クルマが電気を供給する日。いよい快適な電気ライフが!

配信日: 2017.05.16 更新日: 2021.05.17

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クルマが電気を供給する日。いよい快適な電気ライフが!
京都大学発のベンチャー企業GLM(京都市・小間裕康社長)が、国産で初めての電気自動車(EV)スーパーカー「GLM G4」を公開しました。2019年から量産化の予定で、「路上を走るヨット」をイメージしたそうです。
「日本テクノロジーのショーケース」を目指したというG4の性能は、専用高出力モーター2基を搭載した4人乗り。四輪駆動車で最高出力は400kW(540馬力)、発進から時速100kmまでの到達時間が3・7秒とパワーは抜群です。最高時速は250kmで航続距離は400kmを実現しています。米国の先進企業「テスラモーターズ」との差別化を狙うとのこと、G4スーパーカーが世界中を疾走する日が楽しみです。
電気自動車の技術進歩が電力ネットワーク技術と融合する!深いつながりと電気自動車が電力供給を担う近未来を考えてみます。
藤森禮一郎

執筆者:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

気まぐれな再生エネルギーを電気自動車が解決

太陽光や風力などの再生可能エネルギーはエコな電気ですが弱点があります。日照時間や風の強さなど自然条件により電気の出力が変動することです。気まぐれで不安定ゆえに再生エネルギー導入拡大のネックになっていますが、このネックをエコカーの電気自動車(EV)が解決してくれるというのです。EV用の蓄電池(バッテリー)を使えば、安定した電気に変換でき、電力ネットワークにつながるというのです。
仕組みはこうです。屋根上の太陽光発電をEVのバッテリーに蓄電し、必要な時に取り出して使うのです。太陽光は昼間だけしか発電しませんが、家族が集まる夜間でも電気が使えます。この需給の時間的なミスマッチ状態を解消する役割をバッテリーに任せ、電力会社から購入する系統電気とコラボレーションできれば、脱炭素時代に相応しい快適な電化社会を構築できます。
コラボレーション効果はバッテリーの数が増えれば倍増します。多数のバッテリーをICT技術で一括管理し、電力の需給状況に合わせて出力をコントロールすれば地域単位で安定した電力の供給ができます。

仮想発電所(バーチャルパワープラント=VPP)が注目!

EVバッテリー群をシステム化して安定した電力を供給しようという試みがあちこちで始まっています。バッテリー群に「発電所並みの需給調整機能」を期待するこのような新しい電力システムを仮想発電所(バーチャルパワープラント VPP)と呼んでいて世界的にも注目されています。米ハワイ州では風力発電と電気自動車を組み合わせたVPP実証実験が行われていますし、わが国でも各地で実証実験が始まっています。
「脱炭素化」は世界の潮流です。ガソリン車やディーゼル車が走れない社会に移行しつつあります。グローバルに低炭素化実現に取り組む国連の新たな枠組み「パリ協定」が昨年末に締結されました。地球の平均気温上昇を産業革命前に比べ2℃以下に抑制することを目標に掲げ世界196か国・地域が参加しています。今世紀末までに温暖化の原因物質CO2の排出量ゼロを達成することが目標です。

国内でも電気自動車の実用化が加速!

世界は「脱炭素社会の実現」に向かい始めました。この動きを受けて、自動車産業はいま脱炭素社会に向けて抜本的な対策が求められています。その一つが電気自動車の普及と新しいコンセプトカーの開発です。
国内の自動車メーカーもトヨタプリウス、日産リーフ、三菱ミーブなど電気自動車を実用化しています。人工知能(AI)技術の開発と相まって車種は年々増えてきています。どのような種類があるのでしょうか。電気自動車は次の3つに分類できます。
1)燃料電池車(PCV)
動力=モーターと燃料電池、・必要な動力エネルギー=水素、・補給方法=水素ステーション。
2)電気自動車(EV)
動力=モーターと蓄電池、・必要な動力エネルギー=電気、・補給方法=家庭の電源または充電スタンド。
3)ハイブリッド車(PHV)
動力=モーターとエンジン、・必要な動力エネルギー=電気とガソリン、・補給方法=家庭の電源とガソリンスタンド。

日・独・米が蓄電池技術開発に凌ぎを削る

電気自動車3種類、それぞれの違いを見てみます。
燃料電池車(PCV)は、燃料の水素を調達する方法に課題があります。天然ガスや石油を改質して水素を取り出していますが、製造過程でCO2を排出しては脱炭素に反してしまいます。まだ開発途上で、究極は再生可能エネルギーを使った水素製造です。
ハイブリッド車(PHV)は、電気自動車(EV)とは兄弟で、PHVはバッテリーの性能不足をエンジンが補っています。家庭の電源コンセントや街中の充電ポストで充電しますが、やはり究極は再生可能エネルギー電気での充電です。
世界市場では日・独・米の自動車メーカーは「再生可能エネルギーで走る電気自動車」を目標に、蓄電池技術開発に凌ぎを削っています。とりわけ充電・放電が容易で高性能かつ安価な蓄電池の実用化が期待されます。
太陽光発電やマイカーを持たない人にもチャンスはあります。
電力自由化が進んだ脱炭素社会では、太陽光発電も風力発電も蓄電池も、設備を皆でシェアする新たなエネルギービジネスが起業されてくると思います。事業ベースでも、電気をいかに効率よく貯めるか蓄電池方式、空気圧縮方式、揚水発電方式など「蓄電技術」の開発が進んでいます。蓄電池は脱炭素社会実現には欠かせないキー技術ですからね。

課題は「回収バッテリー」

脱炭素社会のもう一つの課題は「回収バッテリー」です。廃棄物扱いか再利用の道か、対策はこれからです。幸いなことに、電力分野には再利用の道が開かれつつあります。回収バッテリーを数十台単位で変電所構内に設置すれば、安価な事業用蓄電池として再利用できます。トレーラー積み込んで再利用すれば、災害時の簡易型「移動電源」として活用できます。配電線事故が復旧するまでの間、緊急電源として役立ちます。
バッテリーは一定の走行距離か期間(現行5年)を過ぎれば取り換えるルールがあります。専門家によると回収バッテリーには70~80%の性能が残っており廃棄するのはもったいない、電力向けにも再利用は十分可能だとのことです。

米テスラモーターズVS日本GLM。EVスーパーカー競争の出現で、既存自動車メーカーも巻き込んだ電気自動車の開発競争が一段と加速しそうです。再生可能エネルギーとEVがコラボレーションし快適な電気ライフを送れる日がいよいよ視野に入ってきました。

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