更新日: 2023.11.11 その他暮らし
親族に扶養照会が行くのが不安で「生活保護」を受けられません。どうするべきでしょうか…?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
扶養照会とは何か、なぜ行われるのか
扶養照会とは、生活保護の必要性の判断材料の1つとして行われるものです。内容は、扶養義務者に対して 「生活保護の申請をされた方(申請者)の扶養ができないか」 と問い合わせをするものです。
扶養義務者とは、父母や祖父母のほか、兄弟姉妹など、一定範囲の親族が該当します。扶養照会は、扶養義務者からの扶助が生活保護に対し、優先されるため、扶養義務者から扶助が受けられないかを確認する意味で行われています。
例えば、本人の収入が0円、貯金も0円という場合であっても、 「親に月50万円の収入がある」「1000万円の資産がある」 というような場合もあります。扶養照会は、そのように親族に資力のある状況を想定し、まず親からの支援で生計が維持できないか、確認をとる仕組みです。
この扶養照会を嫌がり、生活保護の申請をためらう人は少なくありません。
2020年12月31日~2021年1月3日にかけて、一般社団法人つくろい東京ファンドが実施したアンケートによれば、生活困窮者のうちおよそ3人に1人が 「家族に知られるのが嫌」 との理由で生活保護を利用していない (調査時点現在。また、調査時点では利用していないが、過去に利用経験がある方も含む) との結果が出ています。
また、この 「利用していない方」 のうち、およそ4割が 「親族に知られることがないなら利用したい」 とも回答していることから、扶養照会の存在が生活保護の受給において大きなハードルとなっていることが分かります。
扶養照会が行われないようにするためには?
2023年現在において、扶養照会は生活保護における絶対の要件ではなくなっています。具体的には、DVや虐待の疑いがあったり、10年以上、長期の音信不通であったりするなど、扶養照会によって身の危険が生じる場合や、扶養が期待できない場合は、扶養照会を行わないことが基本となっています。
また、不必要な扶養照会が行われないように、ていねいな対応と配慮が必要だとする通達も出されています。扶養照会が行われることに抵抗がある場合はその理由を説明し、拒否する意思を明確にすることで、扶養照会が行われないようにすることも可能になりました。
扶養照会が行われるべきではないという事情があれば、しっかり説明ができるよう、生活保護の申請時には状況をまとめ、担当者からの理解が得られるように準備をしておくべきです。とはいえ、単に自身の感情の問題から扶養照会を嫌悪している程度では、扶養照会の拒否ができないのが原則です。
専門家などに相談する手もある
「自分自身では扶養照会がなされないように説明がうまくできない」 「生活保護の申請手続きにおいて、どのようにしていけば受給に至ることができるか分からない」 「自分1人で行っても窓口で追い返されてしまうのではないか?」 そのような不安がある場合は、専門家に頼むというのも手です。
弁護士や行政書士など生活保護に精通し、申請のサポートを行っている専門士業に相談することで、適切な支援を受けながら、扶養照会の阻止を含め、受給に至るまで支援を受けることができます。
とはいえ、専門家に依頼すると、例えば着手金5000円・成功報酬3万円など一定の費用を要することもあるので、その点は事前に確認が必要です。
まとめ
生活保護の受給においては、原則、扶養照会が行われます。しかし、扶養義務が期待できないなど、扶養照会をすべきでないとされる一定の場合においては、扶養照会は行われません。
扶養照会が行われないようにするためには、担当者に対して状況を正しく説明して、理解をしてもらう必要があります。しかし、担当者によっては理解を得ることが難しく感じるかもしれません。
もし自分の力だけで扶養照会を拒否することができなければ、一度、専門家へ相談してみることをおすすめします。
出典
厚生労働省社会・援護局保護課 扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について
一般社団法人つくろい東京ファンド 生活保護の利用を妨げている要因は何か? ~年末年始アンケート調査結果の概要
執筆者:柘植輝
行政書士