更新日: 2023.12.26 その他暮らし

社会保険料が高いんですが、一体何に使われているのでしょうか?

執筆者 : 伊藤秀雄

社会保険料が高いんですが、一体何に使われているのでしょうか?
給与から天引きされる金額を見て、「いったい何でこんなに高いの?」とため息をつく方も少なくないでしょう。今回は、給与から多く天引きされる「社会保険料」がいったい何に使われているのか、確認してみましょう。
伊藤秀雄

執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)

FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。

社会保険の種類

まず、給与から天引きされる「社会保険料」にはどんな種類があるのか、確かめましょう(※1)。
 
1.医療保険、年金保険、介護保険
これらは狭義の社会保険とも呼ばれます。民間会社で社会保険制度に加入している場合、医療保険は「健康保険(全国健康保険協会または健康保険組合)」、年金保険は「厚生年金保険」です。
 
2.雇用保険
広義の社会保険に含まれ、労災保険とともに「労働保険」とも呼ばれます。なお、労災保険の保険料は事業主のみ負担するため、給与天引き(控除)されるのは労災保険以外の4種類です。
 

社会保険料の金額と負担

毎月、給与控除される4種類の社会保険料を、標準報酬月額が36万円の会社員の場合で計算しました。なお、健康保険は全国健康保険協会の東京都の保険料率を適用しています(※2,※3)。
 
表1

表1

 
給与の15%程度ですから、せっかく納めるなら何に役立つのか理解しておきたいものです。また、これらの社会保険料は賞与からも控除されます。
 

社会保険料の使い道

これらの社会保険料は、次の給付やサービスに使われています。


・健康保険料   : 業務外のけが ・病気・出産・死亡に対する給付
・介護保険料   : 要介護・要支援状態に対する介護サービス
・厚生年金保険料 : 老齢・障害・死亡に対する給付
・雇用保険料   : 失業・育児・介護・教育訓練等に対する給付

主な給付やサービスの概要を確認していきます。金額は2023年4月現在のものです。いずれも支給要件を満たすものとします。
 

1.健康保険(※4)

 
■療養の給付
治療費や薬代の、いわゆる「3割負担」のこと。年齢や所得により1割または2割負担となる
 
■傷病手当金
業務外のけが・病気で休業し、収入がない場合に支給される
原則、月収の約3分の2程度を通算1年6ヶ月間支給
 
■出産・育児関係の給付
「出産育児一時金」 出産時に1児につき50万円支給
「出産手当金」 産前産後の休業期間に月収の約3分の2程度を支給
 

2.介護保険(※5)

 
■要介護度に応じた介護サービス、介護予防サービス
在宅介護サービス、施設サービス、地域密着型サービス、福祉用具の利用など
 

<サービスの一例>

訪問介護・看護・入浴・リハビリ、定期巡回、デイサービス、ショートステイ、グループホーム(認知症対応)・介護老人福祉施設などにおけるサービス等
負担額は介護サービス費用の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割となる)

 

3.厚生年金保険(※6)

 
■老齢年金
・基礎年金は満額で年79万5000円。保険料1年間分で給付額が年約2万円増加する
・報酬比例部分の年金は、各被保険者の保険料納付期間と過去の報酬額による
 
■障害年金
・障害基礎年金は1級と2級。2級が年79万5000円、1級は2級の1.25倍
・障害厚生年金は1~3級。2・3級が報酬比例年金相当額、1級は2級の1.25倍
3級に満たない障害が残った場合は一時金(障害手当金)を支給
 
■遺族年金
・遺族基礎年金は年79万5000円
・遺族厚生年金は報酬比例年金相当額の4分の3
 

4.雇用保険(※7)

 
■基本手当
いわゆる失業手当。離職理由や保険加入期間に応じた期間支給される
 
■育児休業給付金
産後休業後に育児休業を取得した場合、原則子が1歳になった日の前日まで支給される
父親が対象の「出生時育児休業給付金」もある(産後パパ育休制度)
 
■介護休業給付
家族の介護のため休業する場合に、同じ家族について93日を限度に3回まで支給
育児休業、介護休業とも給付額は、月収の約67%。育児は休業開始から181日目以降は50%
 
■教育訓練給付金
・一般教育訓練給付金

指定された講座を修了した場合、経費の20%(上限10万円)を支給

・専門実践教育訓練給付金
指定された講座を修了もしくは終了見込みの場合、経費の50%(年間上限40万円)を支給
 
日常的に縁が深いのは健康保険ですが、さまざまなライフイベントや老後の備えに、いずれの社会保険も欠かせないものといえます。保険料の負担感は少なくないですが、いざという時の公的給付やサービスは、しっかり利用したいものです。
 

出典

(※1)厚生労働省 社会保障とは何か
(※2)全国健康保険協会 令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)
(※3)厚生労働省 雇用保険料について
(※4)全国健康保険協会 保険給付の種類
(※5)厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 公表されている介護サービスについて
(※6)日本年金機構 年金の受給
(※7)厚生労働省 雇用保険制度
 
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

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