夫が亡くなりました。「義両親」との関係を切る際の注意点を教えてください。

配信日: 2023.11.12

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夫が亡くなりました。「義両親」との関係を切る際の注意点を教えてください。
「夫が亡くなれば夫の両親 (義両親) は他人。面倒をみることや、親族との大変な付き合いはしたくない! 」 そう考える方は珍しくありません。
 
そのようなしがらみを解消するために 「死後離婚」 によって、法律上も義両親と縁を切ろうと考える方もいるようです。そこで、死後離婚を行う際の注意点を解説します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

死後離婚の概要

死後離婚とは、配偶者の死後、その亡くなった配偶者の親族との姻族 (婚姻によって発生する親族) 関係を終了させる手続きです。
 
死後離婚は、義両親の介護を行いたくないと考える方や、感情的に義両親と縁を切って第2の人生をスタートさせたいと感じる方々が行っているようです。2022年度においては3780件も死後離婚が行われています。
 
死後離婚は、「親族関係終了届」を提出し、手続きをします。その際は手続きをする方の本籍地または、住所の市区町村役場にて行います。詳細についてはそちらへ確認してください。
 

死後離婚で財産の返還が必要になる可能性もある

死後離婚は亡くなった夫など、配偶者との関係に影響があるものではありません。そのため死後離婚をしても、夫の相続財産を妻として受けられるうえ、遺族年金も満額受けとれます。
 
例えば、相続財産3000万円を受けとり遺族年金は年間96万円受けとれるとします。死後離婚をしたとしてもそれらを得る権利はなくならないということです。
 
ただし相続にあたり、義父母を扶養することが条件である場合など、何らかの条件が付されている場合は、返還が必要になる可能性もあります。
 
例えば、遺産分割で、本来は自身が2000万円、義父母が1000万円というような相続であるところ、扶養を条件に3000万円の全額を自身が受けとるということになった場合は、相続するはずだった財産を返還することになる可能性もあります。
 

そもそも義両親に対する扶養義務はよほどでなければ課されない

夫の死後、義両親との関係を気にする理由の1つに、介護をはじめとする扶養義務の存在があるでしょう。確かに夫の両親は、義理の家族として特別な事情があれば、扶養義務が課されることもあります。しかし、基本的にはほとんどないと考えてよいでしょう。
 
例えば、妻の側に毎月100万円など充分な収入があり、義両親と同居しているなどの事情があれば、扶養義務が課されるかもしれません。また、将来、義両親を扶養することを条件に財産を渡しているような状況であれば、扶養義務が課されるかもしれません。
 
しかし、別居しており、義両親には血のつながった親族が健在などの事情があれば、扶養義務を課されることは考えづらいです。そのため、扶養義務のみを理由とするならば、わざわざ死後離婚の手続きをしなくてもよい場合もあります。
 

感情面からトラブルになる可能性もある

死後離婚は義両親に対する強い拒絶と、とらえられる可能性もあります。
 
死後離婚はこれまで続いてきた関係を法的な面から切るものです。それを知れば、現実的には今後の関わりが薄くなるとはいえ、明確な拒絶意思を示されていると、義両親の感情が刺激され、不要なトラブルをまねく可能性もあります。
 
「うちの子の相続財産を500万円も相続して死後離婚するなんて、財産の持ち逃げだ」 と言われたり 「うちの子の遺族年金を毎月10万円も受けとりながら死後離婚なんて、裏切りだ」 など、強く批判されることもあるかもしれません。
 
また、自身に子がいる場合は特に注意が必要です。自分にとっては他人の義両親であっても、子からすれば血のつながった祖父母です。場合によっては子が義両親を不憫 (ふびん) に思い、子との関係が疎遠になるおそれもあります。
 

まとめ

死後離婚は法的な面から義両親との関係を断ち切るもので、義両親側からすれば強い拒絶の意思を突きつけられているように感じられます。扶養義務については死後離婚をしないままでも、課される可能性は基本的にはありません。
 
それらをふまえると感情面から、よほど関わりを断ちたいと考えている、もしくは扶養義務を課される可能性が高いなど、特段の事情のない限り、死後離婚をわざわざ選ぶ必要はないでしょう。
 
それでも強い意志があるのであれば、義両親や子の感情面に配慮しつつ、 「受けとった財産などを返還する必要はないか」 といったような点に気を付けたうえで、死後離婚を選ぶようにしてください。
 

出典

法務省 e-Stat 戸籍統計
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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