更新日: 2023.11.28 子育て
男性の育児休業の際、社会保険料免除で気を付けることとは?
育児休業中は、健康保険・厚生年金保険の保険料が事業主負担分・被保険者負担分ともに免除されます。しかしながら、2022年10月より免除の要件が見直され、育児休業しても免除されないこともあるので注意が必要です。
執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
育児休業中の保険料免除要件
産後パパ育休は、育児休業制度とは別に、子の出生後8週間の期間内に4週間以内の休業を取得できる制度です。就労しながら分割取得が可能となり、育児休業が柔軟に取得できるようになりました。
2022年10月から、社会保険料の免除要件が見直され、月の就労日数や月末に育児休業の取得状況で、社会保険料が免除になるかどうか変わってきます。また、毎月の給与から控除される月額保険料と賞与から控除される賞与保険料とでは考え方が違います。
月額保険料の免除要件
これまでの保険料免除要件は、育児休業等を開始した日が属している月から終了日の翌日が属している月の前月まで、月額保険料が免除されます。社会保険は月単位で考えるため、月末に在職しているかどうかで決まります。
例1:10月25日~11月10日まで産後パパ育休を取得した場合
育休終了する日の翌日(11月11日)が属する月の前月である10月分の保険料は免除になりますが、11月復職しているため免除となりません。
新たに2022年10月から、育児休業等の開始日が属している月内に、14日以上の育児休業等を取った場合、当該月の月額保険料が免除されます。休業している期間中に就業予定日がある場合、当該就業日は除きます。また、土日等の休日は期間に含まれます。
例2:10月5日~10月25日まで産後パパ育休を取得した場合
育休開始月、10月に14日以上の育児休業を取得しているため、月末に復職していても10月分の保険料が免除となります。
賞与保険料の免除要件
賞与保険料は、賞与を支払った月の末日を含んだ連続した1ヶ月を超える育児休業等を取った場合、免除されます。1ヶ月を超えるかは暦日で判断し、土曜日・日曜日等の休日も期間に含まれます。
例3:賞与支払日が12月15日、育児休業開始日が12月20日~育児休業終了日が1月25日の場合、1ヶ月超であるため、賞与保険料が免除されます。
例4:賞与支払日が12月15日、育児休業開始日が12月20日、休業終了日が1月10日では、1ヶ月を超えていないため、賞与保険料は免除となりません。
育児休業の分割取得ができるようになりましたが、育児休業の期間や取得日のタイミングによって、免除になるかどうかが変わってくるので、注意が必要です。
保険料免除から育児休業を考える
厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」における男性育休取得率は17.13%です。子の出生時から育児休業を取得しやすくなりましたが、政府が掲げる目標値が2025年までに30%から50%と大幅に引き上げられましたが、現状の取得率から考えると大きく開きがあります。
男性の制度利用が促進しなければ、女性に子育ての負担がかかり、女性が復職しても、仕事を継続していくことが難しくなり、少子化の歯止めや女性の社会進出が進まず、従前と変わらない状態が続くのではと危惧されます。
法整備が進む中、育児休業取得を後押しする制度の1つに保険料の免除があるとするならば、制度をよく理解し、賢く利用することをお勧めします。
出典
厚生労働省 産後パパ育休(出生時育児休業)が10月1日から施行されます
日本年金機構 令和4年10月から育児休業等期間中の社会保険料免除要件が見直されます。
厚生労働省 育児・介護休業法の改正について
内閣官房 「こども未来戦略方針」 〜次元の異なる少子化対策の実現のための「こども未来戦略」の策定に向けて〜
厚生労働省 令和4年度雇用均等基本調査
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士