け取る権利
落とし物の持ち主(遺失者)が判明した際には、落とし物を拾った人(拾得者)は報労金と呼ばれるお礼のお金を請求できる権利が得られます。金額は落とし物の価格の5%以上20%以下です。また交番までの交通費など、落とし物を届ける際にかかった費用も合わせて請求が可能です。
落とし物の所有権を得る権利
3ヶ月の保管期間内に落とし物を届けたものの遺失者が判明しなかったときは、落とし物を自分のものにできます。ただし、免許証やキャッシュカードのように個人情報が書かれたものや法律で所持が禁止されているものなどは、自分のものにできません。
また、所有権を主張できる期間は、所有権を取得してから2ヶ月以内です。期間内に引取りをしないと権利は喪失します。
報労金の金額はいくらが妥当?
自分の財布を拾ってくれた人から「お礼として10万円ください」と言われた場合、その金額を支払う必要はあるのでしょうか。前述のように、報労金の金額は落とし物の価格の5~20%です。
例えば、財布の中に10万円入っていた場合は、10万円と財布の市場価格などを合わせた金額から報労金を計算するため、10万円は過大な請求となるでしょう。一方で、財布に100万円入っていた場合は、10万円は5~20%の範囲内のため正当な金額といえます。
それでは、キャッシュカードなどが入っていた場合はどうなるのでしょうか。キャッシュカードは本人しか使えないため、市場価格はないものとして扱われます。そのため、仮にキャッシュカードに数千万円の残高があったとしても、報労金の対象には含まれません。
報労金を支払わなかったらどうなる?
警察は落とし物の受理や返還を行っていますが、報労金の支払いや金額については介入しません。そのため、拾得者と遺失者で話し合う必要があります。
遺失物法では、報労金を支払わなければならないと決められてはいるものの罰則はないため、報労金を支払わなくても警察に捕まることはありません。しかし、民事訴訟になる可能性はあり、実際に報労金を巡っていくつか民事訴訟が起こされています。
お礼はきちんと行うことが大切
警察官として実際に遺失拾得を取り扱う際には、その場で報労金を請求する権利や所有権を取得する権利を確認するのですが、権利を放棄する人がほとんどでした。落とし物をわざわざ警察まで届けてくれるのは、善意で行っている人が多いと感じます。そのため、落とし物が見つかったときは、できる範囲で拾得者にお礼ができるとよいですね。
一方で、なんでもかんでも拾った物を届けて、なおかつ権利を主張するという人も少数ながらいました。そういった人とトラブルを起こさないという意味でも、法律で定められた範囲内でのお礼は必要といえるでしょう。
出典
e-Gov法令検索 遺失物法
e-Gov法令検索 民法
警察庁 遺失物法等の解釈運用基準について(通達)
執筆者:山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士