更新日: 2023.12.25 その他暮らし
遺児家庭の進学支援制度はありますか?
この記事では遺児家庭の代表的な進学支援制度について、あしなが育英会と交通遺児育英会の奨学金について解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
あしなが育英会 奨学金
あしなが奨学金は、病気や災害(交通事故以外)、自死(自殺)などで親を亡くした子どもたちや、親が重度後遺障がい(※)で働けない家庭の子どもたちが対象です。
※著しい障がいとは、以下の障がい認定を受けている場合をいいます。
身体障害者福祉法、国民年金法、厚生年金保険法施行令、精神保健および精神障害者福祉に関する法律、労働者災害補償保険法施行規則に定める第1級から第5級
奨学金の貸与部分は入学一時金も含め、交付が終了して6ヶ月後から20年以内に、年に1回(12月)、半年に1回(12月・6月)、または毎月返還のうち、いずれかの方法により無利子で返還します。
返還が困難になった場合は願い出により、その期間の返還を猶予できます。
申請時や返還時の連帯保証人は保護者(祖父母等の含む)でかまいません。さらに、他の奨学金と同時に利用できます。入学前に申請する「予約募集」と入学後に申請する「在学募集」があります。
高校: 国公立・私立とも月額3万円(給付)
大学: 一般は月額4万円(貸与)
大学: 特別は月額5万円(貸与)
専門学校:月額4万円(貸与)
大学院:月額8万円(貸与)
私立高校入学一時金:30万円(貸与)
私立大学入学一時金:40万円(貸与)
進学支度一時金 30万円(給付)
(出典:一般財団法人 あしなが育英会「奨学金について」)
また、あしなが育英会では生活保護家庭であっても、首都圏や関西圏の私立大学にも進学できるように学生寮「あしなが心塾」(東京都日野市)、「神戸レインボーハウス」(兵庫県神戸市)を設置、運営しています。塾生の負担は光熱費などを含め、朝夕の2食付きで月額1万円で利用できます。
ベッド、机、ワードローブなどは1人ずつに備え付けられています。共有設備は大浴場、洗濯室、食堂、自習室、談話室などです。全館冷暖房完備です。
塾生には、「読み・書き・スピーチ」や「海外留学制度」などさまざまなカリキュラムがあり、「暖かい心・広い視野・行動力・国際性」を兼ね備えた、広く人類社会に貢献する人材の育成に努めています。
交通遺児育英会 奨学金
交通遺児育英会は、保護者が道路上の交通事故が原因で死亡したり、重度の後遺障がい(※)のため働くことができず、経済的に修学が困難になった子どもたちに奨学金を無利子で貸与(一部給付)して、高校や大学などへの進学を支援するものです。
(1)身体障害者福祉法(身体障害者手帳)の第1級から第4級
(2)自動車損害賠償保障法施行令別表第1および第2の第1級から第7級
(3)精神保険および精神障害者福祉法(精神障害者手帳)の第1級から第3級
入学前に申請する「予約募集」と入学後に申請する「在学募集」があります。他の奨学金との併用が可能です。保護者の収入条件があります。学力基準はありません。
無利子で一定額が無利子で貸与(一部給付)されます。たとえば、専修学校専門課程、大学・短期大学、高等専門学校4・5年生は、月額4万円(うち2万円給付)、5万円(うち2万円給付)、6万円(うち2万円給付)から選択します。また、希望者は入学一時金として、40万円、60万円、80万円から選択できます。
返還は最長20年、月賦払・半年賦払・年賦払から選択します。卒業等、貸与終了後6ヶ月据え置きし返還を開始します。なお、上級学校への進学等の場合、申請により卒業まで返還を待つ制度があります。
また、交通遺児育英会では、生活保護家庭であっても、首都圏の私立大学にも進学できるように学生寮「心塾」東京寮(東京都日野市)・所沢寮・武蔵境寮があります。また、関西地域の大学・短大・専門学校に進学する交通遺児のために、「心塾」関西寮があります。
東京寮には、男女専用棟が3棟あります。居室には家具が一式そろっているうえに、防音が施され、冷暖房完備の約7.5畳の1人部屋となっています。このように、生活するためのグッズが用意されていますので、着替えさえあればすぐに住み始めることができるようになっています。月額1万円 (朝夕2食、水道光熱費込み)で利用できます。
また、東京寮では、文章講座・スピーチ講座・読書感想文講座・パソコン講座・英会話講座など、就職活動などに役立つ講座を実施しています。
その他、奨学生を対象とした給付制度(修学支援金)もあります。修学支援金には、「家賃補助」「上級学校進学受験費用補助」「普通自動車第一種運転免許等取得費用補助」などがあります。
今回は遺児家庭が利用できる支援制度をご紹介しました。支援が必要な家庭は、ぜひ活用しましょう。
出典
あしなが育英会記者発表資料
一般財団法人 あしなが育英会
公益財団法人 交通遺児育英会
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。