更新日: 2023.12.14 子育て

年収500万円の世帯なら、幼保・高校授業料の無償化で教育費はどのくらい安くなるのでしょうか?

年収500万円の世帯なら、幼保・高校授業料の無償化で教育費はどのくらい安くなるのでしょうか?
子育てには養育費や教育費といった出費がかかります。その経済的負担を軽減するために「幼児教育・保育の無償化」や「高校等の授業料の無償化」などといった制度があります。これらの制度によって、どのくらい教育費の負担が軽減されるのかを解説します。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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幼児教育・保育の無償化とは

幼稚園や保育所(通称は保育園)などの利用料が無料となる「幼児教育・保育の無償化」の制度は、2019年10月1日から始まりました。
 
対象となる施設は幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育、企業主導型保育事業と幅広く、また、幼稚園の預かり保育や、都道府県等に届出を行い国が定めた基準を満たした認可外保育施設なども対象となっています。
 
また、無償化の対象となるのは原則として施設の利用料(保育料)です。それ以外の給食費や送迎バス代、行事費用、延長保育料費用、制服・教材費、PTA会費などがある場合、それらは自己負担となります。幼稚園・保育所などにかかる費用の全てが無償化の対象となるわけではないので注意しましょう。
 
なお、幼児教育・保育の無償化には所得制限はありません。対象年齢の子どものいる家庭全てが対象となります。
 

幼児教育・保育の無償化でいくらまで負担は軽減される?

利用料(保育料)の無償化の対象は、利用施設やサービス、また住民税非課税世帯かどうかによって変わってきます。図表1に軽減額をまとめてみました。
 
図表1

利用する施設やサービス 0歳~2歳 3歳~5歳
幼稚園 無料
(新制度未移行の幼稚園等は月額上限2万5700円までが無料)
幼稚園の預かり保育 利用日数×450円と預かり保育の利用料を比較し小さい方、最大月額1万1300円までが無料
保育所
認定こども園
地域型保育
住民税非課税世帯は無料 無料
企業主導型保育事業 住民税非課税世帯は標準的な利用料※を減額 保育の必要性のある子どもたちについて、標準的な利用料を減額
認可外保育施設
一時預かり事業
病児保育事業
ファミリー・サポート・センター事業
住民税非課税世帯は月額4万2000円までが無料 月額3万7000円までが無料

 
※企業主導型保育の標準的な利用料:4歳児以上/2万3100円、3歳児/2万6600円、1・2歳児/3万7000円、0歳児/3万7100円
※こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」より筆者作成
 
幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育の無償化の期間は、原則満3歳になった後の4月1日から小学校入学前までです。ただし、幼稚園については、入園できる時期に合わせて満3歳から無償化の対象となります。
 
なお、幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育を利用する年収360万円未満相当世帯と全世帯の第3子以降は、副食(おかず・おやつなど)の費用も免除されます。また、就学前の障害児の発達支援を利用する子どもについては、3歳から5歳までの利用料が無料となります。
 

0歳~2歳までの第2子以降も無償化対象となる場合も

子どもが2人以上いる世帯が保育所、認定こども園、地域型保育を利用する場合、保育所等を利用する最年長の子どもを第1子と数え、0歳から2歳までの第2子は半額、第3子以降は利用料が無料となります。
 
なお、年収360万円未満相当の世帯については、第1子の年齢は問われません。そのため、例えばすでに小学校以上に就学している第1子がいても、0歳から2歳までの第2子以降が保育所、認定こども園、地域型保育を利用する場合、第2子は半額、第3子以降は利用料無料の対象となります。
 

幼児教育・保育の無償化のための手続き

無償化の制度の対象となっている幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育を利用している場合は、無償化の対象になるため手続きは必要ありません。ただし、制度の対象とならない幼稚園については、無償化となるための認定や、市町村によっては償還払いの手続きが必要な場合がありますので、住んでいる市町村への確認が必要です。
 
また、幼稚園の預かり保育、認可外保育施設、一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業を利用する際に、無償化の対象となるためには、住んでいる市町村から「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。
 

高校等の授業料無償化とは

高校等の授業料無償化とは、国の「高等学校等就学支援金制度」により、国公私立問わず高校の授業料が実質無償となるようにする制度のことです。ただし、世帯所得や通う学校により、支給の有無や金額が異なってきます。
 

就学支援金の支給額

公立高校では、全日制は月額9900円、定時制は月額2700円、通信制は月額520円、 私立高校では、全日制・定時制・通信制ともに月額9900円に加えて最大で月額2万3100円の加算額が支給されるといったように、通う学校によって支給額は異なります。また、世帯年収によっても支給額の上限が変わってきます。
 
図表2は、月額を年額に換算したときの支給上限額のイメージです。
 
図表2


出典:文部科学省 高等学校等就学支援金制度リーフレット
 
図表2によれば、年収590万円までが私立高校などの支給加算される対象の目安、910万円までが就学支援金の支給される対象の目安となっていました。これは両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合の目安となっています。
 
実際には、以下の計算式によって求められた算出額に基づいて支給額が決まります。
 

(計算式)市町村民税の課税標準額×6% - 市町村民税の調整控除の額
 
・算出額が15万4500円未満の場合、支給額は最大39万6000円
・算出額が15万4500円以上30万4200円未満の場合、支給額は11万8800円

 

年収500万円世帯での教育費負担軽減

ここまでは、幼児教育・保育の無償化と、高校等の授業料無償化について解説してきました。例として、年収500万円世帯では、それらの無償化によりどのくらい教育費負担が軽減されるか、簡単に試算してみます。
 
図表3:幼稚園・保育所などで無償化の対象となる保育料の相場

公立幼稚園 1万円~2万円程度
私立幼稚園 1万円~3万円程度
保育所 1万円~8万円程度
認可外保育施設 1万円~5万円程度

※保育料は世帯所得や居住地域、子どもの年齢・人数、保育時間などで大きく異なります
※文部科学省令和3年度子供の学習費調査、横浜市保育料、厚生労働省令和3年地域児童福祉事業等調査結果の概況(認可外保育施設の状況)などより筆者作成
 
3歳から小学校就学前までの3年間は、上記相場から月3万円程度を無償化によって負担軽減されたものとします。また、高校は私立高校に進学したものとして、無償化対象の授業料について上限である年間39万6000円の負担軽減を3年間受けたとします。
 
結果、幼児教育・保育の無償化によって108万円(月3万円×12ヶ月×3年)、高校等の授業料無償化によって118万8000円(39万6000円×3年)、合計226万8000円もの教育費の負担軽減を受けられることになります。
 

まとめ

無償化によって負担軽減される部分もありますが、世帯年収によっては0歳から2歳の子どもの教育費の負担や、高校等の授業料負担が、必ずしも軽減されるとは限りません。また、学校にかかる教育費以外にも、習い事なども比較的金額が大きくなりがちです。
 
「気が付いたら教育費の出費が大きくなり過ぎていた」ということがないように、生活費や住まいにかける費用、老後に備える貯蓄といったその他の費用とのバランスをとりながら、教育費をしっかり計画しましょう。
 

出典

こども家庭庁 幼児教育・保育の無償化概要
文部科学省 高等学校等就学支援金制度リーフレット
文部科学省 令和3年度子供の学習費調査
横浜市 令和5年度横浜市子ども・子育て支援新制度利用料(保育料)
厚生労働省 令和3年地域児童福祉事業等調査結果の概況(認可外保育施設の状況)
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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