池袋暴走事故の損害賠償「1億円超」は保険会社が支払う? 高齢者の免許返納実態についても解説
配信日: 2023.11.18
本記事では池袋暴走事故を一例として、自動車保険の概要について解説します。また、記事後半では社会問題となっている高齢ドライバーによる死亡事故についても考えていきます。
執筆者:タリトネ(たりとね)
FP2級(AFP)
自動車保険の主な種類と内容
2019年に起きた池袋暴走事故について、東京地裁が飯塚幸三受刑者および保険会社に約1億4600万円の損害賠償の支払いを命じました。飯塚受刑者がかねてより医師から運転機能の低下を指摘されていたにもかかわらず、運転を継続したことで基本的な注意義務に違反し被害者の命を奪ったため、今回の支払い命令に至ったとされます。
事故の責任の重さや社会的影響力などによって莫大な損害賠償請求になりましたが、受刑者本人はこの賠償金を支払わず、保険会社が全額支払うことになっています。この結果は自動車保険の仕組み上、飯塚受刑者と保険会社の契約内容によっては全くおかしいことではありません。
自動車保険には一体どのようなものがあるのか、意外と知られていない「自賠責保険」と「任意保険」について解説します。
自賠責保険
自賠責保険とは法律で加入が義務付けられている保険のことで、自動車を保有していれば必ず加入しなければならないものです。自動車を運転中に他人をけがもしくは死亡させた場合に、最大4000万円まで補償されます。
任意保険
自賠責保険にプラスすることで、さまざまな不測の事態に備えられる任意加入の保険です。複数の種類があり、自分の目的などに合わせて自賠責保険と組み合わせることができます。図表1が代表的な任意保険です。
図表1
三井住友海上火災保険株式会社 任意保険とは?基本の補償内容や特約、自賠責保険との違いを解説 より筆者作成
今回の池袋暴走事故に関しては、自賠責保険のみではカバーできない4000万円以上の賠償金になっていました。
しかし、大手メディア報道によると賠償金の全額を保険会社が補償するとあるため、飯塚受刑者は任意保険にも加入しており、事故にあらかじめ備えていたと考えられます。今回の事故を自分ごととして考えると、任意保険がいかに重要なのかが分かるのではないでしょうか。
高齢者の運転免許返納問題とは?
池袋暴走事故の社会的影響はさまざまありましたが、そのうちの一つに「高齢者の運転免許返納問題」があります。
事故の起きた2019年、自主返納は過去最多の60万人以上にのぼりました。芸能人が自主返納に動いたり、大手メディアによる報道が過熱したり、さまざまな副次的要因から自主返納数が増えたと考えられています。
自主返納数の停滞と反比例するように、2022年の1年間で75歳以上の高齢者による死亡事故は増加中です。警察庁交通局が公表した「令和4年における交通上事故の発生状況について」によると、死亡事故の件数は379件で、死亡事故全体に占める高齢ドライバーによる事故の割合も高くなっています。
しかし、インフラが整っている大都市圏はともかく、一定の経済圏を有する地方都市や地方町村では自動車が生活に不可欠なものになっています。
そのような自動車頼りでインフラ整備が行き届いていない地域に対して、官民一体となって何か対策を講じていく必要があるでしょう。二度と池袋暴走事故のような悲劇を起こしてはならないとはいえ、一概に高齢ドライバーに免許返納を求めるのは難しい話です。
池袋暴走事故は他人事じゃない! 高齢ドライバーはできるだけ免許返納を!
本記事はいったんの閉幕を迎えた池袋暴走事故を例として、自動車保険の概要と高齢ドライバーが引き起こしている社会問題について解説しました。
高齢ドライバーは事故を起こし加害者になってしまわぬように、少しでも身体的に不安がある場合はできるだけ早急に返納することを検討してはいかがでしょうか。
出典
警察庁交通局運転免許課 運転免許統計令和元年版
警察庁交通局 令和4年における交通事故の発生状況について
執筆者:タリトネ
FP2級(AFP)