更新日: 2023.12.26 その他暮らし
マンション老朽化問題、他人ごとではありません!
老朽化マンションの何が問題でどのような解決策があるのか、検討されている区分所有法制の見直しについても見ていきましょう。
執筆者:篠原まなみ(しのはら まなみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士
外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。
マンション戸数
毎年新しいマンションが着工されており、2021年だけでも10.3万戸のマンションが新たに着工されました。首都圏の2021年のマンションの販売戸数は3万3636戸、平均販売価格は6260万円とじりじりと高値に推移をしています※1。一方、高度成長の時に建てられた築40年以上のマンションは、2022年末で約125.7万戸存在します。そして今後、10年後には約2.1倍、20年後には約3.5倍に増加する見込みです※2。
マンション老朽化でどのようなことが起きているのか
通常、分譲マンションには部屋の所有者全員からなる管理組合があります。管理組合の加入は、義務であり、面倒だから加入しないというわけにはいきません。管理組合が機能していれば、総会や理事会が適切に運営され、適宜、大規模修繕が行うなどして管理をしっかりすることでマンションの資産価値を下げないようにすることができます。
ところが、老朽化マンションが建てられた当時は、将来を見据えた修繕の計画や管理という考えが広がっておらず、管理組合自体がないマンションが数多くありました。そのため、適切な維持管理が行われないまま時がたち、外壁の劣化や鉄筋の露出等の建物の老朽化による不具合が起きています。なかには、外壁が剥落し居住者や近隣住民等に生命・身体に危険を及ぼす問題が発生するといった例も報告されています。
老朽化すればするほど修繕費は増えていくのに対して、高齢化した住民は、年金生活者が多く、費用を捻出できないというジレンマが発生しています。さらに、1981年以前に建てられた旧耐震性基準のマンションは、コンクリート性能から鉄筋の量、施工法が異なっているため、大きな地震に対する耐力が低いというリスクもあります。
区分所有法の見直し
適切に管理されなかった老朽化マンションは、入ってくる入居者はいないのに、高齢化した住民は施設に入るために転居したり、亡くなったりして減っていき、最後には空室化の増加によりスラム化・廃虚化します。そのようなマンションはもはや建て替えるか売却する(以下、建て替え等)しかないのですが、1963年に施工された区分所有法では、マンションの老朽化によっておこるさまざまな問題は、想定されていませんでした。
近年では、相続のタイミングで所有者が不明になる事例や、建て替え等に必要な賛成者が集まらないことが問題になっています。そこで政府は、決議要件を緩和するなど今よりも容易に建て替え等を行えるよう、2024年の通常国会に提出することを目指して区分所有法改正案について議論を重ねています。
まとめ
マンションの寿命は、どのくらいなのでしょうか。マンション(鉄筋コンクリート造の建物)の法定耐用年数は、1998年の税制法制によって47年と定められています※3。これは毎年減価償却をしていき、最終的に償却がゼロ=建物の価値がゼロになるのが47年ということですが、実際には、こまめなメンテナンスと周期的な大規模修繕を行うことで寿命を延ばすことができます。
それには、管理組合が機能していることと、いざ大規模修繕を行う時に十分な積み立てがされていることが必要です。国では老朽化マンションの周囲への悪影響を重く見ていて期間限定で、長寿命化工事が実施された場合に、その翌年度に課される建物部分の固定資産税額が減額されるマンション長寿命化促進税制を創設し※4、各自治体において運用がされています※5。
決して人ごとではない、マンションの老朽化問題に目を向けてみてはいかがでしょうか。
出典
(※1)国土交通省 令和4年度 住宅経済関連データ
(※2)国土交通省 築40年以上のマンションストック数の推移
(※3)国税庁 耐用年数(建物/建物附属設備)
(※4)国土交通省 マンション長寿命化促進税制が創設されます!
執筆者:篠原まなみ
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者