子どもが3人いても「大学無償化」の対象にならない!? なぜ「こども未来戦略方針」は批判されている? その背景について解説
配信日: 2024.01.10 更新日: 2024.01.11
「こども未来戦略」では、具体的な施策として出産などにかかる経済的負担の軽減や児童手当拡充などが挙げられており、高等教育費の負担軽減の対象拡大も計画されています。しかし、この大学の授業料支援には不公平という声が多く上がっています。なぜ今回の大学無償化が批判されているのかを調査してみました。
執筆者:御手洗康之(みたらい やすゆき)
CFP、行政書士
不人気の理由は多子世帯が対象となる不公平感
今回の大学無償化に関する施策の中心は2025年度からの措置となりますが、実は現在も授業料免除などの支援は存在しています。(図表1)
図表1 大学等授業料・入学金の無償化
内閣府官房 こども未来戦略における主な施策等について
現行の制度では、国公立大学では約54万円、私立大学で約70万円(入学金は国公立約28万円、私立約26万円)を上限として授業料の支援が行われています。これが世帯収入によって全額支援、2/3支援、1/3支援など割合が変わります。
今回の閣議決定で発表されている支援では、所得制限が撤廃されていますが、その条件は多子世帯、具体的には扶養される子どもが3人以上の世帯が対象となっています。多子世帯でなくても今までと比較して損をするわけではありませんが、「あの家庭の子どもは全額支援対象になるのに、うちの子は対象にならない」という事象が発生することになります。
また、扶養される子どもが3人以上の世帯が対象となるため、第3子の大学入学時に第1子がすでに就職して扶養から外れている場合、第3子は対象となりません。子どもが3人いるから全員、大学授業料が免除されるわけではないということに注意しなくてはなりません。
そんなに短い期間で家族を増やすなんて経済的にできないと考える人が多いことでしょう。対象となる基準を満たすことが難しいという点が、この制度が批判されている大きな理由のようです。
大学の学費は国公立およそ200万円、私立400万円
文部科学省が公表している「国公私立大学の授業料等の推移」によれば、(学部等によっても異なると思いますが)年間の授業料は国立大学が53万5800円、公立大学53万6191円、私立大学95万9205円となっています。
大学生活を4年間と仮定すれば、授業料は国公立でおよそ200万円、私立では400万円程度となり、これ以外に入学金や仕送りなどを含めれば、さらに必要な金額は大きくなります。
この金額が子どもの人数によって変わってくるのであれば、子どもが2人の家庭などは不満を感じてしまうかもしれませんね。この大学無償化に限らず、条件(例えば世帯収入や子どもの人数など)を満たした場合にだけ受けられる支援というのは、不公平感が発生するために批判されることが多いように感じます。
扶養控除は減額も。子どもに関する支援は要チェック
冒頭で紹介したとおり、こども未来戦略では出産などにかかる経済的負担の軽減や児童手当拡充、金銭的な支援以外にも男性育休取得推進やひとり親などの子どもへの学習支援など様々な対策が講じられています。
一方で、16~18歳までの扶養控除については、現行の所得税38万円、住民税33万円から、所得税25万円、住民税12万円に減額され、実質的な増税となります。
岸田政権は「異次元の少子化対策」を看板政策として掲げており、今後も子ども関連の税制改正などが行われる可能性は高そうです。現在子育て中の世代や、今後子育てを始める若い世代は、子育て関連の政策動向を注視しておくのが良いかもしれません。
出典
内閣官房府 こども未来戦略会議(第9回)議事次第
文部科学省 私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
財務省 税制改正の概要
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級