更新日: 2019.01.10 その他暮らし

障がいを持った子を持つ親が持つ悩みは?知っておきたい大切な家族信託

障がいを持った子を持つ親が持つ悩みは?知っておきたい大切な家族信託
障がいを持った子を持つ親にとって、自分の亡きあと、子どもがどのように生きていくかは大きな悩みのうちの1つです。それを解決する方法の1つとして、「家族信託」があります。
 
家族信託は、遺言や後見を補完する仕組みで、さまざまな法律の問題点を解決してくれるものとして注目されています。
 
竹内美土璃

Text:竹内美土璃(たけうち みどり)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、企業年金基金管理士、さくら総合法律事務所・FP部門、確定拠出年金相談ねっと認定FP。
FPでありながら、ある時は夫婦問題カウンセラー、ある時は相続アドバイザーとなり、「お金と気持ちを一気に解決」することを得意とする。
法律事務所で13年間勤務して得た知識と、5年間のファイナンシャルプランナーとしての実績で、「お客様を幸せで豊かな未来へ導く案内人」として定評が高い。
1972年生まれ。愛知県豊田市出身。現在は、名古屋市在住。

信託って何?

信託とは、「財産を持っている人(委託者)が、自分が信頼する人(受託者)に財産を託して、定められた目的(信託目的)にしたがって財産を管理・処分してもらい、財産から得られる利益を定められた人(受益者)へわたす仕組み」のことです。
 

障がいを持った子を持つ親が持つ悩みは?

山田家(仮称)の事例を紹介します。山田さんの家庭を元に一緒に考えていきましょう。
 
山田太郎(仮称)さんは、現役時代は大手電機器具メーカーのサラリーマンで、姫子(仮称)さんは専業主婦をしていました。太郎さんと姫子さん夫婦には一人息子の望君がいます。その望君には生まれつきの障がいがありました。その障がいのため、望君は自分では財産管理ができません。太郎と姫子さんは、自分達が年をとり、自分の亡きあとの障がいを持った子どもの将来をとても心配していました。
 
もちろん今は、太郎さんと姫子さん夫妻が元気なので、息子の望君の世話をすることができています。ところが、今この瞬間でも交通事故に遭う可能性だってあります。万が一どちらかが倒れてしまったり、自分たちが亡くなってしまったりしたあと、一人息子である望君のことをとても心配しています。
 
また、太郎さん姫子さん夫妻には十分な財産がありました。望君が生まれつき障がいがありましたので、望君の将来を案じ、贅沢もせず望君のために一生懸命貯蓄をしました。貯めたお金は、太郎さんと姫子さんが亡くなったあと、自分たちが残した遺産を使って望君が不自由なく暮らしていって欲しいと考えています。
 
そして、もし、望君が亡くなった時点で財産が残った場合は、望君をお世話してくれた親族や望君がお世話になった福祉施設、あるいは障がいを持った子どもたちに寄付するなどしたいと考えています。ただ、望君には財産管理をする能力がないので、それが可能かどうか心配していました。
 

障がいを持った子を持つ親の不安を解説

親御さんが、自分たちが亡くなったあとにお子さんが生活するのに十分な財産を残しても、そのお子さんに判断能力がなければ、悪い人に財産を取られてしまうかもしれません。
このケースの場合、望君に成年後見人がついていれば、後見人が望君に代わって財産を管理してくれます。
 
しかし、望君は遺言を作成することができません。この場合は、相続人もいないので、亡くなった後、財産は原則として国庫に帰属してしまいます。
 
仮に信託を利用すれば、太郎さんと姫子さんが亡くなったあとも、信託行為に従って受託者である次郎さん(このケースでは望君の従妹)が、財産を望君のために使用してくれますし、望君が亡くなったときに信託を終了させて、残った財産をもらう人(残余財産帰属権利者や残余財産受益者)を定めておけば、その人に財産を承継させることができます。
 

 

信託による解決方法はどういうもの?

まず太郎さんが委託者となり、信頼できる親戚の次郎(このケースでは望君の従妹)を受託者(お金を預かっている人)にして、太郎さんと姫子さん夫妻が亡くなったあとに、望君が受益者(お金を受け取れる権利のある人)となる信託を組みます。
 
その際には、弁護士のような専門家を信託監督人や受益者代理人に指定しておきます。そうすれば、受託者次郎が勝手に財産を使ってしまったりして、障がいを持った望君が損害を被ることも回避できます。
 
さらに望君が亡くなったあとの残余財産については、その財産をもらう人(帰属先)を、親族や姫子さんがお世話になった福祉施設や障がい者施設にしておけば、障がいを持った望君が遺言を作ったのと同じ効果をあげることができます。親御さんにとっては、最後のお礼や、社会貢献もできますよね。
 

まとめ

太郎さんは信託を組まれたあと、「本当は、自分と一緒にこの子をあの世に連れて行かないといけないかな、と思ったこともありました。でもそれができないから、本当に困りました。せめて私たちの亡きあと、子どもが不自由なく健やかに、穏やかに、迷惑をかけないように生きて行ってもらいたいから、一生懸命お金を貯めました」と涙ながらに語っていました。
 
家族信託を組んだことにより、不安が完全になくなるとは言い切れません。しかし、より良い方法として、太郎さん姫子さん亡きあとの解決方法も見つけることができ、今ではほっとしているとのことでした。
 
「家族信託に出合えてよかった。これが望と同じような子どもを持つ親の、親なきあと問題の救世主となってくれる」と、安心されていました。
 
Text:竹内 美土璃(たけうち みどり)
CFP(R)認定者

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