離婚後の厳しい懐事情の現実を確認し、お金の準備をしっかりしよう

配信日: 2023.12.25

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離婚後の厳しい懐事情の現実を確認し、お金の準備をしっかりしよう
離婚後は厳しい経済状況に直面します。離婚を考えたら離婚に伴うお金や経済的支援制度について知って活用することが大切です。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

離婚は誰にでも起こり得る

厚生労働省の調査によると、2020年の離婚件数は約19万3000組、婚姻件数は約52万5500組です。単純に計算して3組に1組が離婚したことになります。離婚件数の年次推移を見ると、過去最高だった2002年の約29万件をピークに2003年以降は減少傾向が続いていますが高い水準で推移しています。
 
離婚した夫婦の同居期間を見ると、同居期間が「5年未満」の割合は、1996年・1997年の40.1%をピークに低下傾向となっています。一方、同居期間が「20 年以上」(熟年離婚)の割合は、1950 年以降、ゆるやかな上昇傾向にあり、2020年には 21.5%となっています。いまや離婚は誰にでも起こり得ることです。
 

離婚後の経済的事情

離婚後は経済的に厳しい状況が待っています。厚生労働省がひとり親家庭に行った調査によると、2020年度、母子世帯は119.5万世帯、父子世帯は14.9万世帯です。
 
就業状況は母子世帯が86.3%、父子世帯が88.1%とほぼ同じです。しかし、内訳を見てみると、「正規の職員・従業員」は父子世帯が69.96%なのに対し、母子世帯は48.8% です。「自営業」は父子世帯が14.8%なのに対し、母子世帯は5.0%、「パート・アルバイト等」は父子世帯が4.9%なのに対し、母子世帯は38.8%となっており、母子世帯の就業状況が父子世帯に比べ低いことが見てとれます。
 
実際、母自身の平均年間収入は272万円(母自身の就労収入は236万円)、父自身の平均年間収入は518万円(父自身の就労収入は496万円)、同居親族を含む世帯全体の収入を見ても母子世帯は373万円、父子世帯は606万円と、収入面でも母子世帯は父子世帯に比べ大きな格差が生じています。
 
子どもが生活する上で必要な養育費について見ると、「養育費の取り決めをしている」 母子世帯は 46.7%、父子世帯は28.3%です。受給状況に関しては「養育費を現在も受給している」母子世帯は28.1%で養育費の平均月額は5万485円です。一方、父子世帯は8.7%で、平均月額は2万6992円となっています。
 
就労収入が低く、養育費の受給割合の低い母子世帯では離婚後の厳しい生活が待ち受けています。特に、専業主婦やパート勤務だった人の場合、離婚前から仕事のスキルアップを図るため資格を取得するなど経済的自立に備えることが大切です。
 

離婚に伴うお金

離婚の際や離婚後に発生するお金には、主に別居のときに支払われる「婚姻費用」、未成年の子どもがいる場合の「養育費」、夫婦が協力して築き上げた財産を精算する「財産分与」、精神的苦痛に対する損害賠償である「慰謝料」などがあります。
 
このうち、「財産分与」は離婚後2年以内、「慰謝料」は離婚後3年以内に請求しないと時効により権利が消滅しますので注意しましょう。
 
できれば、これらは離婚に際しきちんと取り決め、取り決めた事項については、強制執行できるように「執行認諾文言付公正証書」にしておくといいでしょう。
 

離婚後に受けられる経済的支援制度

ひとり親家庭が受けられる代表的な経済支援制度に「児童扶養手当」があります。18歳に達する日以降の最初の3月31日までにある子ども(一定以上の障害の状態にある場合は20歳未満)を養育しているひとり親家庭に支給されます。
 
受給者の所得制限のほか同居の扶養義務者についても所得制限があり、全額支給(所得制限額未満)では、子ども1人の場合、月額4万4140円支給されます。一部支給の場合、所得に応じて月額4万4130円から1万410円支給されます。子ども2人以降は加算があります。
 
なお、養育費を受け取っている場合はその8割が受給者の所得として算入されますので知っておきましょう。
 
さらに、東京都には「児童育成手当」があります。受給者のみに所得制限が設けられており、限度額は「児童扶養手当」よりも高く設定されています。支給額は子ども1人につき月額1万3500円です。
「児童手当」「児童扶養手当」「児童育成手当」は併給できます。
 
また、ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)も利用でき、父母または子どもの医療費の自己負担の助成を受けることができます。
 
このほか、水道料金の減免やJR通勤定期券の割引、公営住宅の優先入居、ホームヘルパーの派遣、所得税・住民税の軽減(ひとり親控除)などが利用できます。
 
また、市区町村には無利子または低利で借りることができる「母子父子寡婦福祉資金貸付制度」があります。
 
資金の種類は、(1)事業開始資金、(2)事業継続資金、(3)修学資金、(4)技能習得資金、(5)修業資金、(6)就職支度資金、(7)医療介護資金、(8)生活資金、(9)住宅資金、(10)転宅資金、(11)就学支度資金、(12)結婚資金の計12種類があります。
 
資金不足を賄うにはこのような福祉の貸付金を活用するとよいでしょう。金利の高い消費者金融などは避けましょう。
 

スキルアップのための支援制度

収入を増やすには、資格取得も有効な方法です。ひとり親の方が看護師などの資格取得を目指して修業する期間の生活費として、訓練期間中毎月10万円を、訓練終了後5万円を支給する制度として「高等職業訓練促進給付金」があります。
 
また、雇用保険の受給資格のないひとり親の方には、雇用保険の教育訓練給付金と同じ内容の自立支援教育訓練給付金があります。講座受講修了後、経費の60%が支給されます。
 
詳細はお住いの自治体にお問い合わせください(制度を実施していない自治体もあります)。
 

まとめ

ひとり親家庭でも母子家庭の経済状況は大変厳しい状況にあります。国や自治体はひとり親家庭向けに、さまざまな支援制度を設けています。利用には申請が基本です。お住まいの自治体のホームページや自治体が発行している「ひとり親家庭のしおり」などでどのようなサービスを受けられるか確認し、上手に利用しましょう。
 

出典

厚生労働省 令和2年(2020) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
厚生労働省 令和4年度 離婚に関する統計の概況
厚生労働省 こども家庭庁 令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果の結果を公表します
こども家庭庁 ひとり親家庭等関係
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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